舞台『アーモンド』は、2020年本屋大賞翻訳小説部門の第1位に輝き、人気KPOPメンバーの愛読書として日本でも人気となっている韓国発の同名小説が原作。日本では初の舞台化で、本舞台化は韓国でも話題に。
子役時代から現在まで幅広い活動を続け、4作連続で主演を務める⻑江崚行と、2.5次元作品・ドラマ・コントなど多方面で存在感を示す眞嶋秀斗が失感情症の主人公ユンジェと、短気で荒々しい性格のゴニを役替りのWキャストで演じる。
キャストが登場し、モノローグ、基本的には主人公のユンジェ(Wキャスト:⻑江崚行/眞嶋秀斗)の独白でストーリーは進行する。感情をうまく感じることができないユンジェ、彼の語りは平坦で抑揚がほぼない。この語り口調とあまり変化のない表情でユンジェというキャラクターを表現する。「僕は幼稚園に行った」「迷子になった」「人が殴られているのを無表情で見ていた」「人の感情がわからない」と言う。
母は息子をなるべく普通に見えるようにしたい、よって普通っぽく見えるように息子を”訓練”。母は食べていけるように商売を始めた。それは本を売ること。『本』、彼は「本は僕をいろんなところに連れてってくれた」と語る。ユンジェの誕生日はクリスマス、15回目の誕生日に祖母と母が通り魔に襲われた。祖母は亡くなり、母は植物状態になり、ひとりぼっちになる。普通に見えるように支えてくれた母は寝たきり。ユンジェはとりあえず、生活できるように本を売ることを続けた。そんな折、学校でユンジェと正反対の感情の起伏が激しいゴニ(Wキャスト:⻑江崚行/眞嶋秀斗)に出会うのだった。
凄惨なことが自分の周りに起こっても悲しみも怒りも感じられない。ただ、物事はしっかりと認識している。当然誰からも理解されない、いや、彼を本当に理解するのは難しい。母親ですら、”普通に見えるように”彼に感情を丸暗記させようとしていたくらいだ。そんな彼の目の前に多分、幼児期は恵まれなかったであろう、周囲を威嚇することで自分を”支えている”ゴニと出会うことによって少しずつ変化が起こる。ゴニは常に怒りに満ちている。だから、何か起こってもゴニが疑われる。しかし疑いが晴れても…「誰もゴニに対して悪いと思わなかった」とユンジェはいう。ユンジェは「ゴニはいいこ」とも言う。そして彼を探しに…。
ユンジェとゴニ、彼らを理解しようとせず、さらに二人に勝手なレッテルを貼る周囲の人々。しかし、 ユンジェとゴニは互いを先入観なしに捉え、理解しようとする。その過程は時には、激しかったりもする。ユンジェは先天的な理由で大多数の人たちとは身体的に異なり、ゴニは愛のない家庭環境で育っている。この二人の共通点は『誰からも理解されない(されにくい)こと』。ユンジェはゴニを「聡明」と言う。SNSなどの発達で表層的な情報はあっという間に広がっていく。ネットの発達は便利さをもたらす反面、心の深いところに踏み込んではこない。よくある、『いいね!』は真の意味での共感なのか、どうなのか、そんな昨今の風潮、当たり前な空気感になっているが、それは一体、なんだろうかと。ユンジェとゴニは周囲から『怪物』と思われているが、当事者同士は、そんなことは微塵も考えていない。ラスト近くは、この二人の真のつながりを感じることができる。”愛”、一言で言えば、そうなのかもしれないが、本当の意味でそこにたどり着けるのか、ユンジェの語り、感情に支配されていない彼の発言は時には鋭く矛盾や人の利己的な感情を突いてくる。そこから観客は、翻って自分の周囲や日常に思いを巡らし、そして気づく。
カテゴリー的にはストレートプレイであるが、コンテンポラリーなダンスやエモーショナルな動きで様々な状況を表現、キャスト陣の巧さがひかる。ユンジェとゴニはWキャスト、表裏一体なキャラクターを演じ分ける。観劇したのはユンジェを⻑江崚行が演じ、ゴニは眞嶋秀斗。二人は特に2.5次元舞台で活躍しているが、表情変えずに、抑揚のないセリフで難役を⻑江崚行がクールに、しかしナチュラルに演じ、ゴニの眞嶋秀斗は、感情の爆発場面では、と思い通りにならない苛立ちを勢いよく見せて好演。
コロナ禍で公演日数が短くなってしまったが、難しいと思われる題材に真っ向から取り組んだ意欲作、演出は板垣恭一。
<コメント>
長江崚⾏
初日を迎えられることに幸せを感じてます。
今できることを全力で努めつつ、見に来てくださる皆様に、大きな意味で楽しんでもらえるように頑張りたいです。
緊張と不安を楽しんで乗りこなしたいです。よろしくお願いします!
眞嶋秀斗
人と人の出会いが引き起こすこと、その無限の可能性など、「失感情症」の少年・ユンジェを通して様々なことを考えました。演劇にあまり触れたことのない方にも、ぜひ観ていただきたいと思う作品です。
今回、2役を回替わりで演じます。生演奏の楽器もチェロとバイオリンで替わるので、どちらの回も、『アーモンド』の世界をしっかり面白くお届けできるよう頑張ります。
智順
いよいよ幕が開きます。
小説を読んだ時から、この物語がどのような舞台になるのかとても楽しみにしていました。
稽古を重ねるうち、小説では見えなかったもの、また生身の人間が演じるからこそ見えてくるものがありました。
小説を読んだ方も読んでいない方もきっと何か“感じる”ものがあると思います。
ぜひ劇場で堪能していただければ幸いです。
伊藤裕一
「アーモンド」を皆様にお届けできる日がやっと訪れました。
舞台版の魅力は、様々な事象が二重写しになっていることだと思います。
ある時は、Aに見えていたものが、ひょっとしたらBなのではないか?いや、そのどちらも混在しているのだと、あらゆる場面で気がつかれると思います。
俳優としてこの複数のレイヤーを同時進行させることはとても難しいことですが、抗酸化作用のあるこの作品が、必ずや皆様の心の健康を維持してくれることと思います。
佐藤彩香
舞台『アーモンド』いよいよ開幕致します。
こうして無事に初日を迎えることができ、お客様にこの作品をお届けできることを心から嬉しく思います!
感情を感じられないユンジェが愛を知っていく、その一つ一つの過程が、音楽・振付・舞台装置、全てを通して瑞々しく感じていただけると思います。
千秋楽まで無事に駆け抜けられることを祈りながら、この作品のメッセージをお客様にお届けできますよう、精一杯努めてまいります!
劇場で、お待ちしております!
神農直隆
いよいよ舞台「アーモンド」の初日を迎えるところまで来ました。稽古初日から本日に至るまで他団体の舞台公演の中止の知らせを見たり聞いたりして来た中、胸が痛い思いをして来ました。そんな中、このような日を迎えられた事、千穐楽まで務め果たすことの出来る事を感謝し、一日一日、一回一回を大切に臨んで参りたいと思います。
今井朋彦
「初日の幕を開ける」ことがどれほど大変なことなのか、わかっていたつもりがあらためて思い知らされました。
それくらい今はさまざまな条件に恵まれないと難しい状況です。
とはいえわたしたちは、少し遅れたとはいえ初日を迎えられた「恵まれたカンパニー」なのですから、
この恵みを客席の皆さんと分かち合いながら、なんとか最後までやり遂げたいと願っています。
あらすじ
怪物と呼ばれた少年が、愛によって生まれ変わるまで――。
感情を司る脳の部位、偏桃体(形状が似ていることから、原作内ではアーモンドと表現される)が人より小さく、怒りや恐怖といった感情をうまく感じることができない十六歳の高校生、ユンジェ(Wキャスト:⻑江崚行/眞嶋秀斗)。祖母(伊藤裕一)は彼を“かわいい怪物”と呼んだ。母親(智順)は感情がわからない息子に「喜」「怒」「哀」「楽」「愛」「悪」「欲」などの感情を丸暗記させることで、なんとかユンジェを“普通の子”に見えるようにと訓練してきた。
そんな彼は、十五歳の誕生日に、目の前で祖母と母親が通り魔に襲われ死傷したときも、ただ黙ってその光景を見つめているだけだった。事件によって母親は植物状態になり、ユンジェはひとりぼっちに。
そんなとき現れた、もう一人の“怪物”ゴニ(Wキャスト:⻑江崚行/眞嶋秀斗)。激しい感情をもつその少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていく――。
【配信情報】
配信日程:全5公演
※[1]は1カメ、[3]は3カメ
3月9日(水) [1] 14時公演、[1]19時公演 ※いずれも追加
3月10日(木) [1]14時公演、[3] 19時公演 ※19時は追加公演
3月13日(日) [3] 12時30分公演 ※3カメ配信に変更
金額
1カメ:3,000円(税込)
3カメ:4,500円(税込)
その他情報
配信公演の受付再開(追加公演を含む):3月3日(木)10:00より
<配信チケット取り扱い>
カンフェティ
https://www.confetti-web.com/almond-streaming
※WEB予約のみでの受付となります。
<配信チケットのお問合せ先>
カンフェティお問合せフォーム
https://www.confetti-web.com/support/qa_reg_1.php
<購入・視聴方法>
https://www.confetti-web.com/guide/streaming/
概要
日程会場:2022年3⽉10⽇〜3⽉13⽇ シアタートラム
原作:ソン・ウォンピョン (チャンビ刊)
翻訳:⽮島暁⼦(祥伝社刊)
脚本・演出:板垣恭一
振付・ステージング:⼭⽥うん
音楽:桑原まこ
出演:
長江崚行:ユンジェ/ゴニ
眞嶋秀斗:ゴニ/ユンジェ
智順:ユンジェの母さん
伊藤裕一 :ユンジェのばあちゃん
佐藤彩香:ドラ
神農直隆 :ユン教授
今井朋彦 :シム博士
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