『シュレック・ザ・ミュージカル』、念願のフルバージョンが上演中だ。
『シュレック』はドリームワークスが2001年に制作し、史上初のアカデミー長編アニメ映画賞を受賞した大ヒットアドベンチャーコメディ映画。
「仲間との絆」や「真実の愛」、「困難に立ち向かう」という普遍的テーマをジョークやパロディ満載で描いた『シュレック』は子供だけでなく大人も夢中にし、世界中で愛される名作。この映画『シュレック』を元に2008年にブロードウェイにてミュージカル化され、2022年8月に90分短縮バージョンがトライアウト公演として日本初上陸。今年は端折ることなく、フルバージョンで上演することが可能になり、7月30日まで日本青年館で上演。
よくある童話や昔話の出だし「むかーし、昔…」、シュレック、7歳の誕生日、両親から「独り立ちしな♪」と言われ、一人になるシュレック。「夢が叶うことは…ない」「友達ができることは…ない」大人観客ならちょっと胸が痛い。だが、そんなことをこともなげに言ってしまう。強さなのか悲しさなのか。シュレック(spi)は人里離れた森の沼のほとりで気ままな”おひとりさま”生活。
ところがその気楽な生活が…おとぎ話のキャラクターたちが大挙してやってきた。ファークアード卿(泉見洋平)によって追放されたのだった。ピノキオ(新里宏太)たちは嘆く。シュレックにとっては「知ったこっちゃない」のだが、平穏な生活を取り戻したい、渋々、ファークアード卿の追放の命令を取り消してもらうように交渉することに。
その旅の途中で知り合ったのが、お喋りなロバ、ドンキー(吉田純也)、よく喋る、喋る、シュレックでなくても「うるさい」と思うくらい。ここで歌われる曲「おいてかないで(Don’t Let Me Go)」、ここの歌詞、どう考えても元の英語の歌詞は「そうじゃないだろう」なワードがいっぱい。一方、フィオナ(福田えり)、王子様が自分を救いに来ることを信じている。「I Know It’s Today」は3人のフィオナ、ティーンフィオナ、フィオナ)が出てきて歌う。
つまり、長い長い間、待っていた、ということがビジュアル的にわかる。そしてファークアード卿の様子も描かれる。ファークアード卿は登場しただけで客席からどっと笑いが起こる。強烈な見た目とものすごい自己中な個性、またジンジャーブレッドマン(岡村さやか)も出てきただけでどっと笑いが(笑)、もう”つかみはOK”、セリフ(というか歌詞)「さっちゃんはね♪」これも絶対に元の英語版には出ないので(笑)。またファークアード卿が客席に拍手を求める場面もあるので、大きく拍手しよう(機嫌がよくなる)。
シュレックはフィオナが閉じ込められている城の一番高いところに行き、助けるが、フィオナはよくあるおとぎ話のような展開を期待、あれこれシュレックを悩ませる、ここは絶え間なくクスクス笑いが。
シュレックはとっととファークアード卿のところにフィオナを連れて戻りたい。シュレック、フィオナ、ドンキー、この凸凹な3人、ファークアード卿のところへと向かう、というのが大体の流れ。
昨年と違い、今回はフルバージョン、もちろん単純に上演時間が長くなっただけではない。登場人物たちの性格や生い立ち、考え、心情がより深く描かれている。2幕でファークアードのバラード「Ballad Of Farquaad」、ファークアードが何故、こんな意地悪で自己中心的になったがわかる歌、ここは前回にはなかったシーン。短くなってたシーンや省略されてたシーンが復活することによって面白みだけでなく、哲学的なところも深みが増して「なるほど」と思ったり、「そうだったのか」と気が付いたり。また、客席通路を使う演出もあって、ここはコロナ禍がやや落ち着きを見せている今年ならでは。また、1幕でピノキオが「僕は木の人形じゃないよ、男の子だよ」というとピノキオの鼻が伸びる。嘘をつくと鼻が伸びるピノキオ。だが、このピノキオの嘘はピノキオの理想「人間の男の子」、だが、ラスト近く自分は木の人形である事実を素直に受け入れる。シュレックもフィオナも自分に正直になる。エンタメ面では1幕のラストで3人が歌唱するシーンは圧巻。また、2幕のタップダンスのシーンはまさに「エンタメ」、上演時間が長くなっても、その長さを感じさせない。生演奏でライブ感もUP。ありのまま、自分の気持ちに素直に。ドンキーは最初はただただお喋りなロバかと思いきや、シュレックに正論をぶつける。シュレックはそれが正論とわかっていても素直に「yes」と言えない、そんなやりとりはリアリティがある。大人観客は「ある、ある」と心の中でつぶやく。大人にも子供にも刺さる作品。
なお、カーテンコール、撮影OK(舞台スクリーンに表示が出るので)タイムが用意されている。ハッシュタグは「#シュレック」。公演は30日まで。
<取材会レポ記事>
<演出 岸本功喜×シュレック役spi クロストーク>
キャスト ※(★)はトライアウト公演にも出演したキャスト。
シュレック spi(★)
フィオナ 福田えり(★)、ドンキー 吉田純也(★)、ファークアード卿 泉見洋平(★)
ジンジャーブレッドマン 岡村さやか(★)、ドラゴン 須藤香菜(★)、ピノキオ 新里宏太(★)
▽男性キャスト
佐々木誠、鈴木たけゆき(★)、岩﨑巧馬(★)、清水泰雄、深堀景介、村上貴亮、横田剛基、中桐聖弥
▽女性キャスト
咲良、元榮菜摘、寺町有美子、澤田真里愛(★)、石田彩夏(★)、青山瑠里
▽子役
矢山花(★)、本木麻由花、三浦あかり
概要
公演名:『シュレック・ザ・ミュージカル』 フルバージョン公演
期間会場:2023年7月8日(土)~16(日)、7月22日(土)~7月30日(日) 日本青年館ホール
スタッフ
原作:ドリームワークスアニメーション『シュレック』/ ウィリアム・スタイグ『みにくいシュレック』
脚本・作詞:デヴィッド・リンゼイ=アベアー
作曲:ジニーン・テソーリ
翻訳・訳詞・音楽監督:小島良太
演出:岸本功喜
主催・企画制作:フジテレビジョン/アークスインターナショナル/サンライズプロモーション東京