ミュージカル「陰陽師」~平安絵巻~

 

 全世界で2億ダウンロードを突破した中国発の大人気ゲーム、 本格幻想RPG「陰陽師」を舞台化し、中国で本公演を行うという 新たな試みに挑戦する話題作。タイトル通り、陰陽師といえば、先頃、オリンピックで羽生選手が金メダルを取ったが、その演技は記憶に新しい。

 日本と中国との初合作舞台、ビジネス的にも芸術的にも要注目、世界を視野に入れた作品故、クリエイティブ・スタッフも現在、揃えられる一流どころが集合、気合が入っている。

 

 

 開幕前に紗のスクリーンに映る映像、これから始まる一大絵巻、否が応でも期待は高まる。時間になり、古典的なメロディラインが印象的な楽曲が鳴り響き、クレッシェンドになり、幕が開く。最初に登場したのは1人の少女「ここはどこ?」どうも記憶なくした様子。それから陰陽師登場、彼もまた記憶を失っている。わかっているのは、自分が陰陽師であることと、名前が晴明であることしかわからない。少女は「神楽だったと思う……」どうやら名前だけは覚えていたようだ。それから物語が動き出す。

 

 悩みながらも前に進もうとする晴明だが、わからないことばかりだ。彼の前に様々な、個性的でくせのあるキャラクターが次々に現れる。記憶がさだかではない晴明、しかし、使命感は人一倍強い。

 各キャラクターに見せ場があり、映像やイリュージョンを駆使して、この陰陽師の世界を舞台上に圧倒的な迫力で魅せる。ダンス、アクション、そして歌、楽曲も多彩で、いかにも【ミュージカル】な曲調もあったり、ちょっとジャージーな楽曲もあって、この既成概念に囚われない音楽がステージを盛り上げる。彼を襲うキャラクター陣、これがかなり手強い。技を繰り出して、晴明は幾度と無く危機に陥る。しかし、彼を支持する仲間達、共に戦う姿は清々しい。

 

 アクションシーンは効果音、映像、そして俳優の動き、この三位一体、タイミングを合わせるのはさぞかし大変だったと思うが、そこはバッチリと決める。主演の良知真次を始め、歌唱力のある実力者が揃い、難しいメロディを歌いこなす。特に八百比丘尼役の舞羽美海は元宝塚歌劇団雪組トップ娘役、よく通るソプラノで朗々と歌い上げるシーンは思わず聞き惚れてしまう。源博雅役の三浦宏規は威勢のいい元気なキャラクターで晴明といいコンビ、神楽役の伊藤優衣は頼りなさそうな、しかし、ここぞという場面では、意外な程強かったり、酒吞童子役の君沢ユウキはベテランらしく、場面を引き締める。茨木童子役は遊馬晃祐は類希なる運動神経で縦横無尽に活躍する。そして黒晴明役の佐々木喜英、役名からして【いかにも悪そう】だが、彼は晴明のなんなのかは後半、明かされる。魑魅魍魎は機会を伺い、陽界の秩序を危機に陥れようとうごめく。そして2幕のラスト30分、負けられない戦い、それまでの伏線がここに集結する。

 基本は陰陽師である晴明が都で起こる奇怪な出来事を異能を使って解決するという伝奇時代劇ではあるが、この作品のキーになっているのは晴明が記憶をなくしているということ。「自分は何者なのか」といった自分探し的な要素もあり、また、仲間同士が助け合って立ち向かう、といった絆、友情、正義、勇気、といった普遍的なテーマを上手く盛り込み、しかもドキドキ、ハラハラしながら観られる一大エンターテインメントに仕上がっていた。これから中国公演もあるが、国境を超えて楽しく観られる作品だ。

 なお、まめ知識として、西暦670年頃の日本では、陰陽師は今で言う公務員的立場にあり、その仕事内容は現在の気象庁と文部科学省を掛け合わせたようなものだったそう。陰陽道は、森羅万象の宇宙を理解しようとする学問であり、内容も天体観測・自然観測・暦の作成・時刻の設定など、科学的側面を重視していた。ただ、彼らは様々な研究により培われた豊富な知識があった為に、吉凶・厄災を占う事や、病気の回復を願う祈祷などの儀式的行為も行うようになり、上流階級の生活を呪術的側面から管理できるだけの権力を持ち、平安時代には最盛期に。有名な陰陽師・安倍晴明は、この頃の人物である。そんなことを押さえておくと物語の面白さは奥が深くなる。

 

 なお、ゲネプロ前に囲み会見があった。登壇したのは良知真次、三浦宏規、伊藤優衣、舞羽美海、矢田悠祐、君沢ユウキ、遊馬晃祐、佐々木喜英、そして演出・脚本・作詞の毛利亘宏。

 ほとんどのキャストが「映像が素晴らしい」とコメント。これが最高水準の映像で、これだけ観ても美しく、また躍動感もあって見応え十分。君沢ユウキは「観た事がないミュージカルに仕上がっています!」と自信たっぷり。矢田悠祐は「ゲームの世界に入り込める」と言い、舞羽美海は「幻想的な世界……生の人間がやる迫力を!」とPR。伊藤優衣は「若さを大事に」と自分PR。様々な“2.5次元舞台”に出演歴がある佐々木喜英は「2.5次元ミュージカルを広めたい」とコメント、良知真次は「誰もが知っている晴明という役です……誰よりも出ています」と語ったが、ほぼずっと舞台上に!毛利亘宏は「誰も観た事のないミュージカルに仕上がったように思います」と言い「短い時間で楽しさをもの凄く詰め込みました」とコメントしたが、瞬きするのがもったいないくらいのスピード感でぐいぐいと!また、凝った衣裳が凄いが、それに関しては矢田悠祐は「真っすぐに歩けない!」と笑いを誘う。三浦宏規は手にした武器を見て「大きいですね!壊さないように!」とさらに笑いを取りに!佐々木喜英は「メイクが……全部完成させるのに2時間!」と言い「1時間で出来るように」と目標を語ったところで良知真次が「落とさなければ!」とツッコミを入れる一幕も。良知真次は「扇子を使う動きが多くって、回したりするんで、そこを観て欲しい」と言い。続けて「ネイル、初めてしました、34年生きてきて、ネイルの大変さがわかりました(笑)」とコメント。

また中国公演に関しては文化の違いにより、観客の反応が変わるが中国での公演を経験している良知真次は「反応が全然違う」と自身の経験をコメント。毛利亘宏は「全く違う反応が楽しみ、日本発のミュージカルが認めてもらえる瞬間」と期待を口にする。最後に良知真次が「平安絵巻を2.5次元でやります。中国と日本の合作で作りますので、規模が違います。ここまで素晴らしい作品が出来るのだと!多くの方々に観て頂きたい、羽生選手の金メダルのように金を取りたい!」と締めて会見が終了した。

<ストーリー>
その男は記憶を失っていた…。己の名は「晴明」。自らは「陰陽師」であり、都を守りぬかねばならない。それ以外のことは何も覚えてはいなかった。同じく記憶なくした謎の少女「神楽」、晴明の式神だという「小白」三人は悪鬼を打ち倒し、記憶を取り戻そうとするのであった。世は平安。これは人と妖(あやかし)が共存していた時代の物語である。陰界に属する魑魅魍魎は、都の人々の間に潜み機会を伺い、陽界の秩序は危機に晒されていた。
しかし幸いなことに、この世には天文を読み解き呪術を操るだけでなく、陰陽二つの世界を自在に行き来する異能者がいた。そんな彼らを世の人々は敬意をこめて「陰陽師」と呼ぶ。稀代の陰陽師と称される「晴明」は仲間たちと共に陰陽二つの世界の均衡を保つための戦いをはじめる。

 

【公演概要】

プレビュー公演(日本/東京)
日程:2018年3月9日(金)~3月18日(日)
会場:日本青年館ホール

 

<本公演>

[中国/深セン]

日程:2018年3月30日(金)~4月1日(日)

会場:深セン保利劇院

 

[中国/上海]

日程:2018年4月7日(土)~4月15日(日)

会場:虹橋芸術センター

 

[中国/北京]

只今、公演詳細は最終調整中。

 

原案:本格幻想 RPG「陰陽師」より (NetEase Inc./All Rights Reserved)

演出・脚本・作詞:毛利亘宏

音楽:佐橋俊彦

振付:本山新之助

出演:
晴明 役 良知真次
源博雅 役 三浦宏規
神楽 役 伊藤優衣
八百比丘尼 役 舞羽美海
大天狗 役 矢田悠祐
酒吞童子 役 君沢ユウキ
茨木童子 役 遊馬晃祐
黒無常 役 平田裕一郎
白無常 役 内海啓貴
判官 役 片山浩憲
雪女 役 七木奏音
紅葉 役 門山葉子
黒晴明 役 佐々木喜英

西岡寛修、笹原英作、服部悠、杉山諒二、松ヶ谷ほのか、渡邉南光、岡茉美、佐竹真依

 

※3月18日18時~ プレビュー公演千秋楽をWOWWOWにて独占生中継!

※スペシャルカーテンコール開催決定!

カーテンコール内に写真・動画撮影OKシーンを設置。

撮影はアナウンスがあるまでは電源はOFFに。

携帯電話・スマートフォン以外の撮影はNG。

フラッシュ撮影禁止。

 

主催:ネットイースゲームズ/ネルケプランニング

 

公式HP:http://www.musical-onmyoji.com
公式Twitter:
https://twitter.com/musical_onmyoji

©Musical OMJ 2017

 

文:Hiromi Koh