観客参加で会場が一体に! 島田歌穂「Musical, Musical, Musical!!」開幕!

島田歌穂「Musical, Musical, Musical!!」東京公演が、 2022年7月8日(金)、 東京・渋谷Bunkamuraオーチャードホールで幕を開けた。 従来とは違う体験型コンサートで好評を博す人気シリーズで、 待望の第3弾となる今回は“ミュージカル映画”がテーマ。 ミュージカル映画のはじまりからエポック作、 ミュージカル映画全盛期、 そして近年のヒット作までを網羅した充実のプログラムで、 当日は選りすぐりのナンバー全25曲以上が披露された。

オーバチュアのなか、 島田がブルーの艶やかなドレスを纏い登場。 幕開けはミュージカル『オズの魔法使い』の劇中歌「Over The Rainbow」で、 伸びやかな歌声に早くもステージに釘付けに。 続く「Ease On Down The Road」(『The wiz』)は一転アップテンポで、 軽快なリズムで観客を巻き込み会場を大いに盛り上げていく。

「ミュージカルの楽しさをいっぱいに詰め込んだ、 これまでにないコンサートを作りたい!」と、 2019年にスタートした本シリーズ。 プログラムは聴き・学ぶ・参加するの三つを柱に構成され、 歌の魅力はもちろん、 楽曲を知り、 そして体験する愉しみも。 第1部はミュージカル映画の誕生からスタート。 初の長編ミュージカル映画『ジャズシンガー』、 30年代ミュージカル映画のエポック作『42nd Street』、 50年代の名作『雨に唄えば』と、 ミュージカル映画の歴史をたどりつつそのエピソードの数々が語られていく。 『雨に唄えば』といえばまず思い浮かぶのが、 雨の中ジーン・ケリーが歌い踊るタップシーン。 島田も歌とともにタップを披露し、 「ミュージカル映画といえばタップ! “今回タップがやりたい!”って言っちゃったんですよね。 でも息が切れて……」と笑いを誘う。

楽曲のなかには島田自身関わりある作品も多く、 当時を振り返りつつその想いを歌に込める。 例えば「Feed The Birds」(『メリー・ポピンズ』)。 この5月までミュージカル『メリー・ポピンズ』でバードウーマン/ミス・アンドリュー役を演じたばかりで、 時をおかずしてまたその歌声が堪能できたのは何ともうれしいところだ。 ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』には2001年にツァイテル役で出演。 物語の舞台はウクライナで、 名ナンバー「Sunrise Sunset」が今改めて胸に迫る。

ミュージカル映画に活気を注ぐ才能溢れる名作曲家たちにもスポットをあてる。 ディズニーアニメで活躍するアラン・メンケン・メドレーは実に楽しいコーナーで、 「Little Shop of Horrors」(『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』)、 「Under The Sea」(『リトル・マーメイド』)、 「Beauty and the Beast」(『美女と野獣』)まで、 時にコミカルに、 時に情感を込め、 作品世界を彩り鮮やかに歌い上げる。 ここでゲストの海宝直人が登場し、 「A Whole New World」(『アラジン』)を島田とデュエット。 海宝自身かつて主演を務めた代表作であり誰もが知る名曲だが、 歌い手によりまた印象も変わる。 二人の歌声は温もりに溢れ、 どこか優しい余韻を後に残した。

第2部は観客参加の体験コーナーからスタート。 本公演の目玉の一つで、 シリーズvol.1は合唱、 vol.2は足踏み、 そして今回のお題となったのがクラッピング。 会場を3つのエリアにわけ、 観客はそれぞれ異なったリズムに挑戦していく。 サポートメンバーが手本を示すも、 これがなかなか難度が高く、 3つのパートが重なると思わず混乱してしまうほど。 クラッピングに夢中になっていると、 島田がアカペラで登場。 楽曲はジョージ・ガーシュウィン作「I Got Rhythm」(『ガール・クレイジー』)だ。 3つのリズムのクランピングに歌声が重なった瞬間は感動もひとしおで、 一体感を肌で感じ高揚感に包まれる。

今回サポートメンバーとして出演した4名は、 島田が19年間に渡り教鞭をとる大阪芸術大学舞台芸術学科の卒業生たち。 サポートメンバーと島田の掛け合いで贈る「ドレミのうた~ミュージカル版~」は「サウンド・オブ・ミュージック」にのせ替え歌を歌うメドレーで、 昨年初演し人気コーナーに。 “師”と“教え子”がユーモラスに歌い踊る姿は和気藹々として何とも微笑ましい。 続いて振付&友情出演の本間憲一が登場し、 「A Lovely Night」を島田とデュエット。 映画『ラ・ラ・ランド』で主人公が歌い踊るロマンチックなナンバーで、 島田と二人軽快な歌とタップを繰り広げステージに名シーンを蘇らせた。

ゲストコーナーでは海宝直人が再び登場。 近年注目の若手ミュージカルスターだが、 島田とは子役時代に舞台『蝶々さん』『二十四の瞳』で共演した仲で、 当時のやんちゃエピソードをちらり。 続くトークコーナーでは海宝から「歌穂さんの歌は音符が踊っているみたい!」との名言が飛び出し、 会場を沸かせる一幕も。 デュエット曲に選ばれたのは「Last Night of The World」。 海宝が出演を控える『ミス・サイゴン』の名ナンバーで、 キムとクリスに扮する二人のハーモニーはどこまでも澄み渡り美しい。

島田といえばミュージカル『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役日本初演キャストとして1000回以上の出演歴を持ち、 同作の世界ベストキャストにも選ばれたレミゼのミューズであり代名詞。 十八番「On My Own」のイントロが流れると、 会場はしんと静けさの中へ。 島田の歌声は作品世界を豊かに物語り、 キャラクターをそこに浮かび上がらせる。 表現者としての力量に圧倒され、 その歌声に心動かされずにいられない。

エンディング「I Love Musical」(『I Love A Piano』)は、 まさに島田の想いを代弁するナンバー。 「ミュージカルの楽しさを伝えたい!」という彼女の願いはきっと伝わったはず。 観客の手拍子は一段と盛り上がり、 会場の熱気は最高潮に。 アンコールは島建のピアノとともに「People」(『ファニー・ガール』)をしっとりと歌い、 ステージは幕を下ろした。

ミュージカルの醍醐味をたっぷり詰め込んだ充実のコンサート「Musical, Musical, Musical!!」vol.3東京公演。 正味2.5時間を駆け抜け、 エンタテイナーとしての実力を見せつけた。

「Musical, Musical, Musical!!」vol.3名古屋公演は7月16日(土)日本特殊陶業市民会館フォレストホールにて、 大阪公演は7月31日(日)NHK大阪ホールにて上演。 名古屋・大阪公演には元宝塚歌劇団男役トップスターの朝夏まなとがスペシャルゲストとして登場予定で、 こちらも見逃せないステージになりそうだ。
(取材・文 小野寺悦子)

【公演特設サイト】
https://www.ticketport.co.jp/lp/musical3/