人気アニメ『世界名作劇場シリーズ』、ここから多くの感動アニメが放送されたが、その中でも涙無しでは見られない「ロミオの青い空」がミュージカルとなって2022年3月〜4月にかけて上演され、多くの観客を感動させた。そしてこの秋に待望のBlu-rayが発売される。劇場で観劇したファンは、その日の感激が蘇る、観劇していなくても、その臨場感を体感できる。その発売を記念して豪華なトークが実現。アニメ「ロミオの青い空」のロミオを演じた声優の折笠愛さん、ミュージカル版のロミオ役の大薮丘さん、アルフレド役の新里宏太さんがこの「ロミオの青い空」愛をトークで炸裂!!してくれた。なお、トップ写真の色紙が抽選で当たる!
――アニメを見た感想をお願いいたします。
大薮:僕は見終わった後にまず、シンプルにすごいなって思いました。この作品は僕が生まれた年に放映されていたので、実はタイトルしか知らなかったんです。これは子供から大人までみんなが楽しめる作品になっている、ここがそもそもすごいなと思ったんです。話が単純じゃない、深みもあり、もちろん子供にも純粋にアニメとして楽しめるので『この作品、すげえな』って思ったのが最初の印象です。
新里:このミュージカルをやる時期がこのコロナ禍だったので、改めて見るといい意味ですごく苦しくって、先に進まない印象でした。令和の時代になってからは、今までには起こらなかった常識はずれのことがたくさん起こった、それと今の現代にすごくリンクするところがあって、人間自身の心情、見ていく中で自分の中でそれがリンクしちゃって、先に進まなかった…作品を見終わってから、あくまでもみんなが綺麗に夢に向かって、思いに向かって突き進んでいくことを僕自身、最近忘れていたなと。若い子たちや同世代の人たちって純粋な夢ってあるのかな?と。色々と考えさせられる作品だったですね。
――『世界名作劇場シリーズ』に折笠さんが初めて参加されたのは『小公子セディ』のセディ役、その次が『ロミオの青い空』のロミオ役とのことで、その頃は『世界名作劇場シリーズ』はすでに知名度も高まり、視聴者にはおなじみの作品になっていた時期かと思います。作品についての思い入れなどお願いいたします。
折笠:今は声優のお仕事をさせていただいていますが、ほぼデビュー作である『小公子セディ』の当時は声優という仕事を知らなかったんです。セリフを聞いて「ああ、いい声だな」っていう興味はあったんですが、どちらかというと舞台の方が好きだったんです。舞台をやっているクオリティーを声の仕事に持っていけるんじゃないかなと勝手に思っていました。ところが、この『小公子セディ』で、ものすごく痛い目にあいました。自分の下手さ、できたはずなのにやっぱり上手じゃない、うまく聴こえてこないとか、一回目で泣いちゃうと、本番の時に「どうすんだよ」って言われたりとか(苦笑)、ここではこういう雰囲気必要とか…自分で納得させるのに、とても時間がかかりました。「声優のお仕事やっていけるかしら?」と思った作品が『小公子セディ』だったんです。そこから数年経って、なんとか声優の仕事を続けさせていただいて、この『世界名作劇場シリーズ』2回目の主役が『ロミオの青い空』、こういうことはなかなかないので、光栄なことだなってお引き受けしてお仕事をしました。ここでいろんなことが少しずつわかってきました。アニメに声をあてる『アテレコ』を生かしていろんな技術が少し身につき、考え方も色々とわかってきて、その上で『世界名作劇場シリーズ』の2作目、私の中ではロミオは自分自身の成長でもあるし、ロミオがだんだん成長していく過程と私自身の成長がリンクした役がロミオだったんです。大切な1作品ですね。
――アルフレド役が藤田淑子さんでナレーターが池田昌子さんでしたね。
折笠:当時、声優というお仕事に知識がなかったのですが、でも『ローマの休日』の池田さんは素敵だなーと「ああいう女性になりたいな」と思っていました。池田さんはとても尊敬していますし、藤田さんは私の中では『一休さん』(笑)、「すごいな、すごいな」と思っていたお二人に囲まれた作品、ご一緒にできるなんて!宝物になった作品の一つですね。あの当時は「あ、池田さんと藤田さんだ!」ってなっていたので。色々といっぱい吸収させていただきました。
――アニメや舞台、ミュージカルの人を動かす力、アニメの力、舞台の力についてご自身のお考えを。抽象的ですが。
大薮:アニメを超えることってなかなかできない、正直。ただこの『ロミオの青い空』に関しては、このミュージカル作品自体が中身勝負なところがある。舞台化するにあたってビジュアルが似ていることは大事な部分ではあるのですが、それ以上のもの、そしてこの作品を届けること、僕はこのミュージカルに挑戦して本物を届けたいなと思いました。アルフレドが亡くなった時、ロミオはどうするのか…実は『世界名作劇場シリーズ』の『フランダースの犬』、自分の母親がすごく鼻水垂らしながら、涙流しながら、観ていたんです。これが心に残っていまして、アニメって相当な力を持っているなと。作品の中身勝負、限りなく本物に近いものができたんじゃないかなと。スタッフさんの力もすごく借りて…やっぱり力があってこそ、だと思います。
――ミュージカルナンバーもすごく多いですね。アニメの放映期間はすごく長い、これを舞台化する場合、アニメのダイジェスト版にならないようにしないといけない。この作品はガッと濃密に持ってくるところがあって、率直に感動できました。
新里:僕は遊ぶ時間は1人でアニメに費やしていました。実写化、テレビドラマ化、たくさんありますが、僕はアニメっ子だったのがこっち側の人間になったことがすごく驚きです。アニメのすごいところって、キャラクターたちがたくさんの人生を生きているのに、どの作品にも自分の心情と絶対に当てはまるところがある。僕は『NARUTO』に幼少期から感銘を受けていて、いまだに自分の人生に影響を与えている作品です。各々、アニメを見ている時に自分のバイブルとなる作品があって、それを糧に人生が変わったり、転機になったり、みんなとはタイミングが違うと思うんですけど、その影響力ってすごいなと。誰しもが、どの作品を観ても、自分が本当は好きじゃない作品を観ても、初めて観た作品でも、リンクするキャラクターがあって、物語があって、そういう箇所が少なくとも1箇所は絶対にあるんですよ。そこがすごいなって。そこに感銘を受けてファンになったり、作品が好きになったり。『ロミオの青い空』は、勝ち負けを求めているわけではない、作品の中の各々の人物が全力で生きている、その作品の中に出てくる方々を演じることはそこに何か意味合いがあるんじゃないのかと…自分自身この作品を通して、たくさんのことにチャレンジして経験することができました。この『ロミオの青い空』は、言葉では説明できない影響力が本当にある。それこそ「何か」って言ったら、いまだに“ビアンカ”とか、“狼団”とか、僕らプライベートで会っている(笑)。仲の良くなり方、繋がり方が太い!そういう作品に出会えて嬉しいですね。
大薮:一緒、一緒!
新里:いい影響が、言葉では説明できない、演じる際にもあったし、作品を観るということに対しても大きな影響を受けた作品。
大薮:本当に良かった!
新里:この作品をたくさんの方に伝えていかなければ、このモチベーションが終わってからも続いていまして、これはなかなかないと思う。
大薮:正直そう思う!!
――折笠さん、『世界名作劇場シリーズ』のキャラクターに声をあてていると色々な影響があるのではないでしょうか。
折笠:そうですね。「力」というお話が出ましたが、アニメは2次元、余白がすごく多いんですよ。その分そこを感じてもらうっていうんでしょうか、見る側の想像力をいかに掻き立てるか、想像の余白の部分をどういうふうに膨らませてあげられるのかが大切かと。それが作品の力だと思う。舞台は人間が動いているので、3次元のパワーと言いますか、吐息や表情、そういうものを観客の一人ひとりが自分の中に纏うことができる、その空間に一緒に生きられる、そういう意味でステージにはとてつもない力があるなーと思っています。劇場にきて観ていただくこと、それをそのまま映像に起こしていただくと、その臨場感を少しでも感じることができますね。私は舞台が大好きなので。
――ご自身で舞台をプロデュースしていらっしゃいますよね。
折笠:そうなんです(笑)
大薮・新里:そうなんですか?!
――I’s Stage☆プロデュース。
折笠:はい!色々やっていこうと思って、奮い立ってやったのが、コロナが始まった年。
大薮・新里:ああああ!!
折笠:関俊彦さん、山口勝平ちゃん、そして螢雪次朗さんたちが参加して…。
大薮・新里:おおお!!!
折笠:コロナ禍になって1年延びて、一応配信だけでもと。その時すごく痛感しました。お客様が目の前にいて、同じ空間で一緒に一つの物語を紡ぐ素晴らしさ、その魅力がステージにはありますよね。
――アニメ「ロミオの青い空」を観ていた人は舞台を観る前から物語や名場面を最初から全部わかっているんですよね。端から端まで全部わかっているんですが、それでも「いいな」って思いました。これはネタを全部バラしても面白いです。
大薮:クリエイターの方とも話したんですけど、元のアニメを具現化するつもりはないと。本格的なミュージカルを作りたいっておっしゃっていて、その思いが詰め込まれているんですよ。すごいプロフェッショナルな方々が集まって、だからこそ、この作品をマジで良くしようと思いを強く感じます。僕たちはこのスタート地点に立ったっていう形なんですけど、土台を用意していただいたので、それに乗っていったって感じです。
折笠:ミュージカルナンバーは28曲ありますね。これ、普通のコンサートだったら相当辛いですよね。
大薮・新里:やばいと思います(笑)。
折笠:観ていて、本当に時間が短く感じたんです…っていうことはすごく面白かったんですよ!
新里:3時間45分!(笑)。
大薮:この芝居がすごいのは、開幕してからどんどん客席が埋まっていった。実は僕の親がちょうど観にくる日が中止になっちゃった。中止になったその日、僕は会場にいて、中止になった瞬間のお客さまの本当に残念そうな、みんなが「マジかよ」って…泣いている人もめちゃくちゃいて、父親に言われたんですが「お前、出てこいよ」と。「挨拶しろ」と(笑)。流石に無理でしたけど。この作品に対しての思い入れ、中止になってすごく辛かった。
折笠:3時間以上とは思えなかった(笑)観たあと、他の用事の約束があってちょっと遅刻したんですよ(笑)、でも、本当に短く感じた、これはすごいこと。
大薮:次にやるときはキリよく4時間(笑)。今回はカットしてカットしての3時間45分。もし次があるとしたら、分けた方がいいのか、どうなのか、お客さまに聞きたい(笑)。
――個人的には「一気にどーん」の方が好きです(笑)。
折笠:私も(笑)。演者さんはすごい大変だと思うけど、私も「一気にどーん」がいいです。(一同大笑)
新里:今回東京だけだったけど、全国回りたくって…この作品をいろんな人に知ってほしい。
折笠:いいですねー。
大薮:できるかどうかわからないけど、もう一度上演できるように、微力ながら出来たらいいねっていうのは話しています。
折笠:素敵!皆で盛り上げましょう!!
新里: できたら、俺、宮古島に行きたい(笑)。全力で!!
大薮:それくらいの作品でしたね(一同、激しく同意)。
――今回、めでたくBlu-ray化、力がある作品、舞台を映像にしているわけですが、それでもグッとくるものがあると思うんです。そして多くの方にBlu-rayの映像を観ていただき、さらなるパワーアップを目指して!ということで。最後に皆様、締めをお願いします。
大薮:お話が素敵なものになっているので、とにかく観てください!僕の個人的な意見ですが、いっぱい宣伝してください!友達、親、そうすると2人以上になるので、増えていきますから(笑)。どんどん広めていただいて、再演できるように!皆様の力を信じております!
新里:本当に作品が素晴らしくって…僕はこの作品を最初に見たのが小学生の遠足に向かうバスの中の2時間の、僕らがガチャガチャ騒がないようにするためにながすアニメが実はこれだったんです。その時はタイトルも知らなかった、でもこのお話をいただいた時に「あ、あれだ」って思い出した。1995年のアニメ作品、舞台化された作品、このお話を通して、家族で、本当にいろんな人が観て、すごく胸が苦しくなるような事件とか話題が多いこの時代に、お話もすごいわっと盛り上がるところもあり、またグッと苦しい感情的に苦しいところもたくさんあるけど、このお話全体は結果として心温まる、自分が前に行ける作品だと思うので、本当にたくさんの方に観ていただきたい、Blu-rayだけじゃなく、もう一度、たくさんのところで僕らが体を使って、この作品を届けられるように、再演につながるためにも、このBlu-ray発売が、「ここで終わり」ではなく、次に繋がる、進展っていうんでしょうか、一歩目になればいいなと思っています。
――最後に大締めで(笑)。
折笠:ここ、2、3年はコロナ禍で残念なことに、人と人との絆が少しずつ希薄になっているのかな?っていう風に感じている中で、この『ロミオの青い空』は愛とか友情とか絆とかがとても素敵な形で入っている作品ですので、昔の作品ではありますが、それを今、現代の皆さんが、ステージにして下さって、それをもう一度、こうやってBlu-rayでイチから観られるというのは本当に嬉しいし、素敵だなという風に感じています。『ロミオの青い空』のステージを観て改めて愛とか絆とか友情とか、言葉にすると照れ臭いですが、とても大切なことなので、素直に感じて笑顔になっていただけたら嬉しいなと思います。
――ありがとうございました。
STORY
19世紀後半・イタリアの国境に近いスイスの小さな村で少年ロミオは、貧しくも家族で幸福に暮らしていた。
しかし一家の畑を悪人の陰謀で失ってしまい、ロミオは家計を助けるために、自らを人買いに売りミラノへ煙突掃除夫としてやって来る。
きつい煙突掃除の仕事や親方一家の辛い仕打ち、地元の不良少年団「狼団」との争いなど、ロミオにとって厳しい毎日が続くが、親方の娘アンジェレッタの励ましや親友アルフレド、煙突掃除の仲間たちと助け合って暮らしていく。
そして仲間と共に「黒い兄弟」を結成し、強く友情を誓うのだった。
読者特別企画
サイン色紙プレゼント
折笠愛さん・大薮丘さん・新里宏太さんのサイン色紙を抽選で3名様にプレゼントいたします。
下記のメールフォームよりご応募ください。
https://business.form-mailer.jp/fms/82699bbc182292
<公演記事>
[Blu-ray情報]
【BD】ミュージカル「ロミオの青い空」
2022年10月28日(金)発売予定
価格:13,200円(税込)
品番MOVC-0387
発売・販売:ムービック
1995年にフジテレビ系列の『世界名作劇場』シリーズの第21作目として放送された
日本アニメーション制作のテレビアニメ「ロミオの青い空」が放送終了から26年経って待望のミュージカル化。
演出を西森英行氏、脚本に鄭 光誠氏、音楽は和田俊輔氏がそれぞれ担当し、
全28曲を披露する壮大なミュージカルになりました。
仕様:BD2枚組(DISC1:1幕 DISC2:2幕+特典映像)
原作:リザ・テツナー(『黒い兄弟』より)
監修:日本アニメーション
店舗特典あり。詳しくは公式サイトを。
スタッフ
監修:日本アニメーション/原作:リザ・テツナー(「黒い兄弟」より)
演出:西森英行
脚本:鄭 光誠(ヴァカーエンターテインメント)
音楽:和田俊輔
出演
≪黒い兄弟≫
ロミオ 大薮 丘
アルフレド 新里宏太
ダンテ 南部海人
アントニオ 小波津亜廉
ミカエル 輝山 立
アウグスト おでぃ
ベナリーボ 八巻貴紀
エンリコ 佐藤弥益
バルトロ 米澤賢人
ジュリアーノ 吉元祐典
≪狼団≫
ジョバンニ 塩田康平
リナルド 鈴木凌平
ニキータ 七木奏音
タキオーニ 吉田英成
リオ 山内涼平
ファウスティーノ 辻本将平
アンジェレッタ 北澤早紀(AKB48)
カセラ教授/ロベルト クラウス
ビアンカ 田上真里奈
ロッシ親方 中本雅俊
エッダ あべこ
アンゼルモ 大野瑞生
グラゼーラ 永咲友梨
イタリア国王/モレッティ署長 鬼束道歩
ジェシカ 大月さゆ
シトロン 鈴木たけゆき
ルイニ/マウリッツォ 和泉宗兵
イザベラ 久世星佳
≪アンサンブル≫
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中村ひより
桃菜
飯沼帆乃佳
市原果歩
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取材・文:高浩美