どこかにいる、いた、いない。
欲求と不確かな存在を描く一夜のフィクション。
ゆうめいでは実体験や取材に基づいて作品を描き、時には実際の人物を出演させ、上演を行うことそのものが現実でありドキュメンタリーともなる作品を作り上げてきたが、今作は都心から遠く離れた山奥の駆け込み寺的なコミュニティを描き、国の情勢、個々人の人間関係、当事者と当事者以外の認識の乖離によって「東京芸術劇場に出演できない存在」を主軸に置くと共に、実際に体験した出来事から解読できる人間の習性を描写しながら、立ち上がるモキュメンタリーかつエンターテイメントの作品を上演。
中央にスクリーン、開演前に諸注意がスクリーンが映し出される。そして場内アナウンス、スクリーンには映画の予告編、実際にこれから公開になる映画の予告編だ。そして映画館でよく見る「映画泥棒」の劇場CMが流れる。突然、客席に怒号が。海賊版の制作をしていた須田(相島一之)を映画館で捕まえた岡(鈴鹿通儀)。ここはかなり、びっくり。
舞台上はとある店、『ハートランド』、物語に登場する映画『ハートランド』と同じ名前。本がたくさん並んでいる。昼間はブックカフェ。夜はバー、時にはライブも行う様子。岡と相葉がやってくる。岡の手には荷物がいっぱい。江原、羽瀬川、この物語に登場する人物が舞台に。一見、和気藹々な様子。なぜか店は店主不在。外国人のユアンが駆け込んでくる。彼らの会話から透けて見えるそれぞれの想い、関係性、そこから思いも寄らない展開となっていく。
モキュメンタリーとは虚構の物語を、あくまでも事実を伝えるドキュメンタリーとして構成する映像手法。映画では1950年代にすでに現れている。リアルに感じられる会話、そこから生まれる彼らの行動、須田の意図は?岡は相葉のモキュメンタリーを撮影できるのか、ユアンは何をしにきたのか、そこは劇場で目撃して欲しいが、ノンストップの2時間、後半は怒涛の展開、人間の本性、VRを体験しているシーンがあるが、VRは「仮想現実」とも訳される。
コンピューターによって創り出された仮想的な空間などを現実であるかのように疑似体験できる仕組み。演劇はもちろん虚構であるが、そこにドキュメンタリー風なものを組み合わせることによって舞台上にその”化学反応”が起きる。挑戦的な試み。だから、”演劇”なのかもしれない。公演は30日まで。
あらすじ
数年前、『ハートランド』という名の映画の公開日。
劇場映画をビデオカメラで撮影し海賊版の制作をしていた須田(相島一之)を映画館で捕まえた岡(鈴鹿通儀)。
岡はそれを機に、商業映画の監督である父の影響もあり、映画に興味を持ち監督を志す。
数年後、岡は俳優の相葉(児玉磨利)とのモキュメンタリーを撮影しに相葉の地元へ向かう。
相葉の幼少期から馴染みのある、映画のタイトルと同じ名前の店、ハートランドに寄ることになった。
そこは昼間はブックカフェ、夜はバーやライブスタジオ、そして駆け込み寺である。
様々な背景を抱えた人々が集まり和気藹々としている、俗世とはかけ離れた場所だった。
久々に訪れた相葉だが、様子が変わっていることに気付く。マスターさえいない。
夜、相葉の知り合いである江原(高野ゆらこ)と羽瀬川(田中祐希)を含めた4人で鍋を囲む。
ハートランドに外国人のユアン(sara)が駆け込んできたことにより関係が崩壊した話が告げられる。
そしてユアンに惚れ込んだ人たちの中に、かつて自分が映画館で捕まえた須田がいることを岡は知り……。
概要
日程・会場:2023年04月20日 (木) ~04月30日 (日) 東京芸術劇場 シアターイースト
作・演出:池田 亮
出演:相島一之 sara 高野ゆらこ 児玉磨利 鈴鹿通儀 田中祐希
舞台監督:竹井祐樹
舞台美術・衣裳:山本貴愛
音響:佐藤こうじ(Sugar Sound)
照明:吉本有輝子(真昼)
宣伝美術:りょこ
宣伝協力:吉田プロモーション
制作:高橋戦車(オフィス鹿)
協力:梅田芸術劇場、オフィス鹿、シス・カンパニー、Sugar Sound、松竹芸能、STAGE DOCTOR、文学座、真昼
主催:合同会社ゆうめい
提携:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場