ミュージカル『生きる』が再再演となる。原作は1952年に公開された日本映画、監督は黒澤明、主演は志村喬。2005年発表の「史上最高の映画100本」にも選出されている名作。ミュージカルは初演は2019年、再演はコロナ禍真っ只中の2020年、それを経ての再再演となる。
会見の出演者は市村正親、鹿賀丈史、村井良大、上原理生、 高野菜々(音楽座ミュージカル)、実咲凜音、福井晶一、鶴見辰吾
ピアノ演奏は村井一帆(稽古ピアノ兼音楽監督補助手)。
最初に歌唱披露。
1曲目は『人生の主人になれ』上原理生。
自分の人生が残り短いと知った主人公・渡辺勘治が自暴自棄になって向かった飲み屋で売れない小説家と出会う。金の使い方も遊び方も知らない彼に小説家は金の使い方を教えてやろうと夜の街に誘い出す。「もっと人生を楽しむべき」と説く小説家のソロナンバー。 ニヒルな雰囲気で上原理生が歌唱。
2曲目『ワクワクを探そう』高野菜々。
渡辺勘治は夜の街で遊んで見たものの、人生の楽しさを見つけられずにいた。そんな時に偶然出会ったのが同じ部署で働く小田切とよ。彼女は退屈な時は同僚にあだ名をつけて楽しんでいた、と語る。『ワクワクを探せば毎日が楽しくなる!』、心が元気になる溌剌としたナンバー。高野菜々がコロコロと表情を変えて元気いっぱいに歌う。
3曲目『二度目の誕生日』鹿賀丈史
エネルギーに溢れる小田切とよからのある言葉を聞き、残りの人生でまだ何かできるのでは?と考え始める。まだ遅くない、今日から生まれ変わるんだ、と新たな人生への決意を誓うナンバー。熱い想いを歌にのせて鹿賀丈史が円熟した歌を。
4曲目『あなたに届く言葉』村井良大
渡辺勘治の一人息子・光男。父の病気を知らない光男は、毎日遅くまで帰らずにどこで何をしているのかもわからない父親に、混乱の中で怒りをぶつけます。どうすれば届くのか、昔のように戻れるのか。息子が父親への想いを吐露する1曲。悩める息子・光男、村井良大が光男のもやもやした想いを歌に。
5曲目『金の匂い』福井晶一
勘治は市民のために公園を創ると決意し奔走するが、ヤクザたちは、その場所に赤線を作って金を儲けようと勘治たちを阻止しようとする。危険な香り漂う迫力の1曲。福井晶一がワルな雰囲気を漂わせながら。
6曲目『最後の願い』市村正親
勘治は市民のために公園を創るという夢まであと一歩というところで、勘治は再び強い痛みを覚える。人生の意味をやっと見つけられた今、最後までこの命を生き抜いてみせる。「生きる」ことへの喜び、強い想いがこめられた1曲。強い想い、自分の残り時間はあとわずか、渾身の歌を市村正親が聴かせる。
ボリュームたっぷりの歌唱コーナー終了後、改めてキャストが登壇し、会見、拍手。
最初に演出の宮本亞門からメッセージが届いた。「いよいよ再々演…ミュージカル『生きる』が始まります。本当にこの作品が好きです。毎回、心が洗われます。生きるための根源が詰まっています。次の未来に向けて何が大切か…そんなことが入っている作品です。市村正親さん、鹿賀丈史さん、今回はどんなアプローチで来るのか、見逃すことができない…濃密なドラマが繰り広げられます。新たなキャストも加わり、新たな『生きる』が生まれます、劇場でお待ちしております」と読み上げられた。
まずは「続投」の市村正親、鹿賀丈史、村井良大。
市村正親
「2019年、コロナはまだの頃、稽古場に入って台本がどんどん変わっていって…毎回変わってスリリングな稽古でしたが、懐かしいですね。初演は爆発的な拍手をいただきました。2020年はコロナ禍の中で、(時代的に)それなりに合ってるなと。今回はコロナ禍も収まって今年はばっちり…」
鹿賀丈史
「3度出る喜びに浸っています。日本はどこへ行くのだろうか、物価高はどうするの?こういったなかで『生きる』シンプルで深いメッセージ、日本人はどうやって生きていこうか…生きる力をお持ち帰りいただきたいと思っております」
村井良大
「再演からの参加です。コロナ禍で上演できるのかできないのか、ギリギリまで待っていた…毎日、毎日公演ができる喜びを感じながら、一回、一回を生き切る。1日も欠けることなく、誰も欠けることなく…今年はあの時代を経たからこそ、これからを進んでいくことができる。光男はこれからの日本を生きる、家族の幸せを願いながら毎日生きている。いろんな方に観ていただきたい、特に若い方、老若男女、みなさまの心に届けたい」
それから新キャスト。
上原理生
「再演を拝見しました。感動したのを覚えています。あの黒澤映画が見事に舞台に!日本のオリジナルミュージカル『いい作品だな、やらせていただけるなら』と思っていたら…オファーいただいて嬉しかった、嬉しい思いでいっぱいです。今の我々にも『どう生きていくのか』…大きな魅力です」
高野菜々
「音楽座ミュージカルに入って初めての外部出演です。オファーを頂いたときは正直びっくりしました。劇団を超えてオリジナルミュージカルを創るのは光栄です。不安の方がいっぱいですが、身の引き締まる思いです。物語の一部になれるように頑張りたい。作品は映像で拝見し、映画も拝見しました。生きることに真正面から向き合っている作品。どこにでもいる男性が生きることに日常の中で真正面から向き合う、しかもエンタメで華やかな舞台で、これも魅力だなーと感じました。とよは(渡辺勘治)に大きなきっかけを与える役ですが、たいそうなものではない日常の中に…大切に演じたいです」
実咲凜音
「日本の名作に参加、光栄に思います。新しい作品なのでワクワクします、新しい課題に出会う幸せ、初演を拝見しまして涙が流れました。『私は毎日、悔いなく生きているのかな?』と問いかけました。私が演じる一枝は自分というものを持っている意志の強い女性と思っています。高野さんと同い年で(笑。高野と目を合わせて)、たくさんの方に観ていただけたら」
福井晶一
「役者仲間からの評判を聞いて観にいかせて頂きました、素晴らしい作品で。原作はミュージカルに適しているんだなと。オファー頂き、嬉しかったです、四季の大先輩(鹿賀丈史、市村正親)と初めてご一緒します。また暴力で支配する役です(笑)…たくさんの方に届けたいと思ってます」
鶴見辰吾
「『命短し〜♪』(いきなり歌い出す)…初演は市村正親さんで拝見し、再演は鹿賀丈史さんで拝見、涙が止まらない、関係者席で恥ずかしい(笑)。1998年に黒澤明が逝去して、もう作品に触れることはないんだなと寂しい思いをしましたが、ミュージカルとして復活して、黒澤作品に関われる、夢が叶ったようで嬉しい、でも歌うナンバーは『夢みるのは愚かだ』(笑)、コテコテの昭和気質で妨害する役です。生きてるだけで素晴らしいというメッセージ、ご覧になって頂きたい。(福井晶一の方を向いて)しっかりと悪役を福井さんとともに(笑)」
それから作品PR。
鹿賀丈史
「黒澤明監督のご長男の黒澤久雄さんから聞いたのですが、監督が『(『料理の鉄人』を見て)鹿賀丈史は使えるかもしれんなー』と言ってたとか…インパクトのある仕事だったのかな?…こういう時代だからこそ」
市村正親
「初演に志村けんさんが観にきてくれました。気に入って下さって涙流しながら『この作品はいい』と。誕生日のお祝いに行ったりもしました。志村けんさんお墨付きの『生きる』。いなくなった人たちに向けてそんなことを思い出しながら…みなさんに”深刻”(会場の新国立劇場にかけて)にならないように」駄洒落全開!
それから記者席から質問が。渡辺勘治に何か一言、言葉をかけるとしたら?
鹿賀丈史
「『人生笑って笑顔で…ご苦労様でした』という言葉をかけたい」
市村正親
「病気に気がついて、生きることは美しい『勘治さん、いい感じ!』(勘治にかけて)」再び、駄洒落全開!(会場大爆笑)で会見は終了した。
あらすじ
定年を間近にした役所の市民課長、渡辺勘治。 早くに妻を亡くした彼は息子夫婦と同居しているが、心の距離は遠い。 そんなある日、渡辺は、自分が胃癌であり残りの命が長くないことを知る。 自暴自棄になった彼は、居酒屋で出会った売れない小説家と夜の街に 繰り出し、人生を楽しもうと試みるが、心が満たされることはなかった。 翌朝、市民課で働く女性・小田切とよに偶然出会う。太陽のように明るい 彼女に惹かれ、頻繁に誘うようになる渡辺は「残りの人生を、1日でいいから 君のように生きたい」と本音を語る。そして、とよが何気なく伝えた言葉に 心を動かされ、渡辺は人生をかけた決意をするのだった。
概要
東京
日程・会場:2023 年9月7日(木)~24日(日) 新国立劇場 中劇場
大阪
日程・会場:2023 年 9 月 29 日(金)~10 月 1 日(日) 梅田芸術劇場メインホール
キャスト
渡辺勘治(ダブルキャスト) 市村正親 /鹿賀丈史
渡辺光男 村井良大
小説家(ダブルキャスト) 平方元基/上原理生
小田切とよ 高野菜々(音楽座ミュージカル)
渡辺一枝 実咲凜音
組長 福井晶一
助役 鶴見辰吾
佐藤誓
重田千穂子
田村良太
治田敦、内田紳一郎、鎌田誠樹、齋藤桐人、高木裕和、松原剛志、森山大輔 あべこ、彩橋みゆ、飯野めぐみ、五十嵐可絵、河合篤子、隼海惺、原広実、森加織 齋藤信吾、大倉杏菜(スウィング)
安立悠佑
スタッフ
原作:黒澤 明 監督作品 「生きる」(脚本:黒澤 明 橋本 忍 小國英雄)
作曲&編曲:ジェイソン・ハウランド 脚本&歌詞:高橋知伽江 演出:宮本亞門
美術:二村周作、照明:佐藤 啓、音響:山本浩一、衣装:宮本まさ江、 ヘアメイク:小沼みどり、映像:上田大樹、振付:宮本亞門 前田清実、 音楽監督補:鎭守めぐみ、指揮:森 亮平、歌唱指導 板垣辰治、 稽古ピアノ兼音楽監督補助手:村井一帆、稽古ピアノ:安藤菜々子、 演出助手:伴 眞里子、舞台監督:加藤 高
主催:ホリプロ TBS 東宝 WOWOW
後援:TBS ラジオ
特別協賛:大和ハウス工業
企画協力:黒澤プロダクション
企画制作:ホリプロ