名作や 名曲を軸に、今を生きる女性たちに勇気と感動を伝えたい という思いの元、歌・ドラマ仕立ての構成で綴られる本シリーズ、昨年の2017年の年末、“座・ALISA”の旗揚げ公演を行った観月ありさ。オッフェンバックの「天国と地獄」原作をクリスマスらしい悲喜劇にリライトした「12月25日、雪」を上演、松下由樹ら実力者が集結した良質の舞台であった。そして第2弾、2018年8月下旬上演の『座・ALISA Reading Concert vol.II「キセキのうた」』を上演。本作出演の観月ありさが、 元宝塚歌劇団トップスター湖月わたると春野寿美礼と共演し、さらに新ボーカルユニットも結成。もちろん、作品には、観月ありさ、湖月わたる、春野寿美礼 の40代 女性三名が出演し、歌と朗読、そしてダンスのエンターテインメントを融合し、悲喜劇を披露する。今作は、“40代女性にエールを贈りたい”という構想から、女性に多くの勇気を与え続けてきた松任谷由実の楽曲を原作に観客に届けていくという。
会場は渋谷のセルリアンタワー内の能楽堂、もちろん、背景は松。この松の前に蓄音機、今ではなかなかお目にかかれない代物だが、なんとも雰囲気があって、作品をさりげなく盛り上げる。オルゴールの音が響く、シンプルだがノスタルジックな音色。このオルゴールがこれから始まるストーリーの鍵を握る。
モノローグ、「思い出して、あの日、あの時、みんなはまるで太陽だった・・・・・・」このしっとりとした雰囲気から一転、ノリの良い音楽、「お待たせ〜!」と3人が登場、キュートなカラーのドレスに身を包み、歌うは「ルージューの伝言」、楽しく歌い踊る(アイドル風の身振りは必見!)。アップテンポな場面で、ここは文句なく楽しい。そして物語が動きだす。
3人がユニットを組んで歌手活動をしていた時のマネージャーが病を得て亡くなった。葬儀に参列した3人だったが、後日、3人に宅配便が・・・・・差出人は、なんと亡くなったはずのマネージャーからだった。中身はオルゴール、戸惑う3人。結婚して主婦、子供もいるオサ(春野寿美礼)、結婚したが子供はいないアリ(観月ありさ)、歌手活動を細々と続けているが結婚はまだ、のワタル(湖月わたる)。「私たちは十分、おばさん」と言い、「みんなと、こんな時しか会う機会がないじゃない」と言う。この3人ではなくても、この状況は「ある、ある」と頷けるセリフ。
高校や大学で仲が良かった同士でも、違う道に進めば疎遠になったりする、会うのは同期会?恩師の葬式?そんなところではないだろうか。いつも行動を共にし、励ましてくれたマネージャーの逝去をきっかけに自分のこと、同志のこと、歌のこと、人生を振り返る。朗読と歌と交互に、の構成。ユーミンの名曲と登場人物の心情が重なり、呼応し合う。それは観客も同じこと。何かの時に、何かの出来事の時に、歌があった、ユーミンのあの歌が。マネージャーが遺した言葉「歌を忘れないで愛してください。歌で出会えた3人だから」。オルゴールを3つ、一緒に鳴らすと、浮かび上がるその旋律は・・・・・・。
長年、芸能の世界でトップを走り続けている観月ありさと元宝塚トップスターの湖月わたると春野寿美礼の3人、揃うとさすがのオーラ、歌唱力も抜群で、芝居とは別に、コンサートをしてもいいんじゃないか、ぐらいの歌の場面。そして朗読・芝居のシーン、設定が3人をイメージして書かれているので、虚と実が重なり、リアリティも感じさせる。「40代の女性にエールを」ということだが、老若男女、世代を問わない普遍的なメッセージも感じる。凝った照明もなく、プロジェクション・マッピングも使わず、むしろシンプルな能舞台。それにふさわしく基本、舞台上には何もない。背景の松が照明によって色合いが変化する。絆、友情、そして生きる意味、そこにはいつも寄り添うように歌がある。3人での歌唱、ソロ、朗読、余分なものをそぎ落としたステージは能に通じる。ラスト近く「私たちは歌い続ける」「生きるための歌でもある」「未来のために!」というセリフがあるが、この言葉は観る者に勇気をくれる。見終わった後は・・・・・・きっとカラオケ屋さんでユーミンの歌を歌いたくなる。そんな、単純明快でいながらも奥の深い舞台であった。
<使用楽曲>
ひこうき雲
ルージュの伝言
ツバメのように
今年いちばん風の強い午後
ダンデライオン〜遅咲きのたんぽぽ
ずっとそばに
DESTINY
あの日に帰りたい
Valentine’s RADIO
ANNIVERSARY 〜無限にCALLING YOU〜
シンデレラ・エクスプレス
君が好きだから
卒業写真
SAVE OUR SHIP
Carry On
<松任谷由実コメント>
私は今まで、どんな設定、どんな情景の歌でも、“リアルな気持ち”こそ大切と思って作ってきました。今回、本当に素敵なキャリアをお持ちの3人が、それぞれの今を、自然に歌と重ねてくだされば、この舞台をご覧になった全ての方のMid lifeが、豊かに輝くことと思います。
私も、自身の実人生のそんな時代を切なく懐かしく思い出しながら、拝見するのを楽しみにしています。
【概要】
タイトル:座・ALISA Reading Concert vol.Ⅱ「キセキのうた」~私たちの「今」を歌おう~
出演:観月ありさ 湖月わたる 春野寿美礼
松下優也(大阪、愛知公演のみストーリーテラーとして出演)
原作: 松任谷由実 楽曲集
上演台本・演出:モトイキ シゲキ
音楽監督:鎌田雅人
歌唱指導:今井マサキ
日時:
<東京>2018年8月26日(日)~8月29日(水)/9月1日(土)~9月3日(月)セルリアンタワー能楽堂
<大阪> 9月22日(土)~9月23日(日)サンケイホールブリーゼ
<愛知> 9月29日(土)~9月30日(日)ウインクあいち大ホール
主催・企画・製作:座・ALISA Reading Concert製作実行委員会
HP:http://www.za-alisa.com/
公式twitter:@za_alisa_info
<お問い合わせ>
(東京公演)サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00~18:00)
(大阪公演)キョードーインフォメーション 0570-200-888(全日10:00~18:00)
(愛知公演)中京テレビ事業:052-588-4477(平日10:00~17:00)
文:Hiromi Koh