TRUMPシリーズ10th ANNIVERSARY ミュージカル「マリーゴールド」愛と憎しみと嫉妬と憧れと思惑と 

「ミュージカル『マリーゴールド』TRUMPシリーズ10th ANNIVERSARY」が開幕した。
TRUMPシリーズは2019年に10周年を迎える劇作家・末満健一のライフワーク的作品で、これらのシリーズ関連作はすべて『TRUMP』に帰結するようにつくられており、関連作を踏まえて『TRUMP』を観ると伏線が回収され、解釈が変わるのも本シリーズの魅力のひとつである。初演は2009年、ピースピットVOL.9『TRUMP』出演は田渕法明、菊池祐太、山浦徹、赤星マサノリ、末満健一 他、シリーズの原点となる初演であった。その後の2012年に上演されたピースピットVOL.16『TRINITY THE TRUMP』男性キャストによるTRUTH版とREVERSE版、女性キャストによるFEMALE版の3バージョンで上演された。
永遠の命を持つ原初の吸血種“トランプ”の伝説に翻弄される“ヴァンプ”を描いたゴシックファンタジーでアニバーサリー企画第1弾の「マリーゴールド」では、ガーベラという少女と、その母親・アナベルを軸とした物語が展開する。

舞台上にはたくさんの赤いマリーゴールド、始まる前からその真紅の色彩が妖しくこちらに向かって放たれている。舞台上のアシメントリーな傾斜もこれから始まる不穏な、不安な空気感を予感させる。

衝撃的な幕開き、殺戮シーン、赤い花がますます赤く見える。この物語の主要人物であるアナベル(壮 一帆)が登場し、歌い、それからヘンルーダ(吉野圭吾)、ベンジャミン(宮川浩)も登場し、重厚な歌を聴かせるが、これが圧倒的な迫力で観客に迫る。アナベルは小説家、担当編集者であるコリウス(東啓介)は彼女に並々ならぬ愛情を抱いている。ヘンルーダはアナベルの幼馴染で医者、ガーベラの主治医でもあり、屋敷に頻繁に出入りしている。娘・ガーベラは基本的に屋敷から外に出ない。母が周囲との関係を断絶しているからだ。アナベラの妹であるエリカ(愛加あゆ)は姉が大好きでガーベラが疎ましい。そんな人間関係と各々が抱いている感情をミュージカルナンバーに乗せて提示する。そんなところにアナベルの熱烈なファンである少年・ソフィ(三津谷亮)とその友人であるウル(土屋神葉)、街にやってきてこともあろうにガーベラを連れ出してしまう。そこから少しずつそれぞれの思惑や深い感情が明らかになっていき、表面的には何の変化もなかった人々の関係性と空気感が少しずつ音を立て、さざ波がやがて大きなうねりとなって全員を飲み込んでいく。ベンジャミンはもともと、アナベルをマークしていた公安警察の幹部、彼の眼光は鋭い。

 

皆、歌唱力が高く、厚みのある重唱を聴かせてくれる。後半の戦う決心をするアナベル、エリカ、ヘンルーダ、コリウスの四重唱は圧巻でここは心に響いてくる場面だ。街の人々、異形、異質のものに恐れと不安と敵対心を抱いている。よってアナベルやガーベラは異質な存在、そこにつけこむようにしてベンジャミンが扇動する。皆、拳を上げ、武器を掲げる。命を張って愛する人を守ろうとするコリウス、ヘンルーダ、エリカ、アナベル、魂をかけて人々に対峙する。そこへ狂気を孕んだソフィが・・・・・彼は結局、何者なのか・・・・・・。

実は悪人は誰もいない。ヒール役であるベンジャミン、彼もまた本当は善人であり、信じていることを固い決意を持って遂行しているのだ。皆、己の信じる愛、矜持がある。それを決死の覚悟で守ろうとする。それをできる限りの美しくも妖しく、厚みのある表現で描く。倒錯的なソフィもまた、自身が信じる道に向かって突き進む。「永遠の命を」と歌い、ガーベラは「永遠なんてクソくらえ」と言い放つ。
一瞬、たじろぎも見せるソフィ。自分では「これが正しい、これが幸せ」と思っていることを他者もそう感じているとは限らない。

ラストは壮絶な殺戮、その先に見えるものは?アナベルとガーベラは?意外性のあるジェットコースター的な展開、登場人物たちの生き様と信念と愛、運命、そしてそれをたくさんのマリーゴールドが『見て』いる。最後の最後のアナベルとガーベラの抱擁は真紅な光を放ち、そしてどこまでも深く、深く、観る人の心に刻み込まれる。マリーゴールドの意味は『聖母マリアの黄金の花』。花言葉は「信頼」、「悲しみ」、「絶望」、「嫉妬」、「勇者」、「悪を挫く」、「生命の輝き」、「変わらぬ愛」、「濃厚な愛情」。

【意気込みコメント】

<壮一帆>

本作はTRUMPシリーズ初のミュージカルということで楽曲も豊かで華やかです。稽古場で仕上がったものに衣裳と照明が加わることによって、より一層ワクワクしていただける作品に仕上がっていると思います。ストーリーでは母娘、それを取り巻く人たちの人間模様が奥深く表現されているので、こちらも楽しみになさってください。キャストはそれぞれに甘えることなく集中力を持って稽古に取り組んできました。カンパニーの力が凝縮された最高の舞台を皆様にお届けいたします!

<田村芽実>

TRUMPシリーズへの出演は4作目となりますが、今回も世界観に圧倒されました。これぞ《圧倒的美演劇》だと思っています。皆様の心をえぐります。どうぞ、お楽しみください。

<末末健一>

この作品を一言で述べるならば「母娘の愛の物語」です。でも出来上がった作品は、そんな言葉では言い表せないほどの生半可なものではなくなってしまいました。稽古をしながら思ったことは、愛には即効性と遅効性のものがあり、また致死量があるということ、壮一帆さんと田村芽実さんの演じる母と娘がその致死量の愛を身震いするような深度で体現してくれています。

8月28日ソワレ公演(19時よりスタート)のライブビューイングも決定している。

<キャラクター紹介>
・壮 一帆/アナベル
マリーゴールドの花に囲まれた屋敷に住む小説家。周囲との関係を断絶している。
・田村芽実/ガーベラ
アナベルの娘。屋敷に閉じ込められるようにして暮らしている。
・東 啓介/コリウス
アナベルの担当編集者。ひと回り以上年上であるアナベルに歪んだ恋心を抱く。
・愛加あゆ/エリカ
アナベルの妹。姪であるガーベラを疎ましく思っている。
・三津谷亮/ソフィ
アナベルの熱狂的なファンである少年。アナベルに会うために街にやってくる。
・土屋神葉/ウル
ソフィの親友。ソフィに付き添い街を訪れる。
・宮川 浩/ベンジャミン
アナベルを反社会的人物としてマークしている公安警察。
・吉野圭吾/ヘンルーダ
ガーベラの主治医。アナベルとは幼馴染同士である。

【公演概要】
ミュージカル「マリーゴールド」
作・演出:末満健一
音楽:和田俊輔
キャスト:壮 一帆 田村芽実 東 啓介 愛加あゆ 三津谷亮 土屋神葉 宮川 浩 吉野圭吾
公演スケジュール:
東京:2018年8月25日(土)~9月2日(日)
サンシャイン劇場
大阪:2018年9月7日(金)~9月9日(日)
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
企画・製作/ワタナベエンターテインメント
公式HP/http://marigold.westage.jp