獅子文六の戦後に書かれた小説『二階の女』、飯沢匡が今を予見する筆致で脚本化、博品館劇場にて12月13日から17日まで上演される。
NLT顧問であった岩田豊雄と、喜劇路線の演出家飯沢匡の原作・脚本の「二階の女」は、岩田のユーモアと飯沢の知性が凝縮された作品。このユーモアの再現こそNLTが、今行う意義と考えて上演。演出は、リアルな人物造形への目配りと多角的な舞台空間の創造に定評のある鵜山仁を起用、NLTが目指す喜劇を生み出す。
圧力による主人公の夢への断念と、結婚の破錠。一見すると悲劇だが、対比を周りの人々との関わりで、笑いへと昇華する。NLTの適材適所を配した上で、文学座の釆澤靖起氏を迎え最善の配役に。戦争を想起させる、二階の女が最後に笑いながら去るのはなぜか。観客にこの意味を問いかけ、「海外の戦争」が身近に迫る現在、“新しい戦前”という言葉も生まれた今、上演。
作家:獅子文六
獅子文六 1893(明治26年)年7月1日 横浜市生まれ 1969年(昭和44年)没 本名岩田豊雄
日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章受章、卓越したユーモアのセンスを持つ、大衆性を兼ね備えた小説を多数執筆した、昭和のベストセラー作家。1950年代から30年間の間に多くの作品を生み出す。映画化作品は『海軍』の他多数。近年は2017年にNHKで『悦ちゃん〜昭和駄目パパ恋物語〜』が土曜ドラマ化。獅子文六は小説執筆のペンネーム(四四、十六のもじり)。 演劇活動は「岩田豊雄」本名で活動した文学界の二刀流作家。
そして昭和初期の日本人男性にしては175センチの大男にして美食家で食いしん坊、国際結婚も何のその、3年間のフランス演劇研究で滞在中にマリー・ショウミーと結婚。(妻は日本になじめず病んでしまったのですが・・・)
かなりの破天荒な快楽主義者のような豪傑な人柄から執筆される小説は風刺のきいたユーモラスな作品で、昭和の作品でありながら令和の今日、色あせることなく、むしろ艶やかさを増した作品も。
長編は作品が映画やテレビドラマになり、ご存じの方も多いと思うのですが、短編に関してはなかなか知ることが出来なかったが、獅復刻や電子書籍化が進み、短編も読めるようになってきている。
「ロボッチイヌ」は昭和34年に執筆されたとは思えないほど、日本の将来を見据えたヒューマンユーモア作品、「ライスカレー」は見習いコックの女給仕へのほのかな切ない恋心とブラックユーモアを織り交ぜたラブストーリー、「芸術家」は自身のフランス滞在をモチーフにしたサスペンスコメディ。
などなど多種多様の作風で読者のハートを鷲掴みにする。短編なので30分以内で1作品完読可能。
やめられない止まらない・・・と表現した評伝があるが、まさにその通り!
そして「二階の女」はヒューマン・ダーク・コメディ、先ずは小説で獅子文六を読み、「二階の女」を観ては。
「二階の女」は上演が終わるとNLTのネットショップでWEB版として販売される予定。
あらすじ
獅子文六の戦後に書かれた小説を、飯沢匡が今を予見する筆致で脚本化。
時代は昭和13年から16年の開戦の朝まで。千駄ヶ谷の借間。 ある日突然、この家に貴族院議員の星川侯爵が訪ねてくる。星川の用向きとは、開藩400年の記念事業として、藩史を編纂するので、執筆を史学研究中の山崎に依頼するためだった。星川は「史実であれば遠慮なく書いて欲しい」というが、藩史刊行会の会長である神代海軍大佐は不満げな様子。
山崎の周りは歓迎し、叔母のハルは強引に山崎の見合い話を進めて、つね子との結婚をまとめてしまう。山崎は、仕事も結婚も淡々と引き受けていく。
やがて時局は変わり編纂に神代大佐は口を挟むようになり、隣家の大家の主人の長男耕一は、海軍兵学校に進んでいたが、任官し潜水艦に勤務するようになる。一方つね子は、妊娠をする。そんな時、山崎が執筆を行う二階の仕事部屋に、女がいると、つね子は感じるようになり・・・。
概要
博品館劇場+NLT提携公演 『二階の女』
日程・会場:2023年12月13日~17日 博品館劇場
原作:獅子文六
脚本:飯沢匡
演出:鵜山仁
出演:
山崎久彌(大学の講師)/釆澤靖起(文学座)、つね子 その妻/吉越千帆、
恩田千助(久彌の伯父)/渡辺力、はる その妻/泉関奈津子、
星川侯爵/川端槇二、神大海軍大佐/加納健次、
小川茂吉(隣家の家主)/海宝弘之、かね その妻/阿知波悟美、耕一 その息子、海軍兵学校生/松木健、とも子 耕一の従妹で許嫁/小笠原里奈、
鉢谷 つね子の育ての親/山田敦彦、とし子 その妻/杉山美穂子、
中野まつ 大学研究室の助手/山﨑華奈、
佐藤 山崎の友人/亀井惟志、女探偵/安奈ゆかり
美術:乘峯雅寛 照明:古宮俊昭 音響:小林史 衣裳:伊藤早苗
舞台監督:竹内一貴 制作:小川浩(NLT) 樋口正太(博品館劇場)
公式サイト:http://www.nlt.co.jp