
舞台『フラガール- dance for smile ‒』が新国立劇場 中劇場にて開幕。
日本アカデミー賞最優秀作品賞やキネマ旬報ベストテン第1位など、数々の映画賞を受賞し、日本映画史に名を刻む名作映画『フラガール』(2006年公開)の舞台化作品。
家族や町の反対を乗り越え、「常磐ハワイアンセンター」という新しい光に向かって進んでいく少女たちの姿は、今なお多くの人々の心を揺さぶり続けている。これまで何度も舞台化されるたび大きな感動を呼んできた舞台『フラガール』が、2025年春、フレッシュなキャストを迎えて待望の再演を果たす。物語の舞台は昭和40年の福島県いわき市。エネルギー革命によって炭鉱の町が衰退していく中、未来を切り開くためフラダンサーを目指す少女たちの奮闘を、笑いと涙、感動とともに描く。
フラガールのリーダー・谷川紀美子役には、日向坂46を卒業し舞台単独初主演となる丹生明里。家族の反対を押し切ってフラダンサーを目指す少女の強さと揺れる心を、持ち前の真っ直ぐな魅力で演じる。都会から来た元ダンサーでフラガールたちの指導役・平山まどか役には、 Netflix ドラマ 『極悪女王』ではジャガー横田役を演じ、その確かな演技力が話題になった映梨那。 過去に傷を抱えながらも少女たちに全力で向き合っていく姿を熱演する。
さらに、紀美子の親友・木村早苗役には中村里帆、シングルマザーでフラガールを目指す初子役には木﨑ゆりあが出演。 舞台版オリジナルキャラクター・和美役には菅原りこ、 紀美子の兄・洋二朗役には細貝圭、ハワイアンセンター設立を推進する労務課長・吉本紀夫役には神尾佑、そして「炭鉱の娘は炭鉱を支えるもの」と信じる母・千代役に有森也実。
時は昭和40年、西暦でいうと1965年、今から60年前、昭和43年にはGNPが資本主義国内で第二位になった。明治初期より本州最大かつ東京に最も近い炭鉱である常磐炭田の開発が始まり、隣接する日立鉱山とともに、明治期の日本の近代化に欠かせない地域となった。つまり炭鉱、石炭で栄えた町であった。だが、時代は変わり石油へのエネルギー革命が進み、石炭産業が急速に衰退した時代、朝鮮戦争に伴う1950年代前半の朝鮮特需期には需要増から一時好況になったが、1950年代後半には労働運動の盛り上がりによる賃金上昇、1962年10月の原油輸入自由化によってエネルギー革命が加速、構造不況に。整理解雇は1955年から始まった。そんな状況ゆえ、労務対策として、また収入源確保のため、炭鉱地下から湧き出る豊富な常磐湯本の温泉水を活用し、「夢の島ハワイ」をイメージしたリゾート施設「常磐ハワイアンセンター」(じょうばんハワイアンセンター)の建設が計画された。これがこの物語のバックボーン。そしてここでも描かれているが、この企画を疑問に思う者もいた。物語の出だしはそんな街の様子が描かれている。
ストーリー自体は映画や舞台を見たことがあれば、先刻承知だが、それでも見てしまう、わかっているのにドキドキするのは作品の力、そして元々が実話をもとにしているからこそのリアリティ。
募集のチラシを見て応募しに来た少女たち、だが、資料映像を見た途端に、ほとんどの応募者が尻込み。紀美子(丹⽣明⾥)も帰ろうとするが早苗(中村⾥帆)に引き止められる。「泥まみれの暮らしから抜け出すチャンス」と早苗。紀美子は少し希望を持ち始め、第一歩を踏み出す。これが大体の流れ。
60年も昔のこと、フラダンスへの偏見、炭鉱の町にリゾート施設という当時では突飛な発想、炭鉱で働く男たちや、紀美子の母・千代(有森也実)、兄の洋二朗(細貝圭)らにわかるはずもなく、それでも諦めなかった紀美子、そして彼女とともにフラダンスに取り組む少女たち。東京から元SKDのダンサー、平山まどか(映梨那)がやってきて、その熱血指導!彼女のフラダンスについての説明がわかりやすい!また、体幹、足腰が強くないと実は綺麗に踊れないフラダンス、シンプルに見ていて「フラダンスってすごい」と思えるはず。それでも諦めない紀美子らの姿、そしてフラダンスに魅了され、プロのダンサーになるべく努力をする姿勢は現代にも通じる姿。彼女たちを支えるハワイアンセンターの企画部長・吉本紀夫(神尾佑)、目的に向かって少女たちを励まし、支える。
最後のフラダンスは圧巻、紀美子演じる丹⽣明⾥のソロも見応えあり。この公演のために相当練習、もう、本物のハワイアンセンターで絶対踊れる!と思えてしまう。丹生明里が主人公の紀美子を闊達に演じ、まさに炭鉱の希望の星!勝ち気なまどか、映梨那がビシバシっと。初演から持ち役にしている有森也実の千代、女性炭鉱作業員をまとめる婦人会会長、しっかり者だが、伝統的な価値観にとらわれている人物、旗を振り回す姿は勇ましい。そのほか妹想いの兄・洋二朗(細⾙圭)、まどかが借金とりに追われていることを知り、借金取りから彼女を守ろうと男気を出す。配役が適材適所、良い座組。休憩なしの2時間超えだが、長さを感じさせない、公演は6月2日まで。
なお、公開ゲネプロの前に簡単な会見が行われた。丹⽣明⾥、映梨那、中村⾥帆、⽊﨑ゆりあ、菅原りこ、細⾙圭、神尾佑、有森也実、河毛俊作(総合演出 )が登壇した。
河毛俊作「見所は全部としか言いようがなくて。本当にキャストたちが結構長い稽古期間で、体育会の夏合宿な雰囲気の中で厳しい稽古を積んできたその成果がすごくいろんな意味で出てると思います。物語全体として私が要求したのは、あの懐かしいエンターテイメントをやる話ではなく、今の時代を生きる人々の物語として演出したつもりなんです。それはやっぱり石炭産業というものが斜陽迎えて滅びていく中で、エンターテインメント産業への転換、リスキー、ものすごい大きな産業構造の変化の中でもがきながら、自分の道を見出してきた人たちの物語なんです。今の時代、我々がこの産業構造の大きな変化の中で直面している問題とやっぱりすごく重なり合う部分がある、だからそういうことも含めてちょっと物語を掘り起こし直したりしてるところもある。彼女たち、実際のフラガールたちがどういう気持ちで生きて、どういう気持ちで踊ってきたかっていう…単に今アイドルになりたいっていうのではなくて、そうしなければ生きられなかった人たちの物語として自分事として考えてほしいということをみんなに言って、それを理解していただけたと思うんです。だからそこら辺の彼女たちの時代を超えたものに注目していただければ、きっと皆さんの心に届く強く届くものがあると信じてます」
丹⽣明⾥「舞台としては4度目を迎えまして、本当にこの歴史ある劇場で歴史あるこの作品に谷川紀美子役として、今回出演させていただくことができて本当に光栄に思います。この1ヶ月以上稽古にたくさん励んできたので、その成果をたくさん発揮できるように頑張ります」
映梨那「役どころとしては東京から来た元SKDのトップダンサーとしてこの子たちの指導に当たります。現場でも最近制作の方とか音声の方にも『先生』と呼ばれるようになって…みんなで本当に頑張ってきたので、ぜひ見てほしいです」
中村⾥帆「心臓が痛くなるぐらい緊張してるんですけど、でも本当にそれと同じぐらい毎日みんなで汗をかいて必死に稽古してきたので、それをやっとお届けできる嬉しさも同じぐらいあります」
⽊﨑ゆりあ「フラガールの中では唯一のシングルマザーなんですけども、娘のために必死に頑張るかあちゃんの強さというのを…フラガールのレジェンドかあちゃんといえば有森さんなので、有森さんに負けないように出していけたらなと思います」
菅原りこ「舞台にとって唯一のオリジナルの登場人物ということで…物語に登場していくうちに雰囲気だったりとかガラッと変わる瞬間とかもたくさんありますのでそういうところも物語に加わって、物語をもっともっと深いものにできるように頑張って尽くしていきたいと思います」
細⾙圭「僕個人としては2回目のフラガールで3年前はですねヤクザの取り立て屋をやっていました。今回は主演の紀美子のお兄ちゃんを演じさせていただけるということでまた違った角度でこの作品に携われて楽しませていただいております」
神尾佑「私の地元のいわき市の舞台ということで、やっと呼んででいただきまして、4回目にして念願のフラガールに出させていただきます。福島の素晴らしさいわき市の素晴らしさ常磐ハワイアンセンター、今はスパリゾートハワイアンズと言ってますけどそこの素晴らしさをお届けできるように」
有森也実「ヒロインの紀美子と洋二朗の母親役をやらせていただきます。私はありがたいことにこの作品4回目、皆勤賞でございます。今までの蓄積を生かせるように張り切ってやりたいと思います」
ーーそれから今の心境という質問。
丹⽣明⾥「稽古が始まったときは遠い遠い未来のように感じてて、毎日汗を流してダンス稽古から始まったので、本当についに初日が来てしまったことに驚きというんでしょうか、でも通し稽古やらせていただいて照明や音楽の雰囲気…フラガールの世界に入って自分が紀美子として生きられるなっていうのを実感して。早く皆さんにこの素敵な『フラガール』を見ていただきたいなという気持ちでいっぱいです」
映梨那「初日、まず本当に生きる…タイトルだけ見たら柔らかいイメージをされるかと思うんですが、本当1人1人が1人1人の人生を生きている舞台なので、舞台ならでは毎回、本当に1から人生をすごい泥臭い人生なんですけど、必死に生きていきたいと思います」
中村⾥帆「本当にこの時代を生きた人たちの、何か言葉にできないぐらいのたくましさみたいなものをすごく毎日毎日早苗を通して感じていて、その生命力の強さみたいなものを1公演1公演、公演後は魂が毎日抜けるぐらい本当にもう燃え尽きて演じたいと思ってます」
⽊﨑ゆりあ「一番最後のみんなで全力でダンスを踊る姿まで全部に全力をかけて全力で汗をかいていきたいと思います」
菅原りこ「見所がたくさん詰まっている作品なので、2度3度いらしていただいても楽しんでいただけると思います。1人1人いろんなドラマがあっていろんな暮らしをしています。とても楽しんでいただけると思いますので、ぜひぜひ皆様劇場でお待ちしております」
細⾙圭「フラガールチームは僕たちの2倍、3倍もずっと稽古してる姿を間近で見ていたので、もう彼女たちがようやく解き放たれて本番でうっとり、そして力強さを、この底力をやっと皆さんにお見せできる日が来たということで、僕自身もすごく楽しみですし、皆さんもぜひ彼女たちもパワーを存分に受け取ってください」
神尾佑「まさか自分が出るとこんなに大変かと思うぐらいめちゃくちゃ走ってますからね、長靴で裏口で初めてこんなに走っております、疲れるんですよ。もう55歳なんだけど55歳でこんなに走る演劇をやるとは思ってませんでした。でも本当それぐらいの熱量で、みんなそれぞれの人生を濃く生きておりますのでぜひ見てみていただきたいと思います」
有森也実「河毛さんもおっしゃってましたが、これは昔話ではなくて今、実際に客席に来てくださるお客様が共感できる。現代のこの時代の過渡期にぴったりの作品だと思いますので、舞台上の皆さんの思いと、客席の皆さんのそれぞれの思いが交錯するこの舞台を、私自身も楽しみにしております」
ーー先輩の潮紗理菜からのアドバイスは?
丹⽣明⾥「前回の3回目の『フラガール』の主演を務めたのが、グループ時代に先輩だった潮紗理菜さんでして、決まったときにはもう一番に紗理菜さんに直接報告して、すごく喜んでくださってぴったりだと思うって言ってくださって。何かあったらいつでも頼ってねって言ってくださり、当時使っていた台本を送って送ってくださったり。本当にすごく真摯に、『こういうことがあったんです』っていう連絡にもすごく真摯に聞いてくださって、もう心の支えでありました。今回の作品、今回の4度目の『フラガール』の舞台も見に来てくださるって言っていたので、紗理菜さんに、こんなにやってきましたっていう気持ちをお届けできたらなと思います」
ーー河毛さんに質問です。演出面での相違点は?
河毛俊作「ちょっと編集し直したところが何ヶ所かあって、より物語をシャープにするっていうのと、喋らなくてもいいセリフは喋らないで芝居で表現するという…なので、ややシリアス度が増しているっていうんでしょうか、もう本当にエンターテインメント格闘技です、芝居という格闘です。そこを十分楽しんでいただけたら」
ーー最後に公演PRを。
丹⽣明⾥「この1ヶ月半、女性陣はフラダンスのレッスン、そして男性陣の皆さんもアクションだったりと、チームみんなが魂を込めて稽古稽古に励んでいました。まさに一山一家の団結でこの計画期間を経て、ついに今日から皆さんのもとへとこの作品を届けすることができて本当に嬉しく思います。1人1人の生きているその信念がぶつかり合っていて、すごく大きなパワーになって時代が流れていくこの作品を皆さん見てくださる皆さんにもきっと何かしらパワーを得られるんじゃないのかなと思います。精一杯頑張りますので、たくさんパワーをお届けできるように頑張りますので、皆さんぜひ来てくださると嬉しいです」
初演レポ記事
物語
昭和40 年、福島県いわき市。
かつて炭鉱の町として栄えたこの地に生まれ育った谷川紀美子(丹生明里)。
父を亡くし、母と兄と共に慎ましく暮らす高校生だ。紀美子にとって炭鉱の仕事は、家族の生計を
支えるためには避けて通れないものだった。しかし、時代は急速に変わりつつあった。
石炭から石油へ̶̶̶̶エネルギー革命の波は炭鉱の未来を奪い、町全体が暗い影に包まれる中、新たな町おこし事業として「常磐ハワイアンセンター」の建設が発表される。
温泉を活かしたリゾート施設を作り、目玉はフラダンスのショー。
「なにがハワイだ!」「炭鉱町にフラダンスなんて、冗談じゃない!」
町の大人たちが一斉に反対する中、紀美子の親友・木村早苗(中村里帆)は「泥まみれの暮らしから抜け出すチャンスだ」と紀美子を誘い、ダンサー募集に応募する。
最初は戸惑いながらも、紀美子の胸にはまだ見ぬ未来への希望が芽生え始める。
だが、町の女の子たちの反応は冷たかった。
「裸踊りさせるつもりか?」と、偏見や噂に振り回され、多くの応募者が辞退していく。
炭鉱の娘たちに、本当にフラダンスなど踊れるのか̶̶̶̶不安とプレッシャーが少女たちを襲う。
そんな田舎町に、ハワイアンセンターの企画部長・吉本紀夫(神尾佑)がかつて都会で名を馳せ
た元SKD のダンサー、平山まどか(映梨那)を連れてくる。
サングラス越しに田舎の娘たちを見下すような態度に、紀美子たちは反発するが、彼女のダンスの美しさ、そして本物のプロの技術に圧倒される。
「この人についていけば、本当に踊れるようになるかもしれない̶̶̶̶」
少女たちは希望と憧れを胸に、まどかの厳しいレッスンに飛び込んでいく。
残ったのは紀美子、早苗、そして炭鉱で事務員として働きながら、子供を育てるシングルマザー初子(木﨑ゆりあ)や、フラダンスには懐疑的だったが、仲間たちの変化を見て関心を持ち始める和美(菅原りこ)たち。
しかし、炭鉱の労働組合は激しく反対。町を守ろうとする兄・谷川洋二朗(細貝圭)、伝統的な価値観を持ち「炭鉱の娘は炭鉱を支えるもの」と信じる母・谷川千代(有森也実)も、紀美子の夢を激しく否定する。それでも、紀美子は逃げなかった。
何度も涙を流しながらも、仲間と共に踊り続けることで、少しずつ自分の道を切り開いていく。「私はフラガールになる!」
少女たちの強い決意が、町全体を少しずつ変えていく。
夢を諦めなかった少女たちの姿は、昭和を生きた彼女たちから、今を生きる私たちへのエールとなる。
フラとは?
ハワイの伝統的で神聖な踊り。
ハワイ語のHula”フラ”は、『踊り』を意味する。よって「フラダンス」は「ダンス、ダンス」という意味に。ハワイでは「フラ」というのが一般的。フラには、演奏・詠唱・歌唱の全てが含まれ、1番から3番まで、それぞれ2回ずつ…というように、歌のコーラスを2回繰り返す。は、ハワイ王国の第7代国王であるデイヴィッド・カラカウア王は『フラは心の言葉であり、ハワイアンの鼓動である』と語った。
昔、ハワイ・ポリネシアには文字というものがなく、人々は明るい日差しと豊かな自然があり、その自然を神にたとえていた。文字を持たなかったハワイの人々が神への信仰の表現や、体験、出来事を後世に伝える手段として、フラ=踊りが始まったと言われている。
また、日本でフラが広まったきっかけは、まさに、この常磐ハワイアンセンター! フラハーラウ(フラスクール)は日本全国に約300以上、人口は200万人とも言われている。
概要
『フラガール – dance for smile ‒ 』
日程・会場:2025 年5 月22 日(木)〜 6 月2 日(月) 全13公演 新国立劇場 中劇場
作:羽原大介 李相日
総合演出:河毛俊作
構成演出:岡村俊一
出演
丹生明里 映梨那 中村里帆 木﨑ゆりあ 菅原りこ
大串有希 飯田桃子 夏生ひまり 吉川真世 尾崎明日香 大田和歩 古橋早紀子 雛田みかん YUKA MEGUMI
細貝圭
久保田創 濱田和馬 工藤潤矢 大石敦士 河本祐貴 松本有樹純 近藤雄介 杉野豊 黄類 黄萌奈
神尾佑
有森也実