樋口日奈初主演「フラガール− dance for smile – 」踊りたいと思えば踊れる、やればできる!

4月3日よりシアターコクーンにて「フラガール− dance for smile – 」が好評上演中だ。この作品は第80回キネマ旬報ベストテン1位、第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した、日本映画の傑作、映画「フラガール」が原作。待望の舞台版の再演となる。
時代は昭和40年、西暦でいうと1965年、場所はいわき市。炭鉱の町として知られたところ、住んでいる人々の大半は炭鉱に従事していた。かつて「黒いダイヤ」と呼ばれていた石炭は石油に取って代わるようになり、まさに”斜陽”という言葉がふさわしい。舞台はそんな炭鉱のシーンから始まる。皆、真っ黒、年頃の女の子も真っ黒、爪の先まで、イマドキの女の子だったら1秒たりとも耐えらえないであろう環境。いわゆるリストラ、解雇、石炭の需要が落ち込んでいるからだ。そんな折、起死回生を狙おうと町おこしの新事業として常磐ハワイアンセンター建設の話が浮上。もちろん皆、信じることができない。ハワイ????ヤシの木?ハイビスカス???イメージしにくいのも無理はない。常磐炭田(じょうばんたんでん)は、19世紀後半から20世紀前半にかけて、福島県双葉郡富岡町から茨城県日立市までに広がって存在した炭田、長年炭鉱の町として栄えていたのだからいきなりハワイと言われても、だ。当然、猛反対が起きる。泥にまみれて働く生活に嫌気がさしていた早苗(山内瑞葵)は、友達の紀美子(樋口日奈)を誘ってダンサーのオーデションに応募する、というのが大体の流れ。

説明会にたったの4人。
まどかのダンスに圧倒!
で、できない(泣)
稽古の成果。す、すごい!!
衣装も!!
離れ離れになっても気持ちは一つ。

映画をみているなら、展開もオチも先刻承知。これをスピード感を持って展開、ジェットコースターのごとくテンポよく小気味よく進んでいく。紀美子の母(有森也実)は「何がハワイだ」と娘に言うが、紀美子は興味深々。この常磐ハワイアンセンター、フラダンスが彼女たちの人生を変えていく。

ハワイ?!はあ〜?!
石炭が「黒いダイヤ」と呼ばれたのは昔。仕事がなくなっていく。

虚と実を交えた物語、リアルな人間像。炭鉱産業が廃れていく中、”新しい風”について来れない人々、また紀美子たちのようにその新しい風を感じてそこに賭けてみようという情熱、借金取りに追われている身だが、ダンサーとしての誇りを持つまどか(矢島舞美)の存在は、彼女たちの情熱を後押しする。オチも展開もわかっているのに、ついつい見入ってしまうのは物語と出演者たちの熱演によるもの。初主演という樋口日奈、ストーリーテラー的な役回りもあり、田舎の平凡な女の子だったが、まどかのダンスに賭ける想いを肌で感じ、少しずつ変わっていく様を好演。

別れの時。まどかは早苗を抱きしめる。
もうすぐ!
紀美子と早苗、離れていても!

人生を変えたいと思った早苗役の山内瑞葵、最初はただ真っ黒になって先の見えない仕事に混沌とした気持ちだったのが、ダンサー募集のチラシをみて、そこからダンスに情熱を傾けるも、志半ばで町を去る姿は切ない。また、太っていることでいじめにあっていた小百合(隅田杏花)、フラダンスをはじめて少しずつ”自己改革”していく姿、いじめっこたちの前でダンスを披露するシーンはちょっと胸が熱い。彼女たちを熱血指導するまどか(矢島舞美)、プライド高いが、ダンスに賭けるパッション、ど素人な女の子たちをい一人前にしようと本音でぶつかる態度、口は悪いが心は温かい。

見守る。きっとやり切れると信じて。

そしてラスト近く、フラダンスシーンは、劇場が常磐ハワイアンセンターになったかのような盛り上がり!素直に登場人物たちに感情移入できる、シンプルなメッセージのこもった作品。ずぶの素人で「無理」と言われた少女たちの変化は見た目だけではない。志を持って取り組む、チャレンジする心、友情、絆、上演時間約2時間はあっという間。渋谷にしばしのハワイアンセンター、フラを観に!行ってみよう。

<稽古風景>
https://theatertainment.jp/japanese-play/76051/

<初日会見>
https://theatertainment.jp/japanese-play/77170/

<フラとは?>
ハワイの伝統的で神聖な踊り。
ハワイ語のHula”フラ”は、『踊り』を意味する。よって「フラダンス」は「ダンス、ダンス」という意味に。ハワイでは「フラ」というのが一般的。フラには、演奏・詠唱・歌唱の全てが含まれ、1番から3番まで、それぞれ2回ずつ…というように、歌のコーラスを2回繰り返す。は、ハワイ王国の第7代国王であるデイヴィッド・カラカウア王は『フラは心の言葉であり、ハワイアンの鼓動である』と語った。
昔、ハワイ・ポリネシアには文字というものがなく、人々は明るい日差しと豊かな自然があり、その自然を神にたとえていた。文字を持たなかったハワイの人々が神への信仰の表現や、体験、出来事を後世に伝える手段として、フラ=踊りが始まったと言われている。
また、日本でフラが広まったきっかけは、まさに、この常磐ハワイアンセンター! フラハーラウ(フラスクール)は日本全国に約300以上、人口は200万人とも言われている。

<あらすじ>
昭和40年、福島県いわき市、かつて炭鉱の町として栄えた石炭の町も、石油という新しい燃料の台頭によって斜陽産業と化していた。
人員削減のため毎月リストラが発表され、何千人もの労働者のクビがきられていく。そんな状況の中で、町おこしの新事業として常磐ハワイアンセンター建設の話が持ち上がる。
常磐の地の温泉を利用して、ハワイの雰囲気を持ったリゾート施設を作ろうというのだ。
そしてハワイアンダンスのショーで盛り上げたいという計画だ。もちろん労働者たちは反対の声をあげた。「なにがハワイだ!」
この町に生まれ育った早苗(山内瑞葵)は、毎日泥まみれの生活から抜け出すチャンスではないかと考えて友達の紀美子(樋口日奈)を誘ってダンサー募集に応募することを決意する。しかし、集まった女の子達は「裸躍りさせるつもりか?」と、ほとんどの者が消えてゆき、残ったのは、紀美子と早苗の数人だけ、本当にフラダンスのチームなど作れるのか不安になる。
そんな田舎町にハワイアンセンターの企画部長は元SKDのダンサー平山まどか(矢島舞美)を連れてくる。紀美子たちは、サングラスをかけ田舎者を下に見るまどかに、最初は不信感を持つが、その卓越したダンスの技術とその魅力に、やがて引き込まれていく。
炭鉱の組合員の反対運動が激しくなる中で、紀美子は炭鉱で働く母親千代(有森也実)に反対されながらも、家を出てフラガールになることを決意する。

「復興は少女たちの笑顔が作る!」
そんなフラガールたちの奮闘を描いた物語である。

<概要>
2021年4月3日(土)~4月12日(月) 東京・Bunkamura シアターコクーン
作:羽原大介 李相日
総合演出:河毛俊作
構成演出:岡村俊一
[出演]
樋口日奈(乃木坂46) 矢島舞美 山内瑞葵(AKB48) 安田愛里(ラストアイドル)/有森也実 ほか
協力:ジェイ・シネカノン
制作:アール・ユー・ピー
主催:舞台「フラガール」製作委員会
公式サイト:http://www.rup.co.jp/