舞台「銀河英雄伝説 Die Neue These」壮大な宇宙で運命が交錯する、歯車が回る

舞台「銀河英雄伝説 Die Neue These」の幕が開いた。2019年に早くも新作上演が決まったが、この人気シリーズには期待に胸膨らませているファンも多いことであろう。

幕開きはナレーションから。スクリーンには煌めく無数の星、音楽、そしてやがて轟音が轟く。物語の設定や登場する3つの勢力についての解説、作品をよく知らなくても、ここで簡潔に解説が入るので、その後のストーリーもわかりやすくなる、という配慮。このストーリーのメインキャラクター、登場。銀河帝国のラインハルト・フォン・ローエングラム(永田聖一朗)、そして腹心の友であり、忠実な部下でもあるジークフリード・キルヒアイス(加藤将)。そして自由惑星同盟のヤン・ウェンリー(小早川俊輔)。

そしてファンならよく知っている、あのアスターテ会戦が始まる。映像や効果音、照明でこの宇宙で繰り広げられる戦いを舞台上で見せ、大掛かりな仕掛けは特には出てこないが迫力は満点。この宇宙での壮大な戦い、ほんの一瞬で散ってしまう人々。いつの世も戦いは駆け引きと先読みの知恵と決断力と人望、どんなに技術が発達していても結局は『人の力』なのだ。ヤンの友人であるジャン(碕理人)は必死に上官に進言するも受け入れられない。そして、結果は・・・・・。ラインハルトは顔色変えずに「実力なき者は滅びるしかないのだ」と言うが、戦いの場ではそれが原理原則。負傷した上官に代わって指揮を執ることになったヤンは「生還したい者は落ち着いて私の指示に従って欲しい・・・・・・・要は最後の瞬間に勝っていればいいのだ。負けはしない」と。軍人としてのヤンは冷静沈着でしかも決して諦めず、皆を統率する。そしてこの戦いはひとまず終わる・・・・・・。

例えば、日本の戦国時代などを描く場合、殺陣は避けて通れない。人と人が対峙する、刀を交えるので、見た目的にはわかりやすい。しかし、この宇宙での戦いでは、司令をするだけ。そこをうまく映像や効果音、照明で表現していくのだが、何よりも司令を出す人間の声は重要だ。「ファイエル!」と渾身の力を込めてラインハルトが命令する。この一言に力があり、臨場感をさらにアップさせる。まさにこの瞬間、「銀河英雄伝説」の世界観が凝縮され、このアスターテ会戦がリアリティを持って観客席に迫る。

 

戦い以外の場面、回想シーン、ミッターマイヤー(加藤将)とロイエンタール(畠山遼)がラインハルトに忠誠を誓うようになったエピソード、ミッターマイヤーは民間人を殺害した大貴族の血縁の者を軍規違反で処罰したが、おかげで門閥貴族の反感をかってしまい、ミッターマイヤーは監禁されるも、ロイエンタールがラインハルトに助けを求め、救出される。そして自由惑星同盟での記念式典のシーン、ジャンの婚約者であるジェシカ・エドワーズ(汐月しゅう)が喪服を着て登場する。さらに国防委員長に向かって「あなたは今、どこにいますか?」と問いかける。権力のこと、戦争の哀しさ、虚しさ、見方や捉え方は様々であり、派手なシーンではないが、多くのことを考えさえられる場面だ。そのほか、ヤンが初めてジェシカに出会う回想シーンやまた、ユリアン(小西成弥)がヤンに紅茶を入れる場面などファンにとってはよく知っているシーン、そして名言も多数登場。そしてラストはもちろん『続く』という終わり方。

銀河帝国と自由惑星同盟、いつ終わるのかわからない果てしない戦い、ヤンは早く退役したいが、時代と状況がそれを許さない、一方のラインハルトは自分の国をもっとよくしたい、そして宇宙を手に入れる、という野望をますます募らせる。政治、そこに生きる人々の生きざま、どうしても守りたいもの、手中に収めたいもの、それは何なのか、もちろん、それはまちまちであるが、皆、その瞬間を生きている。来年2019 年の公演ではどんな物語を、人間の生きざまを見せてくれるのだろうか。

なお、公開ゲネプロの前に主要キャストが登壇し、フォトセッションと挨拶があった。フォトセッションの後はまずはラインハルト役の永田聖一朗は「新たなシリーズが開幕です。歴史的第一歩、壮大なスケールが見所です。普遍的なものがわかりやすく描かれています。Zeppダイバーシティ東京は臨場感があります。宇宙空間にいるような感じに・・・・・・ヤン目線、ラインハルト目線、いろんな角度で観られます」と挨拶した。舞台上では、しっかりとした自信に満ちたラインハルトぶり、特に「ファイエル!」の一言はまさにラインハルトそのもの感たっぷり!それから『腹心の友』であるキルヒアイス役の加藤将は「永田聖一朗とは別の作品で知り合って・・・・・加藤個人としてもキルヒアイスとしても彼を支えてカンパニー一同頑張っていきます!」と頼もしい言葉、ちょっと控えめに見えて実はしっかり者のキルヒアイスぶり。ロイエンタール役の畠山遼は「一からのスタート、この世界観を観ていただきたい」といい見所は「ミッターマイヤーとの過去のシーン」、ここはロイエンタールとミッターマイヤーとの厚い友情と信頼が見えるところだ。ミッターマイヤー役の釣本南は「ミッターマイヤーとして、まっすぐな部分、ラインハルトへの忠誠、ロイエンタールとの関係を素直に演じていきたい」とコメント。ヤン役の小早川俊輔は「これから始まる全公演、全身で楽しみたいです。ファンの方も初めて観る方々にも楽しんでいただけるように」と語ったが、ヤンのあの頭をかく仕草はなかなかのもの。キャゼルヌの米原幸佑は「全力でヤンを支え、この作品を盛り上げていきたい」とキャゼルヌっぽい発言。アッテンボロー役の伊勢大貴は「演出の大岩さんとディスカッションしながら、ファンの皆さんに理解していただけるよう、そして僕たちの個性も出せるように作ってきました」と意気込む。ユリアン・ミンツ役の 小西成弥は「ユリアンは日常の部分を任されていると思います」とコメントしたが、ユリアンの登場シーンは壮大な戦いが多いこの作品の中では比較的ゆったりとした場面で紅茶を入れたり、ヤンの世話をやくところは『ある、ある』場面。ジャン役の 碕理人は「歴史ある作品に出演できて嬉しい」と喜びを語る。そして「他にも大勢のキャストがいらっしゃいますが、素敵な作品に仕上がっていると思います」とPR。そして登場人物では今回ただ一人の女性、ジェシカ役の汐月しゅうは「数少ない民間人として、戦争の中にいる人々がどう生きたのかを表現したい・・・・・・皆さんに共感していただけるキャラクターにできたら」と抱負を語ったが、あのジェシカの名場面は必見。最後に座長でもある永田聖一朗は「『銀河英雄伝説』の新たな伝説を作っていけるよう、カンパニー一同精進して参ります」と締めくくった。

<ストーリー>
物語は数千年後の未来、宇宙空間に進出した人類が、 銀河帝国と自由惑星同盟の二国に分かれていた。 この二国家の対立は実に150年に及び、 際限なく広がる銀河を舞台に、 絶えることなく戦闘が繰り返されてきた。そして、 ふたりの天才の登場によって歴史は動いていく。「常勝の天才」 ラインハルト・フォン・ローエングラムと、「不敗の魔術師」 と呼ばれるヤン・ウェンリーである。 ふたりは銀河帝国と自由惑星同盟を率い、何度となく激突する―

<銀河英雄伝説とは>
「アルスラーン戦記」などでも知られる、大人気作家・ 田中芳樹氏原作によるSF小説。 1982年に第一巻が刊行されて以来、 累計発行部数は1500万部を超え、 今なおその記録を伸ばし続けているベストセラー小説である。「 銀河英雄伝説」を原作とするアニメ、漫画、 ゲームなどの関連作品も多く、1988年からは、 アニメシリーズが制作され、OVA110話、外伝52話、 劇場公開作品3本という、圧倒的ボリュームで展開。 多くのファンの心を魅了し、SFファンに語り継がれている作品。 2018年4月から新作アニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These」のTV放送がファミリー劇場、TOKYO MX、MBS、BS11にて放送中。新旧のファンへ向け、 好評を博している。

《インタビュー》 舞台「銀河英雄伝説 Die Neue These」演出 大岩美智子

【公演概要】
タイトル:舞台「銀河英雄伝説 Die Neue These」 (読み:ディ・ノイエ・テーゼ)
原作: 田中芳樹「銀河英雄伝説」シリーズ(創元SF文庫刊)
演出:大岩美智子
構成・監修:高木 登
脚本:米内山陽子
出演: <銀河帝国>永田聖一朗/加藤将/畠山遼 釣本南(Candy Boy)
<自由惑星同盟>小早川俊輔/米原幸佑 伊勢大貴 小西成弥/碕理人 汐月しゅう ほか

日時: 2018年10月25日(金)~28日(日)

会場: Zeppダイバーシティ東京
(東京都江東区青海 1-1-10 ダイバーシティ東京プラザ)

HP: http://www.gineiden.jp/
公式twitter:@gineiden_stage
主催・企画・制作:舞台「銀河英雄伝説」制作実行委員会

文:Hiromi Koh

撮影:菖蒲剛智