ASSH Annex #2 「帝都探偵奇譚ジゴマ」 ~原作・フランス怪盗小説・レオン・サジイ『ジゴマ』より~ 悪、正義、闇、陰謀に思惑、そして最後は?

『ジゴマ』(Zigomar)は、レオン・サジイ(フランス語版)によるフランスの怪盗小説シリーズで、1909年に「ル・マタン(フランス語版、英語版)」紙に新聞連載小説(ロマン・フィユトン、Roman- feuilleton)として掲載され、連載後にJ.Ferenczi社から単行本化。パリを舞台にジゴマが殺人、強盗などの犯罪を繰り返す。1911年には映画化、同年に日本でも公開されている。そして1937年には久生十蘭訳で『新青年』4月号別冊付録として、長篇探偵小説と銘打って掲載されたが、ストーリーが原作と変えられている部分も多い。
『ジゴマ』は映画公開後、日本で爆発的なブームに。これは日本における洋画の最初のヒットともなった。

この物語の舞台は大正11年、第一次世界大戦が終わり、日本は列強の仲間入りを果たし、好景気に沸いたが、その良かった時期は過ぎ、日本は不景気に。若い政治家の演説、それを苦々しく見ている者、「ペテン野郎!」とヤジを飛ばす。場面が変わり、この物語のメインキャラクターである探偵・三笠夢之介(服部武雄)登場、彼を「先生」と言って慕う花崎蘭子(花岡芽佳)、そしてジゴマ(ヒロヤ)、ある女をさらう、彼女の名は武藤優子(海老原優花)。このプロローグの後にオープニング、テーマ曲に乗ってキャラクター登場!ここから本格的にストーリーが動きだす。ジゴマの目的と思惑、戦争で一儲けした成金、政治と結びつこうとする動き、そしてジゴマを追う警察と探偵、それぞれが帝都・東京を舞台に動いていく。ジゴマが考えていることバックボーン、彼なりの哲学で行動しているが、そのためには殺人も犯す。三笠夢之介は人を殺してまで遂行する理想などないと思う。不景気故に、『また夢を』と思う戦争成金、国を自分たちの思う方向に動かしたい。ジゴマは「害虫を駆除する」と言い、義賊っぽく札束をばら撒く。ジゴマの執事は「ジゴマの野望は止められない」とつぶやく。ジゴマの手下には夢があった「人を斬ってみたい」「弁護士になりたかった」「人の喜ぶ顔が見たい」と。武藤優子には結婚の約束をした男がいたが、殺されてしまった。しかし、彼には闇との繋がりがあった。その彼を殺害したのは・・・・・・・。「この世を正すために害虫駆除をしている」と再び、ジゴマ。そして「戦争成金に天誅を!」と言い、三笠夢之介は「あなたの闇は深いのです」という。

ストーリー的にはどんでん返し、そして思わぬ人物が実は・・・・・という意外性と想い、人間関係と思惑と陰謀が絡み合い、そしてクライマックスへと進んでいく。推理の要素もあり、さらに群像劇的な部分、そして心理状況、どこまでもジゴマを追っていく三笠夢之介たちの決して諦めない心、ジゴマの闇、それぞれのキャラクターが抱えている負の感情、過去、そんなことも見え隠れする。それをスピーディに、そして派手なアクションを交えて進んでいく。浅草オペラも登場し、美しいメロディーのアリアが華を添える。そして、運命の日、大正11年9月1日、帝都劇場でリサイタルが開かれる。念願の大舞台で張り切る安藤絢子(澤田真里愛)、彼女の美しい歌声、その裏では・・・・・・。

作品の舞台を大正時代の終わりに設定、マスメディアの発達(物語には新聞記者も登場)、大正モダンと言われ、女性のファッションも華やかになり、職業婦人と呼ばれ女性の社会進出も盛んになった時代。しかし、その一方で、スラムの形成、民衆騒擾も発生、労働争議の激化などの社会矛盾も深くなっていった時期、そういった時代のバックボーンも感じられる。

池袋のシアターKASSAIで繰り広げられる濃密な物語、上演時間は約2時間。一人一人に物語があり、さらに表面的には見えづらい闇も抱えているキャラクター、そういった闇はもしかしたら誰もがちょっとは持っているかもしれない部分、盗んででも、人を陥れてでも手に入れたいもの、昨日の敵は明日の味方、自分のために悪意を持って行動しようとする気持ち、そんな中でも通していきたい正義もある。目一杯の熱量で演じる俳優陣、アクション、殺陣、所狭しと駆け回る。映像演出はないが、照明や効果音で工夫を凝らし、緊張感や悪の空気感を表現する。セットはシンプル、衣裳とセットに書かれている言葉に独特の雰囲気があり、時代や物語の雰囲気を大きく膨らませてくれる。ジゴマ演じるヒロヤ、ラスト近く狂人のごとくな表情で熱演、対する三笠夢之介を演じる服部武雄は探偵という職業を超え、「悪は悪なんだ」という漢なキャラクターでジゴマとは対照的な役。この2人が拮抗することによって物語はさらに輪郭がはっきりしてくる。そしてまさかの武藤優子と女中の斎藤かの子(甲斐千遥・大田早紀/Wキャスト)、どういう風に『まさか!』なのかは劇場で!しかもストーリーは2ルート、怪盗、探偵サイド、ゲーム原作モノではこういった複数ルートを設定する舞台作品があるが、そういった手法も取り入れている。

さて、この原作に影響を受けたのが江戸川乱歩で有名な「怪人20面相」を執筆、また伊丹万作や寺山修司をも虜にしたと言われるジゴマ、映画が封切りされて子供達が熱狂したそうであるが、時代を超えても面白いものは面白い、そういった気持ちにさせてくれる舞台であった。

【公演日程】

10月24日(水)~29日(月)/全11公演
24(水) 19時~☆
25(木)14時~★/19時~☆
26(金)14時~☆/19時~★
27(土)13時~★/18時~☆
28(日)13時~☆/18時~★
29(月)12時~★/17時~☆

☆怪盗サイド
★探偵サイド
*怪盗、探偵サイドでは一部キャストがWキャスト、ストーリーに変化があります。
<劇場>
シアターKASSAI
〒170-0013
東京都豊島区東池袋1-45-2
<出演>
ヒロヤ(ASSH)
服部武雄
門野翔(@emotion)
海老原優花(アイドルカレッジ)
雛形羽衣(劇団☆ディアステージ)
田中宏輝
安達優菜
澤田真里愛
輝海
荘司真人
黒木美紗子
織田俊輝
上堂地かんき
小田切正代
梅原サエリ
たつや優
花岡芽佳(ASSH)
小倉江梨花(ASSH)
丸山雷電(ASSH)
【Wキャスト】
☆怪盗サイド☆
飯原優
大田早紀(ASSH-Next)
足利至
★探偵サイド★
梅田祥平(ASSH-Next)
甲斐千遥
小田峻平(ASSH-Next)

<スタッフ>
原作:フランス怪盗小説・レオン・サジイ『ジゴマ』より
脚本・演出:松多壱岱
舞台監督: 田中聡
照明:村山寛和(マーキュリー)
音響:田中慎也
舞台美術・衣装:壺阪英理佳(ASSH)
衣装補助:花岡芽佳(ASSH)
ヘアメイク:青山亜耶
小道具:ヒロヤ、丸山雷電(ASSH)
演出助手:大塚侑子(ASSH)
殺陣振付:門野翔(@emotion)
振付:小倉江梨花(ASSH)
メインテーマ作曲:金蔵直樹
主題歌歌唱:ANNA
WEB制作:梅田祥平(ASSH)
宣伝美術:尾花龍一(MONSTERS,INC)
記録:高橋満徳(Hakua)
制作:岡田万佑佳
プロデューサー:松多壱岱

公式HP:http://assh.info