大人気歴史シミュレーションゲームのパイオニア『信長の野望』。本年5月 には東京・渋谷のCBGK シブゲキ!!にて初めて舞台化、原作である、コーエーテクモゲームスより2017年に発売された最新タイトル「信長の野望・大志」との完全連動舞台で、本作の特徴であるWサイドストーリーはより作品の深みや面白みを増したと好評であった。そして、前作からの続編 にあたる「信長の野望•大志 -冬の陣-~騎虎の白塩編~」を、<SIDE織田・徳川>、<SIDE武田・上杉 >のWサイドストーリー、11月8日より始まる。
ゲネプロでは<SIDE武田・上杉 >が披露された。最初は共通シーン、「猿」と織田信長(鶏冠井孝介)から呼ばれていた木下藤吉郎が羽柴秀吉(後藤健流)という名をもらう。戦功をたて大名となった折に、木下姓を羽柴姓に改めた歴史の授業にも出てくる有名なエピソードだ。それから今井宗久(彦摩呂)、ストーリーテラー的な役割を担う。第2弾では浅井長政と朝倉義景はすでに滅ぼされているので、第1弾の続きとなっている。武田と上杉が手を組む。「ありえない!」という井伊直虎(緒月遠麻)。直虎はさらに先読みをする。もし、戦国時代がこの後、どうなり、天下を征する者は誰なのか、まで先読みできたら・・・・・という『IF』。時空を超えた壮大な『IF』ということになる。そうしたら歴史はどうなるのか?それを舞台上で《シュミレーション》。冒頭部分が終わると、いよいよ<SIDE武田・上杉 >の始まりだ。勝頼はなぜか医学の知識があり、今でこそ当たり前な言葉「対症療法」、しかし、周囲の者は勝頼の言っていることがよく理解できない。しかも数百年先のことまで知っている。武田信玄(堀川りょう)は「天下を取れ」と息子に言う。場面が変わって上杉謙信(根本正勝)の場面、そこへ勝頼が十字が書かれた白い旗を持ってやってくる。しかも勝頼は上杉謙信の病(高血圧と言われている)を見抜いていて「寿命を延ばす」と勝頼は謙信に言う。そして上杉と武田の連合軍ができる。
さて、武将たちが平成の記憶を持っていたら?という『IF』、つまり天下人は結局誰になるのか、それからその後の世の中はどうなるのか。自分の運命は受け入れるのか、あるいはそれに抗い覆すのか。ここはストーリー的には興味深いところ。つまり、自分に有利な歴史を作り変えることも可能、明智光秀(谷佳樹)はクールで切れ者、彼もまた何かを企んでいる様子だ。実は主要登場人物が現代の記憶を持っている、という設定。つまり、自分がその後、どうなっていくのかがわかっているので、そこで葛藤が起こる。戦国武将らしいところと現代人らしいところを併せ持っているがために、しかもその記憶が彼らを惑わしていく。よって観客はよく知っている戦国時代の出来事を思い出しつつ、しかし、史実とは異なる部分が多数あるので、ここは壮大な『 IF』を楽しみ、そして彼らの迷いや葛藤に共感したり。
ストーリーとしてはこういったところが見所になるのだが、戦国時代は「生きるか死ぬか」、それはほんの紙一重。戦国武将を通じて『生きることは』というテーマが透けて見える。生きていたい、あるいは生きていてもらいたい、勝頼は必死に目の前の人を助けてしまう。傷口を縫ったり、漢方薬を調合したり、食生活の見直しを説いたりする。彼はそうすることによって生きていくのだが、しかし「自分が歴史通りに滅びるためには」と考える。人生に悩み、勝敗に一喜一憂したりする。そこには我々となんら変わりがない『心に血の通った』キャラクターが存在する。そして『戦うこと』の意味を考える。2幕の後半は殺陣のシーンの連続、刀を交える、向かってくる相手を斬る、生の迫力の殺陣、アクションシーンは舞台ならではの醍醐味。全ての役に見せ場があり、この見せ場を通じての表現。各キャストの熱演、戦国の世の厳しさとロマン、知恵と勇気、そして人望と状況を見定めることができる能力があれば誰でもトップに上り詰められる、という『野望』を全員で表現する。
おなじみの武将たち、殺陣のシーンは流れるような動きが見ごたえあり。ゲーム原作の場合は演出で映像を使うケースものもあるが、この舞台では映像演出は特にない。照明やフォーメーション、歌という形で表現。アナログな見せ方がかえって彼らの生き様をクローズアップする。ラスト近くの一騎打ちシーンや大立ち回りは必見。壮大な空想とそこに息づく人々の人生と歴史と未来、そして命をかけてでも守りたいものがある。続編も決定しており、こちらはいよいよあの有名な歴史的事件、「本能寺の変」、エンディングも次回を予感させるような雰囲気。織田信長は?明智光秀は?一大叙事詩的な大きな物語、歴史物はだから、面白い。
ゲネプロ前に囲み会見があった。登壇したのは、織田信長役の鶏冠井孝介、お市役の田中れいな、武田勝頼役の友常勇気、徳川家康役の竹石悟朗、上杉謙信役の根本正勝、武田信玄役の堀川りょう。まずは鶏冠井孝介が「第2弾、場当たりも終わってやっと形になりました」と挨拶。今回もWサイドストーリーなので、稽古量も多く、実は会見の直前まで場当たりが行われていた。田中れいなは「第1弾からつながっている感じです。みんなでたくさん稽古してきました!楽しんでいただけるようにがんばります!」とコメント。彦摩呂は「大変なセリフ量で頑張ります!・・・・・よう噛むしね(笑)、言い間違いとか『織田長政』とか(笑)」と語って笑いを誘っていた。堀川りょうは「初めてですが、同郷なので虎、武田信玄の最後の勇姿、いかにして素敵にと思っています、頑張ります」、信玄のクライマックスは感動シーン。その息子役の武田勝頼役の友常勇気は「<SIDE武田・上杉 >では信玄の息子である勝頼がストーリーを進めています。武田家は信玄様、っていうのが強いんですが、そこを勝頼が主人公にしたストーリーを展開させるのは・・・・チャレンジなので、僕も頑張ります」とコメントしたが、まさに時代に翻弄される勝頼、悩み、迷いそして最期を遂げる。徳川家康役の竹石悟朗は「3時間近くの超大作!この3時間だからこそ見られる人間ドラマ、生き様がそれぞれあるんで、これを見せられたら」と意気込んだ。根本正勝は「戦国時代に恥じないように!生き死にの作品ですし、ここでしか見られないものに仕上がったと思います」とコメント。鶏冠井孝介は「台本が2つあるので、(芝居)2本分稽古・・・・細かいところが大変でした」とWサイドストーリーならではの苦労を。それを受けて「カレーも食べたいけど、ハッシュドビーフも食べたい!戦国時代のフルコース!!!」と彦摩呂ならではのフレーズが飛び出した。さらに「れいなちゃんの歌声が綺麗で!」とコメント、『ここぞ』という場面での歌唱は聴きどころ。それから彦摩呂が「上杉謙信の殺陣が!しなやか!」と絶賛。髪を振り乱しながらの殺陣は美しく、流麗でなかなか絵になっているので、ここは要注目。「ドラマがいっぱい」と田中れいな。もう涙、涙な場面も多く、胸熱なシーンがかなり多い。稽古場での会見時に彦摩呂が痩せたと衣裳のマジックテープを見せてくれたが、さらに「マジックテープ詰めた」そう。「減量しながら」と彦摩呂。初日と千秋楽ではきっと・・・・・・。そして公演中に誕生日(11月11日)を迎える田中れいなは「公演中に誕生日っていうのは今までなかった」とコメント。「3段ぐらいのケーキが食べたい」と笑顔で周囲を(笑)。そして流行語大賞の話題になり「宝石箱はかすりもしなかった」と笑わせた。最後に織田信長役の鶏冠井孝介が「次回作も決まりましたので、今回もむちゃくちゃ面白くって!劇場でお待ちしています!」と締めて会見は終了した。
<キャスト> ★=新キャスト
[織田家]
織田信長 鶏冠井孝介
お市 田中れいな
明智光秀 谷佳樹
木下秀吉 後藤健流
ねね 大鳥れい
前田利家 八巻貴紀
竹中半兵衛 黒貴
柴田勝家 鵜飼主水
佐久間信盛 岡田隆之介
丹羽長秀 中村ヒロユキ
★森長可 竹内寿
★前野長康 矢野たけし
帰蝶 高宗歩未
★茶々 橋本瑠果
[徳川家]
徳川家康 竹石悟朗
井伊直虎 緒月遠麻
酒井忠次 大海将一郎
石川数正 石渡真修
★本多忠勝 川上将大
★榊原康政 霜月紫
瞼(まぶた) 香音有希
[武田家]
★武田勝頼 友常勇気
★おりゑの方 小嶋菜月
★真田昌幸 菊田大輔
★真田信綱 山本誠大
★山県昌景 神坐慶
★穴山信君 辻畑利紀
★源兵衛 千葉瑞己
★武田信玄 堀川りょう
[上杉家]
★上杉謙信 根本正勝
★浪(なみ) 仙石みなみ
★樋口(直江)兼続 宮澤佑
★直江信綱 高﨑俊吾
★船(せん) 根岸愛
[その他の勢力]
足利義昭 加藤凛太郎
★本願寺顕如 吉田宗洋
今井宗久 彦摩呂
お橋 笹木香利
お焦 荒澤守
【公演概要】
『信長の野望・大志 -冬の陣-王道執行 ~騎虎の白塩編~』
日程:
2018年11月8日(木)~11月12日(月)
場所:
シアター1010
公式サイト:http://www.nobunaga-stage.com
公式ツイッター:@nobunagastage
取材・文:Hiromi Koh