原作 三島由紀夫×主演 東出昌大 『豊饒の海』初日会見 “生きること、死ぬこと、そして輪廻転生”

2018PARCO PRODUCE “三島× MISHIMA”シリーズとして日本文学の金字塔・三島由紀夫をグローバルな視点で この秋、舞台化に挑むのは、三島由紀夫の 絶筆の書である「豊饒の海」とエンターテイメント性にあふれた「命売ります」の 2 作品。
第一弾を飾る「豊饒の海」は第一部「春の雪」、 第二部「奔馬」、第三部「暁の寺」、第四部 「天人五衰」の全四作からなる長編小説。全四作を一つの舞台作品として創作するのだが、これは前代未聞の意欲作。三島は、執筆に約6年の歳月を費やして、三島はこの小説を書き上げた1970年11月25日、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地にて、衝撃の割腹自殺を遂げる。その自決するまでの時間を費やした「豊饒の海」は、 三島由紀夫が目指した「究極の小説」ともいえよう。2018年11月、この究極の小説「豊饒の海」を舞台化、 脚本は、てがみ座主宰であり今、最も注目をあつめている作家、長田育恵。
2016年に発表された「燦々」「SOETSU」は実在の人物の人生の一部を深く掘り下げ、彼女の編み出すダイアローグととも にドラマを作り出した。 今回は三島由紀夫の文学作品を大胆翻案。演出はロンドンのオールドヴィック・シアターのアソシエイト・ディレクター で、ロンドンのネクストジェネレーションのトップを走るマックス・ウェブスターが2015年「メアリー・ステュアート(中谷美 紀 神野三鈴主演)」以来、3年ぶりに日本で演出、世界のMISHIMAに挑戦する。


第一部から第四部、それぞれが小説として完結していますが、この四作を通して、通奏低音のごとく響くのは、「輪廻」と いう言葉。第一部「春の雪」で、「又、会ふぜ。きつと会ふ。滝の下で」ということばを残し、20歳で生命を落とした男 松枝清顕。そして彼の影に取り憑かれた男 本多繁邦。本多の人生に松ケ枝清顕の生まれ変わりとして登場する三つの黒子の人々・・・。四作を通して、夢と転生を描く壮大な物語、「清顕」を追い求めた本多にとって、彼の存在はなにを象徴し ていたのか、そしてなぜそこまで清顕に執着したのか・・・。
60年後、晩年の本多は、清顕との恋が成就せず、仏門に身をおいた聡子を訪ねるが、しかし、聡子に「清顕など知らな い」と衝撃的な告白を聞く。いったい、全てが夢だったのか。あるいは、自分のこれまでの清顕への執着は何だったのか・・・。 これが「豊饒の海」の結末。


今回の舞台化は、清顕という美に憧れ続け、取り残されてしまった人間 本多繁邦を軸に三島が最後に描いたこの「豊饒の海」という世界を、今を生きている我々の人生という「普遍」の世界に投じていきたいと考える。四冊からなる大河小説を一舞台作品として創作する史上初の試みである。
主演を務めるのは、映画・テレビで様々なキャラクターを演じ注目を集める東出昌大。本多が生涯執着することになる松枝清顕という「美」を象徴する大役に挑む。また、清顕の影を追い続ける男・本多繁邦を本作では青年時代、中年時代、老齢時代と3人の俳優が演じる。 老齢の本多繁邦にはピーター・ブルック、マーティン・スコセッシなど海外の名だたる演出家、映画監督の作品に出演、その 唯一無二の存在感を常に作品の中で放つ笈田ヨシが久しぶりに日本の舞台に。中年時代の本多には、バレエ ダンサーとしての華々しいキャリアに留まらず、その表現手段を「言葉」の世界へも拡げている首藤康之、若年時代の本多には唐十郎を父に持ち、父親譲りの大胆さと本人の持つ繊細な演技に期待値があがる若手俳優大鶴佐助が演じる。


そして、三つの黒子を持つ清顕の生まれ変わりとして登場するのは、今年 7 月マームとジプシーの新作「BOAT」初主演初舞台を踏む宮沢氷魚、今春行定勲監督『リバーズエッジ』で存在感とエッジのきいた演技でその存在感を観客に深く刻み込んだ期待のホープ上杉柊平ら、次世代を担う若手俳優を抜擢。そして神野三鈴、初音映莉子と実力派女優が MISHIMA の世界を共に創りあげる。

初日に先駆けて会見が執り行われた。登壇したのは、東出昌大、宮沢氷魚、上杉柊平、大鶴佐助、首藤康之、笈田ヨシ/マックス・ウェブスター(演出)。

まず、演出家より「すでにプレビュー公演を終えて初日が迎えられるのが嬉しい、心から楽しんで、感動していただければ」と挨拶した。主演の東出昌大は「いい感触を得ています。僕自身、原作ファンなんおで・・・・・汚すことなく表現することを、その思いが確信になりました」とプレビュー公演の手応えをコメントした。宮沢水魚は「どの作品も深い、全作品をやるんだ!と聞いて『無謀なことを!』と(笑)、でも、稽古をして素晴らしい作品になっています」とPR。上杉柊平は「僕にとって、皆様にとって、その人生にとって何か引っかかるものがあると確信しています」と挨拶。大鶴佐助は「興奮しています。稽古をやってきて、頼もしい共演者がいらっしゃるので、(みんなと)駆け抜けたい」と意気込んだ。首藤康之は「素晴らしい作品です。一つ一つが美しい、喜びをもって熱く演じたい」とコメントした。笈田ヨシは「三島由紀夫さんがお亡くなりになる5か月前に会いました。あれから早48年、命日の日に芝居をやらせていただくのはなんとも言えません」

再び演出家から作品の捉えられ方について「(三島は)日本と欧米では捉えられ方が違うだろうと把握していた。日本ではどういう意味を持つのか・・・・・・言語の美しさが身にしみました」

そこで東出昌大は「『人間のドラマを描きたい、生きている人間の崇高さ』とマックスがおっしゃって、確かに一本の背骨のようなものがある・・・・・幕が開くのが楽しみ」とコメント、また首藤康之は「言葉を発すれば発するほど、重みを感じる」と語ったが、モーリス・ベジャール振付の作品『M』を踊っていただけあって、説得力のある発言だ。また、この作品の舞台化の一報を聞いた時の感想は、と聞かれて東出昌大は「解釈は様々、(自分がやると聞いて)やるだけだと」と思ったそうで宮沢水魚は「嘘だろ!」と一言、あまりにも言い得て妙であったので、共演者がどっと笑った。上杉柊平は「不安でした・・・・・・台本と仲良くやれるかな?」と回答し、首藤康之は「冗談かと」、笈田ヨシは「もし、三島由紀夫さんが生きていたら『嬉しい』と言ったと思う」と語り、配役の素晴らしさを口にした。

会見時間も押し迫ってきたところで記者からの質問タイムは終了・・・・・・するはずだった・・・・・・そこで東出昌大がまさかの!プロデューサーに質問を!「どうしてこの作品を舞台化しようと思ったんですか?」とシンプルな質問が飛び出し、俳優陣の目が一斉にプロデューサーに向けられた。一瞬、「おお〜」という空気感、プロデューサーは「まず、この作品が好きだった」と語り、そして東出さんには何がいいかな?ということで・・・・・・。輪廻転生ってみんなが考えていること。生きること、死ぬこと、登場人物を通して投げかけている。生きる、死ぬ、そして生きる。このシンプルなことを伝えたいと思いました」そして笈田ヨシは「50年前ですが、年月が経った現代にも通用する作品」と語った。古くなることなく、語り継がれていく普遍性のある作品。この後、抜粋した場面をいくつか披露された。公演は12月2日まで。

<出演>
東出昌大 宮沢氷魚 上杉柊平 大鶴佐助
神野三鈴 初音映莉子 宇井晴雄 王下貴司 斉藤悠 田中美甫
首藤康之 笈田ヨシ

【概要】
2018 PARCO PRODUCE ”三島 × MISHIMA “『豊饒の海』
<東京公演>
公演日程: 2018年11月3日(土)~5日(月)プレビュー公演 2018年11月7日(水)~12月2日(日)本公演
会場: 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
公式サイト:http://www.parco-play.com
<大阪公演>
公演日程: 2018年12月8日(土)~9日(日)
会場: 森ノ宮ピロティホール

原作:三島由紀夫
翻案・脚本:長田育恵
演出:マックス・ウェブスター
ステージング:小野寺修二
音楽:福岡ユタカ
美術:松井るみ
衣裳:宮本宣子
音響:井上正弘
照明:佐藤啓
ヘアメイク:川端富生
舞台監督:本田和男
プロデューサー:毛利美咲
製作:井上肇
企画製作:株式会社パルコ
公式サイト:http://www.parco-play.com

※第二弾:「命売ります―ライフ・フォア・セイル―」(台本・演出:ノゾエ征爾)

文:Hiromi Koh

舞台写真撮影:阿部章仁