「龍よ、狼と踊れ~Dragon,Dance with Wolves~」~草莽の死士~が開幕した。舞台発のメディアミックスとして注目されている作品、サブタイトルにある草莽とは、民間にあって地位を求めず、国家的危機の際に国家への忠誠心に基づく行動に出る人のことを指しているが、こと幕末になると、かなり特別なニュアンスを持つ。在野もしくはそれに準じた豪農・知識人層の中に、自らを「草莽」になぞらえ政治的主張をする者が出現した。それは尊皇論や攘夷論と結びついていく。また、脱藩浪士を「草莽」と称して、身分を超えて国家を論じて変革に寄与していくべきと主張、彼らはやがて尊王攘夷運動や討幕運動に参加していくことになるが、その後、明治維新になり、その大半は政治的敗者となっていく。
さて、この物語の中心は新撰組であるが、日本のレジェンドな剣豪がこの時代に蘇る、という大胆な設定。新撰組に討幕派、そしてこの剣豪たちが、幕末という動乱の時代に集まり、物語を紡いでいくのだ。
セットは至ってシンプル、動かせる階段と鉄骨のような骨組み。よく見ると、その骨組みはちょっと古びた木材のようなニュアンスで、雰囲気を盛り上げる。
幕開きは雷鳴、雨の音、映像で稲妻が光る。豪雨の中、1人の男が浮かび上がり、そして、その男を4人の男が取り囲む。そして斬る、衝撃的な始まり。そして物語が動き出す。タイトルロール、登場人物たちが次々と出てきては、決めポーズに決め台詞、最初から激しい殺陣、アクション。
今回は新撰組と長州藩、そこに蘇りし伝説の剣豪たち、そして坂本龍馬。皆、其々の志があるが、基本的に新撰組と長州藩の思いは相容れない。国を思う気持ちは同じでも目指す方向性は真逆だ。岩倉とグラバーは新撰組を潰すために蘇った剣豪を長州藩に与える。しかし、レジェンドな剣豪の中に宮本武蔵と佐々木小次郎がおり、この2人の関係性は今更、語る必要もない。革命の寵児である高杉晋作、剣豪らを率いる。そして吉田稔麿、亡き吉田松陰の遺志を継ぐ彼は、久坂玄瑞、高杉晋作と共に松蔭門下の三秀と言われている。彼らは言う、「我々の志の邪魔をするな!」と。
この人間関係や敵対関係が入り乱れつつの展開、初演にまさかのキャラをみせつけた坂本龍馬、この龍馬に並々ならぬ敵意をみせるハジメ、こういった心理的な状況は見逃せない。
また史実では新撰組内での粛清、近藤・土方体制を作るために粛清された者の中で有名なのは芹沢鴨、山南敬助が挙げられる。こういった場面は率直に泣ける。される者、する者、どっちがどう、というのではなく、どちらもやるせない。
また、自分達の志を遂げるために刀を交える。岩倉具視は「万人殺せば英雄」と言う。己の信じる道のために刀を振り回し、銃口を向ける。戦う意味はどこにあるのか、その命題は重い。近藤勇は「新撰組は絶対に負けない!」と言う。史実に大胆過ぎるフィクションを絡ませた構成、幕切れは、「to be continue」なイメージ。
ハジメ役の赤澤遼太郎は初演に引き続き、ハジメ役を熱演、殺陣が多く苦労も多かったとは思うが、生き生きとしたハジメを構築、また、新撰組の紅一点の前島亜美、フランスからやってきた女性剣士という役どころ、男ばかりの隊士の中で華やかかつ妖艶。初演から引き続きのキャストも今回「初めまして」なキャストも一丸となって取り組む姿は、物語のキャラクターの熱さとシンクロする。
なお、番外編も用意されており、こちらも楽しみ。
ゲネプロ前に囲み会見があった。登壇したのはハジメ役・赤澤遼太郎、土方歳三役・ 谷口賢志、高杉晋作役・鎌苅健太、宮本武蔵役・山口大地、沖田総司役・大平峻也、吉田稔麿役・横田龍儀、赤袮武人役・安達勇人、坂本龍馬役・萩野崇、フラン役・前島亜美、佐々木小次郎役・鐘ヶ江洸、脚本・演出で山南敬助役の松崎史也。
準備の関係でまず、山口大地が挨拶、「剣豪として蘇ります」とコメント、そして観どころとして「小次郎、武蔵に思いがあります」と語るが、もちろん、このレジェンドが交わるシーンもあってここは【お約束】。赤澤遼太郎は「たくさんの幕末を題材にした舞台がありますが、僕達にしか出来ない物をお見せしたい」と意気込む。谷口賢志は「物語を見せる、殺陣を見せる、色々あります。でも、役者の生き様を見せるしかない」と語る。舞台は役者がいてこそ、だ。萩野崇は「舞台から色々発展させていこうという試みです。生き生きと、リアルなものがありつつ、ダイナミックなものを!」と語る。鎌苅健太は「初参加です。思い切り戦いたい」と抱負を述べた。大平峻也も初参加組で「初演を観て圧倒されたっていうか、ワクワクします……残してくれた歴史があるように、皆さんの歴史に名を残したい、幕末を全力で!」とコメント、大平はドラマや小説で有名な沖田総司役、剣の達人らしく殺陣で大活躍。横田龍儀も初参加組で「いろんな方にアドバイスを頂きまして、『負けたくない』という思いが出てきました。皆さんに満足して頂けるように、新撰組を全力で倒していきます!」と宣戦布告。安達勇人も初参加組で「ひとつひとつが熱い舞台、シーン、凄く光栄です!1日1日が凄く楽しみです」と“凄く”を2連発でワクワク感が伝わる。前島亜美は「フランスの騎士を演じますが、新撰組の羽織りを着ています。金髪の少女が新撰組にいるのは、この作品だけだと思います」とコメントしたが、この金髪の騎士はめっぽう強い!鐘ヶ江洸は「今後ともこの作品が続いて欲しい!」と語ったが、エンディングは……to be continueな感じ。松崎史也は「作品としては注目されきってないのですが、観どころは役者全員」と語る。役者の奮闘ぶりだけでも胸が熱くなる。そして「僕らはどうして演技しているのか、何を考えているのか……素晴らしい俳優が集まりました。役者1人1人の生き様と役としての生き様を観てください!」と演出家の立場でコメント。
ところで、番外編についての質問が出たが横田が「本編観て、番外編観て、本編観ると見方が変わります」とコメント。幕末は舞台だけでなく、テレビドラマ等、様々な描かれ方をされており、そのどれもが其々、異彩を放っている。番外編は新撰組編と長州編、キャスト表を見ると……むむむ、な予感。こちらも観たい気がしてきた。
龍よ、狼と踊れ Dragon,Dance with Wolves」 ~草莽の死士~ 原作・イシイジロウさん 特別インタビュー
「龍よ、狼と踊れ Dragon,Dance with Wolves」 ~草莽の死士~ 脚本・演出 松崎史也さん 特別インタビュー
「龍よ、狼と踊れ〜Dragon,Dance with Wolves〜」〜草莽の死士〜、3月17日〜22日の期間、新宿付近を「龍よ、狼と踊れ」の宣伝トラック走行!
3月21日開幕!「龍よ、狼と踊れ~Dragon,Dance with Wolves~」~草莽の死士~、キャスト陣、気合の会見!
【公演データ】
「龍よ、狼と踊れ~Dragon,Dance with Wolves~」~草莽の死士~(そうもうのしし)
期間:2018年3月21日~4月1日
会場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
原作:イシイジロウ
脚本・演出:松崎史也
題字:憲真
キャラデザイン:西村キヌ
音楽:横山克
設定考証:芝村裕吏
出演:
ハジメ: 赤澤遼太郎、土方歳三: 谷口賢志、高杉晋作: 鎌苅健太、宮本武蔵: 山口大地、沖田総司 :大平峻也、吉田稔麿 :横田龍儀、赤袮武人 :安達勇人
宮部鼎蔵: 村田恒、女 :大野未来、フラン: 前島亜美 、近藤勇 :加藤靖久、 山南敬助: 松崎史也、藤堂平助: 川隅美慎 、永倉新八: 澤田拓郎 、葛木伊織: 田口涼、石川五右衛門: 村田洋二郎、佐々木小次郎: 鐘ヶ江洸 、岩倉具視 :ウチクリ内倉 、トーマスグラバー: 鈴木ハルニ 、坂本龍馬: 萩野崇
制作:Office ENDLESS
公式サイト:http://officeendless.com/sp/ddw
公式ツイッター:@jinroddw
取材・文:Hiromi Koh