2019年2月15日(金)に『機動戦士ガンダム00 -破壊による再生-Re:Build』が東京・日本青年館ホールにて開幕した。本作は、『機動戦士ガンダム』シリーズが2019年4月に40周年を迎えることを記念し、2019年から2020年にかけて行われている「機動戦士ガンダム40周年プロジェクト」の一環として製作されたシリーズ初となる舞台作品。
40周年プロジェクトのコンセプトである「BEYOND」のもと、表現の垣根を超え新たな分野への挑戦として誕生した本作。舞台の原作『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』はシリーズの中で初めて西暦を採用し、現実世界から300年後の世界を想定して作られた作品。2007年よりTV放送され、現実世界を踏まえた情勢設定や大胆なメカニックデザインが評判を呼び、2018年には10周年記念イベントも開催されるなど今なお衰えぬ人気作となっている。
物語はTVシリーズの1stシーズンをベースに描かれており、主人公たちガンダムマイスター4人が所属し、武力による戦争行為の根絶を目指すソレスタルビーイングの出現から、彼らと地球連邦平和維持軍、チームトリニティとの全面対決までが描かれる。
ガンダムの舞台化ということで、もっとも気になるのがモビルスーツの表現だろう。本作におけるモビルスーツの全体像は、一部のシーンにてシルエットで登場する以外は全編にわたって映像にも舞台上にもその姿を現さない。その代わりに、移動台の上にモビルスーツのコックピットを載せて、そこに演者が乗り込み、アンサンブルがその移動台を押すという表現手法をとっている。
ガンダムシリーズのアニメーションでは、モビルスーツ同士が戦う中でパイロット同士が会話をしたり、カットインとしてパイロットたちの表情が挿入される映像表現が用いられているが、それを舞台表現としてより高めている手法ではないかと感じ取れた。モビルスーツの戦闘についても、飛行音や砲撃音などを音響で、攻撃エフェクトを照明で表現し、コックピットに乗りながら演者が剣、ビームサーベル、ライフルといったモビルスーツの武器を持って殺陣を行うという表現を用いている。
演者の熱演とアンサンブルのまさしく縁の下を支える力によって生身の演者がモビルスーツを表現するという手法は、『機動戦士ガンダム00』の名言の一つでもある「俺が、俺たちが、ガンダムだ!」という言葉を体現しており、新しい表現へのチャレンジとなっていると言えよう。
ストーリーとしては、TV版における民間人やソレスタルビーイングのエージェントたちによるサイドストーリーを極力抑えて、ガンダムマイスターの刹那(橋本祥平)、ロックオン(伊万里有)、アレルヤ(鮎川太陽)、ティエリア(永田聖一朗)たち4人と彼らを取り巻く人物たちにフォーカスを当てた作りとなっており、「戦いを戦いで制する」という信念を持ったガンダムマイスター4人の葛藤やキャラクターの心情が丁寧に描かれている。
その他にも、愛を語る名言・迷言のオンパレードが舞台版も健在のグラハム(前山剛久)、コミカルさが増したコーラサワー(瀬戸祐介)、その残忍さが強烈なインパクを残すサーシェス(窪寺昭)チームトリニティの三兄弟であるヨハン(坂垣怜次)、ミハエル(船木政秀)、ネーナ(伊藤優衣)などが刹那たちと激しい戦いを繰り広げ、舞台を盛り上げる。
さらに、舞台版としてより神秘性の増したリボンズ(赤澤燈)や、各勢力として登場するソレスタルビーイングのスメラギ(立道梨緒奈)たち、ユニオンのビリー(一内侑)、AEUのマネキン(平湯樹里)、人類革新連盟のセルゲイ(加藤靖久)とソーマ(希代彩)といったキャラクターたちが物語の展開に深みを与えている。
なお、ゲネプロ前の囲み会見には橋本、伊万里、鮎川、永田、赤澤、前山、窪寺の7名が登壇し、挨拶や意気込みなどを語った。
刹那・F・セイエイ役:橋本祥平
ガンダムの舞台化なんて、誰が思っていたでしょうか。僕も本当にまさかガンダムまでも舞台になるかという思いでした。でも、舞台上でガンダムもできるんだという表現の幅が広がったことにうれしくもあり、演劇の可能性は無限大だと強く感じた作品です。
ロックオン・ストラトス役:伊万里有
ロックオンはいつも明るい人物なんですけど、家族をテロリストによって失ったという悲しい出来事によって悩んでいる役です。僕も稽古場では明るくしていたんですけど、家に帰ってからはすごく悩んで、夢の中にまでガンダムや稽古風景が出てきたり、24時間ガンダム体制というモードでした。悩んで考えさせられましたし、自分が成長できた役どころになっています。
アレルヤ・ハプティズム役:鮎川太陽
ガンダムの舞台化について、みなさん期待と不安があると思います。僕たちも新しいものにチャレンジするワクワクとドキドキがあって、昨日の夜中まで、みんなで演技について話し合っていました。その中で、祥平くんが『新しいものに武力で介入していこう!』と言っていました。新しいものにチャレンジするというのは未知なことで難しいと思いますが、そこにみなさんの期待があると思うので、それに全力に応えられるように一生懸命稽古をしてきました。
ティエリア・アーデ役:永田聖一朗
ティエリアはクールでプライドが高い完璧主義で、自分とはかけ離れているんですけど、何かに依存していないと怖いと感じていたり、精神的に未熟な部分があったりと自分にも共通しているところがあるなと感じています。舞台上で、ティエリアの成長を等身大で演じられるよう努めてまいります。
リボンズ・アルマーク役:赤澤燈
座長の祥平が「ガンダムという作品に演劇の力で武力介入しましょう!」と言っていました。“武力介入”のところはスベっていたんですけど(笑)、本当にそのとおりだなと思っています。“ガンダム”という強い4文字に立ち向かうには“演劇(えんげき)”という4文字しかないと思っています。演劇の力でガンダムという作品に立ち向かいたいと思います。
グラハム・エーカー役:前山剛久
グラハムはガンダムに対する愛をセリフでも表現していまして、僕自身もモットーは愛なのでシンパシーを感じています(笑)。見てくれる人に対する愛もそうですし、共演者だったり、アンサンブルの人も本当に支えてくれて、それは愛がないと無理なわけなんです。僕自身、原作が大好きで見ていました。舞台化自体も原作が愛されているから舞台化されたわけで、その愛に感謝して臨みたいと思っています。
アリー・アル・サーシェス役:窪寺昭
サーシェスは残忍なキャラクターですが、ある種、真っ直ぐに生きている男です。残忍な男を演じるということはあまりないので、芝居の上でこういう役をやるのは楽しみです。小学校の頃からガンダムシリーズが大好きで、プラモデルも作っていました。ガンダムに出たかったので夢のような舞台です。それを支えてくれるアンサンブルが重要な役割となっています。そういった意味でカンパニー一丸となってやっているこの舞台を見届けていただければと思います。
【公演概要】
公演名称:舞台『機動戦士ガンダム00 -破壊による再生-Re:Build』
公演日程:
東京:日本青年館ホール 2019年2月15日(金)~18日(月) 全7公演
大阪:森ノ宮ピロティホール 2019年2月23日(土)~24日(日) 全4公演
原作:『機動戦士ガンダム00』(『機動戦士ガンダム』シリーズより)
脚本・演出:松崎史也
監修 :水島精二
出演:
刹那・F・セイエイ役:橋本祥平 ロックオン・ストラトス役:伊万里有
アレルヤ・ハプティズム役:鮎川太陽 ティエリア・アーデ役:永田聖一朗
グラハム・エーカー役:前山剛久 ビリー・カタギリ役:一内侑
スメラギ・李・ノリエガ役:立道梨緒奈 フェルト・グレイス役:松村芽久未
ラッセ・アイオン役:澤田拓郎 リヒテンダール・ツエーリ役:阿瀬川健太
クリスティナ・シエラ役:小林末往 セルゲイ・スミルノフ役:加藤靖久
ソーマ・ピーリス役:希代彩 カティ・マネキン役:平湯樹里
パトリック・コーラサワー役:瀬戸祐介 アリー・アル・サーシェス役:窪寺昭
リボンズ・アルマーク役:赤澤燈 ヨハン・トリニティ役:坂垣怜次
ミハエル・トリニティ役:船木政秀 ネーナ・トリニティ役:伊藤優衣
公式HP:http://www.gundam00.net/stage/
(C)創通・サンライズ
取材・文:櫻井宏光