つかこうへい復活祭 VOL.1 「熱海殺人事件 LAST GENERATION 46」、ほとばしるパッション、セリフの応酬、味方良介、今泉佑唯、佐藤友祐、石田明が渾身の演技で紡ぐノンストップ2時間!

紀伊国屋ホールでつかこうへい作品、演劇ファンには『王道』、この「熱海殺人事件」の次もつかこうへい作品「銀幕の果てに」の上演が続くが、その前に!やはりこの「熱海殺人事件」は外せないであろう。開幕、「白鳥の湖」の曲が流れる。舞台上に味方良介と石田 明、いきなりの会話の応酬、口から唾を吐きながらまくしたてる。29歳と熊田留吉刑事(石田 明)が言えば、35だと木村伝兵衛部長刑事(味方良介)が言う、事件について、自分について、関係ないことも、とにかくしゃべりまくる。そして婦人警官水野朋子(今泉佑唯)も出てきて勢いよくしゃべる。キャラクターや設定、状況など、一気にわかる。そして客席から犯人大山金太郎(佐藤友祐)がサングラスをかけて派手に登場し、舞台に上がる。力関係、出身、そういったことがわかるだけでなく、そのエネルギー、パッションに観客の心は鷲掴みされる。

そしてオープニング映像、大仕掛けな舞台よりも圧倒的なパワーで、しかも4人しかいないのに!どーんと!合間に歌、展開はつかこうへい作品らしく、ぶっ飛び、毒のあるセリフも飛び出す。あらゆる『言葉』が次から次へとマシンガンのごとく俳優の口から飛び出す。今を賑わす時事ネタも合間に挟み込み、舞台はどんどん進んでいく。

ちなみにGPでは木村伝兵衛部長が「ピエール瀧を保釈させたのは俺だ」と嘯いたが、こういった部分は実はつかこうへい作品らしいところ、よって、ここは毎日変わる可能性が高い。毎日、違う舞台、「舞台は生もの」とはよく言われるが、これは生以上、そう、日々、変わっていくのが特徴だ。アドリブもなんでもあり、俳優陣の裁量やその日の「ノリ」による部分、ここが『マジック』なのである。泣かせにきたかと思えば、肩透かしを食らわせる、迫力でどーんときたかと思えば、ちょっと引いたりもする。その緩急のつけ方、つかこうへいを知り尽くした岡村俊一が、そこを良いさじ加減で魅せる。

朗々と長セリフをしゃべり倒す堂々たる佇まいの味方良介、熱いパッションと勢いで他の俳優陣と対峙する佐藤友祐、制作発表会の会見では不安を口にしていた今泉佑唯は思い切りの良さで可愛さ満点の仕草から熱い女性、はたまたちょっと何考えてるかわからない系までを大きな振り幅で熱演し、このメンバーでは最年長の石田 明が時には暑苦しく、時には軽やかに演じ、存在感を示す。

初演から46年、歴史ある作品、この「熱海殺人事件」を観劇して演劇を志したと言う演出家、プロデューサー、俳優は数知れず、改めて観劇するとなぜ、皆、この『つかマジック』に引っかかってしまったのか、肌身で感じることができる。休憩なしの約2時間、ノンストップで劇場は大量の『言葉』で埋め尽くされ、言いようのない『熱』で充満する。熱海!殺人!事件!それだけで人を魅了する。やはり、つかこうへいは稀有な作家であると改めて認識できる作品、そして全身全霊で作品を紡いでいる俳優陣、スタッフの意気込みも感じられる。幸せな作品だ。

なお、ゲネプロ前に会見が執り行われた。登壇したのは味方良介、今泉佑唯、佐藤友祐、石田 明、そして演出の岡村俊一。東京公演の前に大阪公演があったが、味方良介は「先に大阪公演が行われまして、稽古では得ることのできなかったことを大阪で吸収しました。東京公演ではどこまでいけるか、3回目ですが、その意義をお伝えできれば」と意気込んだ。今泉佑唯も「大阪公演ではいろんなことを経験してきました。もっと、もっと、みんなで力を合わせて!」とコメント、制作発表時と比べると格段の成長が見られる。佐藤友祐は「右も左もわからない状況で全力でやりました。内容をもっとわかってもらえるように!」と抱負を語る。石田明は「大阪公演では燃え尽きました」といいつつ「大阪と東京の間でフル充電しました!」と自信をのぞかせる。岡村俊一は「現時点での最高のキャスト」といい「大阪公演を見てびっくりしました!」と手応えを語る。見所について味方良介は「全部!本気で全力で!気を抜きたくない、一瞬、一瞬が見所」と語ったが、ほんの一瞬も全力投球!このコメントに全員が頷いた。また佐藤友祐は台本をもらった時の感想を「『なんじゃこりゃ?』できるかどうか不安だった」と今だから言えるコメント。また「常に演技の話をしていた」と語る。石田明は「みんなで喋って・・・・一番、支払いました(笑)、いっぱいコミュニケーションが取れました。毎公演、誰が主役かわかりません!」と語る。岡村俊一は「4人の人生を別々に描いていながら、4人が支えあいながら、誰かが助けにいく不思議な構造・・・・いろんなパターン、いろんな力がある、楽しみです」とコメントしたが、4人のキャラクターの生き様や人生を怒涛のごとくに提示。そこに脈々と流れる血のようなもの、リアリティを感じさせてくれる瞬間がいくつも連なっていくところが、この作品の真骨頂。そして男性キャストから見た今泉佑唯についての質問が出て味方良介は「少女らしい部分もあり、芯の強い女性、開けっぴろげなところもあり・・・・」といい佐藤友祐は「すごい不安がってて、『よくわかんないな』と・・・・でも本番が始まって誰よりも楽しんでいる!」とコメント、石田明は「変化が面白い!普通に笑っちゃいます」と語り、それを受けて本人は「稽古では、何もできてなくって・・・・」と謙遜。最後に味方良介が「難しいことは考えないで瞬間で察知していただいて『この作品、スゲーーーな』と!漠然と何かを感じて、衝撃を感じて、本気で演劇、見て!」と締めて会見は終了した。

【公演概要】
つかこうへい復活祭 VOL.1 「熱海殺人事件 LAST GENERATION 46」
<大阪公演>
2019 年 3 月 28 日(木)~31 日(日) 大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TT ホール
<東京公演>
2019 年 4 月 5 日(金)~18 日(木) 紀伊国屋ホール
作:つかこうへい
演出:岡村俊一
<出演>
木村伝兵衛部長刑事:味方良介
婦人警官水野朋子:今泉佑唯
犯人大山金太郎:佐藤友祐(lol-エルオーエル-)
熊田留吉刑事:石田 明(NON STYLE)
[大阪公演]
協力:つかこうへい事務所
企画・制作:(株)よしもとクリエイティブエージェンシー(株)アール・ユー・ピー
主催:吉本興業
[東京公演]
提携:紀伊國屋書店
制作:つかこうへい事務所
企画・製作:アール・ユー・ピー
公式HP:http://www.rup.co.jp/

取材・文:Hiromi Koh