倉持裕が古田新太主演で書き下ろす痛快爽快人情時代劇。清野菜名、須賀健太が姫様と家臣役で再び参戦!

今年旗揚げ39周年を迎えた劇団☆新感線。 感謝の意を込めた“39サンキュー興行”より、 夏秋公演・いのうえ歌舞伎《亞》alternative『けむりの軍団』が7月の東京公演を皮切りに、 福岡、 大阪で上演される。 ツアーの大千秋楽を飾る大阪公演を前に6月初旬、 出演の古田新太、 清野菜名、 須賀健太の3名が来阪、 大阪市内で会見を行った。

2016年のいのうえ歌舞伎『乱鶯』から3年。 本作は脚本の倉持裕が再び看板役者・古田新太とタッグを組んだ、 本格派時代劇第2弾。 演出のいのうえひでのりから「黒澤明監督の映画『隠し砦の三悪人』と太宰治の小説『走れメロス』を合わせた話にしたい」と依頼を受けた倉持が、 戦国の世で策士2人が巻き起こす、 痛快爽快人情時代劇を書き下ろした。

頭が切れて腕も立つ軍配士、 真中十兵衛(古田新太)と、 口の巧さと調子の良さで乱世を生き延びる謎の浪人、 美山輝親(池田成志)。 2人がひょんなことから出会い、 嫁ぎ先の大名家から抜け出した紗々姫(清野菜名)とその家臣、 雨森源七(須賀健太)を無事に姫の生家へと送り届ける役回りを担うハメになる……。

「十兵衛はいろんな君主のもとで軍師を務めるんですが、 必ず最後には失敗する。 しかもそれは部下が悪いせいだと思ってる。 上司としては最低のヤツ」と役について語る古田。 倉持の脚本は「会話が軽妙で、 江戸前らくごのような面白さ」と太鼓判を押す。 「読んで面白い台本は、 演じるとなるとかなり苦しい。 相変わらず役者泣かせな脚本だなと。 『走れメロス』『隠し砦の三悪人』と聞けば、 何となく結末は分かると思うので(笑)、 それよりは道中でいかに敵をだまくらかすか。 姫を逃すために十兵衛と輝親が知恵を絞っていく姿が面白い」。 また、 前作『乱鶯』ではしっとり大人な雰囲気もあったが、 今回は「倉持が劇団☆新感線を描いたような作品」とも話す。
「いつも通り、 粟根(まこと)が口ばっかりで、 右近(健一)が歌って、 サンボ(河野まさと)がバカで、 みたいな(笑)。 春公演『偽義経冥界歌』が少年ジャンプだとしたら、 今回は、 週刊アクションぐらいの会話劇です」。 今作から演出のいのうえが標榜する“年相応の本格派時代劇”については、 「おいらと成志さんの年寄り2人がめちゃくちゃ動かされてるんだから、 嘘ばっかりだよな」と懐疑的。 「まあメインの役柄を担うのでしょうがないんですけど。 本格派時代劇にしたって、 実際に戦国時代を見たヤツなんて誰もいないんだから、 その意味ではサイエンスフィクションです」とボヤキ節で笑わせた。

共演の清野菜名と須賀健太は、 それぞれ2017年の『髑髏城の七人』Season花、 『髑髏城の七人』Season月(上弦)以来、 2度目の出演となる。 とりわけ、 中学時代に同劇団の公演を見て舞台の仕事に興味を持ったという須賀は、 古田の稽古姿に役を忘れて見入ってしまうと明かす。 「古田さんと初めてご一緒できるのが嬉しくて。 毎回違うことを試されるので、 ついお客さん目線で見て笑ってしまう。 早く共演者の感覚になりたいです」と喜びをにじませつつ、 気を引き締める。 演じる源七は昔気質の侍だが、 「でも実はめっちゃ弱くて。 拙者が姫をお守り致しますと言いつつ、 姫様に守られている。 いまのところかっこいいアクションシーンはないみたいです」と苦笑い。

 

そんな源七が仕える、 お転婆な紗々姫役を演じる清野は、 「単純にかっこいいから」とアクション好きな理由を語る。 「新感線さんの舞台では全身を使って表現できるので、 やっと自分の居場所を見つけたというか、 自分を出せる場所だなって」と、 前作では得意のアクションを活かし、 全85公演を演じ切った。 「今回も期待して台本を読んだんですが、 なかなかアクション場面が出て来なくて、 すごく不安になりました」。 たまらずいのうえに懇願し、 最近では少しずつアクション場面が増えつつあるそう。 清野は「パワフルで大好きな劇団員の皆さんとまたご一緒できることが嬉しいです」と爽やかな笑顔で語った。

共演の2人について古田は、 「(早乙女)太一もそうだけど、 みんな芝居がひねてなくて素直」とみる。 そんな彼らを前に、 稽古場ではバディを組む池田と共に率先してふざけて見せるのだとか。 「今は皆さんちゃんとしていて、 台本通りにやるのが正解みたいに思われがちですが、 僕ら80年代の小劇場ブームに育った人間は、 基本的にコンプライアンスは持ち合わせていないので。 稽古場ではふざけまくって、 その中から正解や面白いものを見つけて台本にしていく。 その代わり本番では絶対にふざけないというのが、 僕らのやり方なので。 健太たちには、 リハーサルは失敗するところ、 というのを見せられれば良いかなと。 素直な若者たちに、 我らのインディーズ魂を植え付けてやろうと思います」と、 最後はユーモアたっぷりに古田が後輩思いの一面を垣間見せたところで、 会見は幕となった。

 

【公演概要】
<東京公演>
2019年7月15日(月・祝)〜8月24日(土)TBS赤坂ACTシアター
<福岡公演>
2019年9月6日(金)〜23日(月・祝)博多座
<大阪公演>
2019年10月8日(火)〜21日(月)フェスティバルホール
公式HP:http://www.vi-shinkansen.co.jp

取材・文/石橋法子  撮影/大西二士男