2016年に配信されて以降、スマートフォンのデバイスを存分に活かしたゲームシステムで話題を呼んだゲーム『囚われのパルマ』。とある孤島にて記憶喪失の青年・ハルトに出会い、交流し、心と記憶を紐解きながら、深い恋愛体験が味わえる体感恋愛アドベンチャーだ。
3周年の今年、ハルトがどのようにして記憶を失い、孤島に囚われるようになったのかを解明する、ゲームのビハインドストーリーを、初の舞台化として上演。開幕前日に公開ゲネプロが行われた。
まず、主演・ハルト役の太田基裕に注目したい。作中でも「イケメン」と称されるように美青年としてのビジュアルや立ち振舞い、少し神経質そうなセリフ回しも原作のハルトそのもの。また、開演から時を経るに従って感情がどんどん表に出てくる様は、ゲームを攻略していく手順とほぼ同じであり、ゲームのファンも納得いくハルト像を作り上げている。
photo/岸隆子
ハルトが所属する製薬会社「シーハイブ製薬」のシーンが中心となってストーリーが展開されていくが、研究室のメンバーがそれぞれ少し劣等感のあるまとめ役、ライバル意識の強い同僚、チャラチャラとした後輩……と個性豊かなイケメンが揃っている。その中にあって落ちこぼれの冴えないおじさんを演じる山岸拓生の存在が異質であり、周囲のイケメンぶりをより引き立たせているのは間違いない。
そして、研究室に新たに篠木文乃(前島亜美)が配属されていく。彼女は男ばかりの研究室にあって、元気に振る舞ったり、時には先輩に媚びてみたり、冴えないおじさんには露骨に冷たくあたったり、コロコロと態度を変えていく。その様子が不穏さを際立たせており、そしてストーリーを進めるカギともなっている。声色を変えながらキャラクター性を演じ分ける前島が好演している。
研究所所長である政木(石橋徹郎)はハルトの父母に関わる重要人物。登場すれば威厳たっぷりの存在として君臨することもあれば、ハルトを元・想い人に重ねていたりとギャップの大きい役柄だが、石橋がベテランならではの貫禄を見せつけ演じている。
photo/岸隆子
政木が新薬プロジェクトのリーダーにハルトを任命してから物語は大きく変化を見せていく。ここでも注目したいのは、ハルトや篠木、悠未ひろ演じる狩谷が移動する際にパントマイムを取り入れている場面だ。正確かつ自然なマイムであるため演技がわざとらしくなく、繊細な演技の邪魔をしていないのが見事。綿密な稽古現場であったであろうことが想像できる。
舞台『囚われのパルマ -失われた記憶-』は派手なアクションもなければ、試合をするわけでも、歌って踊ることもなく、淡々と物語が進んでいくように一見感じられる。しかしながら、セリフを喋っていない人物もパソコンを覗いたり、書類を整理したり、あたかもそこに本当の研究所が存在するようなリアルさを追求している。すなわち「舞台上のどこを観ても誰かが演技をしている」というところでは他の作品とは違った新しい感覚を経験できる作品といえるし、その細やかさは繊細なゲーム世界を忠実に再現しているといえるだろう。
photo/岸隆子
<出演者:コメント>
太田基裕 :僕が演じるハルトがどのような人物で、環境で、どのような人生を歩んできたのかというところにスポットを当てつつストーリーが進んでいきます。携わってきた人たちみんなで入念に作り上げた舞台です。ゲームのファンの方はもちろんのこと、ゲームをやったことがない方でもこの作品を観て、ぜひゲームをやってみたい! と思って頂けるように頑張っていきたい。
前島亜美 :もともとこの作品をよく知っていたので、その舞台化に携わらせていただけてとても嬉しいです。原作の繊細さを大切に、丁寧にお芝居を作った現場になりました。研究所のお話なので、実験や開発、研究など、お仕事の動き一つひとつも、細かく確認したり、考えながら作ってきましたので、そこにも注目していただきたいなと思います。
悠未ひろ:ゲームという平面のものから、生身の人間が演じて、登場人物の立体化していく作業が、大変でもあり、難しくもあり。そして楽しくもあり、というお稽古になりました。これが舞台上で、生きた人間が登場人物それぞれに魂を吹き込んだらどうなるのか、楽しんでいただけたらなと思います。
村上幸平:僕が演じているオリジナルキャラクターも、原作のファンの方にも愛してもらえるように、原作の空気感を壊さぬよう、かつ、スパイスになれたらいいなと思っています。稽古は時間をかけて仕事ぶりをリアルに見せようと努めました。セリフのある人でなくても、後ろで細かな動きをしているので、ぜひ、そういうところにも注目して頂けたら。
石橋徹郎 :ゲームのビハインドストーリーということでハルトの周りにいる人間の物語もいっぱい絡んできます。そのことによって彼のキャラクター性が、より人間味を増していくのではないかなと。この世界を僕らが実在感を持たせることによって、より、愛着を持ってもらうなり、身近に感じてもらうなり、そのような舞台にできるよう、そこが俳優の力の見せ所だと思います。
間慎太郎 :演じているのはゲームに登場しないオリジナルキャラクターですが、とにかく悪く、とにかく強く、とにかく出世欲の強い「何ちゅう傲慢なキャラや!」と驚いてもらえるような(笑)、そういった面を出していこうとキャラクターを仕上げていきましたので、ぜひ楽しんでいただけたら。
photo/岸隆子
【公演概要】
タイトル:舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』
日程・会場:
<大阪公演>6 月 22 日(土)~23 日(日) サンケイホールブリーゼ
<東京公演>6 月 27 日(木)~30 日(日) シアター1010
キャスト:
太田基裕
前島亜美
悠未ひろ
村上幸平
頼経明子(文学座)
清水一希
瑛(あきら)
青地洋
愛純もえり
間慎太郎 山岸拓生
石橋徹郎(文学座)
原作・監修:カプコン
脚色・演出:カニリカ
主催:舞台「囚われのパルマ」製作委員会、足立区シアター1010 指定管理者(東京公演)
制作:キョードーファクトリー
制作協力:SANETTY Produce
協力:キョードー大阪(大阪公演)、サンケイホールブリーゼ(大阪公演)
公式サイト:http://palm-stage.com/
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取材・文:佐藤たかし