調布国際音楽祭「午後のオペラ《後宮からの誘拐》」 事件は西調布〜調布で起きている?!

『後宮からの誘拐』(ドイツ語:Die Entführung aus dem Serail)K.384は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1782年に作曲した三幕からなるドイツ語オペラ。日本では『後宮からの逃走』とも呼ばれる。。
ストーリーは、スペインの貴族である主人公ベルモンテが召使ペドリッロの助けを借りながら、恋人のコンスタンツェをトルコ人の太守セリムの後宮(ハレム)から救い出すというもの。モーツァルトの5大オペラのひとつとして高い人気も高い。溌剌としたリズムと親しみやすいメロディ、台詞をふくめて上演時間もやや短め。ジングシュピールと呼ばれるジャンルに属し、1782年にウィーンのブルク劇場にて初演。モーツァルトはこの公演を成功させ、ウィーンでの名声を得た。

さて、今回の調布国際音楽祭の『後宮からの誘拐』、ストーリーの舞台はトルコのはずなのだが・・・・・「西調布」とかローカルな地名が(笑)。オスミンが飲むお酒は・・・・・深大寺ビール!実在する店の名も!セリフの中にローカルなネタを散りばめて観客の笑いを誘う。演奏も歌も超がつくほどの一流、どうもこの調布〜西調布、会場近辺での出来事、というところに洒落と地元愛を感じる(ちなみに調布〜西調布間は京王線各駅停車で1駅)。歌の内容はステージ中央に字幕で映し出され、観やすく工夫されている。

物語自体はライトで展開もシンプル、クラシックやオペラに詳しくない人でもすんなり入っていける。そして指揮をする鈴木優人が・・・・なんとセリムに!ジャケットを脱いで、あらかじめ仕込んでいた王冠をかぶって瞬時に変身し、ここは客席から笑いが起きる。「セリムは・・・・ターバンじゃなかったの?」というツッコミは野暮というもの。
演奏会形式ではあるものの、ちょっとした芝居も入り、多少の小道具も用意されており、エンターテイメント性をアップさせ、あっという間の三幕。歌い手と演奏のコンビネーションもよく、モーツァルトの楽曲の素晴らしさを感じ、またモーツァルトが考えていたであろうオペラの形もなんとなく想像できる。
ただ単純にオペラを上演するだけでなく、地元に『還元』、市民も納得の面白さ&レベルの高さ、本物志向の音楽祭らしい内容。場所は調布市文化会館たづくりのくすのきホール、客席はおよそ500。こういった規模の上演にはちょうどよいホールであった。

【公演概要】
調布国際音楽祭「後宮からの誘拐」
日程・場所:2019年6月28、29日 調布市文化会館たづくり くすのきホール
指揮/セリム:鈴木優人
管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン
演出: 田尾下 哲
出演・配役:
コンスタンツェ[ベルモンテの婚約者]:森谷真理(ソプラノ)
ベルモンテ[スペインの貴族]:櫻田 亮(テノール)
ブロンデ[コンスタンツェの召使]:澤江衣里(ソプラノ)
ペドリッロ[ベルモンテの召使]:谷口洋介(テノール)
オスミン[太守の監督官]:ドミニク・ヴェルナー(バス)
公式HP:http://chofumusicfestival.com/cmf2019/home/opera-matinee/
文:Hiromi Koh

撮影:Hikaru Hoshi