未来空間の見事な構築と男優陣の熱いオーラが見事に結実! 舞台 ヨルハ Ver1.3a 開幕!

『舞台 ヨルハ』とは、2017年2月にプレイステーション4でリリースされ(その後PC版やXbox One版も発売)、出荷数とダウンロード数を合わせると世界中で400万本以上のセールスを記録したスクウェア・エニックスの人気SFアクションRPG『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』と世界観を共有しつつ、同ゲームに登場する新型アンドロイド兵士「YoRHa(ヨルハ)部隊」にスポットをあてた演劇シリーズである(ちなみにオートマタとは「自動人形」という意味)。
もっともこの舞台、実はゲーム発売の前から上演がなされていて、初演は2014年10月。その後、2015年5月に『舞台 ヨルハVer1.1』として再演。
と、ここまでは全て女優がヨルハの面々を演じていたのだが(ゲームに登場するヨルハの面々も女性タイプ)、2018年1月に上演されたスピンオフ作品『舞台 少年ヨルハVer1.0』は男性キャストで男性型ヨルハを描いたオリジナル・ストーリーで、続いて2月には再び女優陣プラス生演奏や生歌の要素を採り入れつつ『舞台ヨルハ』を再構成した『音楽劇 ヨルハVer1.2』が上演されている。
原作・脚本のヨコオタロウは『ドラッグオンドラグーン』『ニーア』シリーズなどのゲームクリエイターとして知られる才人だが、“ヨルハ”に関してはゲーム開発とリンクさせつつ演劇からスタートさせている点がユニークともいえるだろう。
そして2019年7月4日から東京・サンシャイン劇場、11日から大阪サンケイホールブリーゼで上演される『舞台 ヨルハVer1.3a』は、それまでのキャラクターを全員男性に置き換えて男性キャストのみで描出するという新たな試みで迫る最新作であり、『舞台 少年ヨルハVer.1.0』の成功をさらに発展させての意欲作ともいえるだろう。
基本設定としては、ゲーム前作『ニーア ゲシュタルト/レプリカント』から数千年後の未来が舞台。

機械生命体に地球を侵略された人類は月へ逃れ、アンドロイド兵士を量産して地球奪還のための戦いを続けていた……。
ここまで把握しておけばゲーム未体験でも、それまでの舞台を見たことがなくても全く問題はない(もちろん過去それらに触れてきた方々なら、さらに比較も含めて深みある探求も楽しめること必至)。
初演前日の7月3日17時半よりサンシャイン劇場にて行われたゲネプロに参加し、マスコミや多くの関係者とともにこの熱い舞台を鑑賞させていただきながら、改めてその想いを胸に抱いた次第である。

本作そのもののメインストーリーは、地球への第十四次降下作戦において、機械生命体からの予想外の攻撃を受けたヨルハ部隊は、二号(宮城鉱大)四号(綾切拓也)十六号(木村優良)二十一号(小南光司)を残して全滅。

彼らは地上で抵抗活動を続けるローズ(紅葉美緒)ら6人のレジスタンスと合流し、成功率の極めて低い過酷なミッションを敢行しようとする。

しかし月の司令部は彼らに増援部隊も武器も補充することを、なぜか拒み続け……。

開幕と共に驚嘆させられるのは、やはり舞台装置の見事さで、特に薄い幕に映像を透過させながら生身の俳優たちとコラボさせていく手法は、一気に舞台空間を未来SF世界へと転じさせてくれる。場面ごとの俳優の立ち位置といった構図の切り取り具合も実に巧みだ。

また今回最大の売りでもある男性キャストということでは、男性臭の強いキャラと中性臭の強いキャラ(それこそレジスタンスのひとりリリイ役の古賀瑠のように、少女と見まがうほどの者もいる)が絶妙に分けられていて、それぞれのキャラクターも明快で感情移入もしやすく、個性豊かなイケメンぶりを大いに堪能できる。

またこうした配置などから、ちょっとした集団バトル系ミッション作品に精通している方ならば、この物語がかなり過酷で悲壮的な展開を強いられることが即座に予測できることだろうが、演じる者たちそれぞれの熱いオーラが心地よいほどに客席へ伝わってくるので、それに引きずられながら早く次のシーンを見たいという欲求に駆られていくうちに、あっという間に怒濤のクライマックスへ突入。

上演時間は2時間35分ほどで休憩もないが長さは微塵も感じず、テンションを大いに高めたまま突っ走ってくれる。また前半部と後半部の合間にキャストが登場しての、ほんの少しの心ほぐしタイムも用意されていて、これもまた意外に楽しい。

演出の松多壱岱は『舞台 少年ヨルハ』以外の『舞台ヨルハ』ステージをすべて担ってきているだけあって、作品世界観とそれに見合ったキャラクターおよびドラマツルギーとの演劇的融合に成功。

さらに『音楽劇ヨルハVer1.2』に続いて岡部啓一(MONAKA)音楽が生演奏(ギター:後藤貴徳、バイオリン:白須今、パーカッション:福岡高次)されたり、ストーリーに違和感のない形でキャスト陣のダンス・パフォーマンスが繰り広げられたりと、舞台全体の躍動感が途切れることはない。

一瞬、この題材を映画でやってみたらどうなるだろうとも思ったが、実写で安易に企画しても予算とセンスの問題で確実にアウトだろう。即ち、これは演劇でなければ成し得ない面白さを持った作品として大いに屹立しているのである。

【公演概要】
タイトル: 舞台 ヨルハ Ver1.3a
日程・会場:
<東京公演>7月3日(水)~7日(日) サンシャイン劇場
<大阪公演>7月11日(木)~14日(日) サンケイホールブリーゼ
原作・脚本:ヨコオタロウ
演出:松多壱岱
音楽:岡部啓一(MONACA)
出演:
宮城紘大 二号
綾切拓也 四号
木村優良 十六号
小南光司  二十一号

紅葉美緒 ローズ
松原凛 アネモネ
古賀瑠 リリイ
菅野勇城 ガーベラ
神坐慶 ダリア
矢野たけし デイジー

笠原織人 司令官
佐藤智広 ワカバ

田中宏輝 赤い少年
須賀京介 アコール
殺陣アンサブル
倉本晃良、 野呂奏流、 織田俊輝、 飯原優、 太田達也、 うえたす、 掛川とうま、 伊与田良彦、 林宏樹

主催:「舞台ヨルハ」製作委員会
制作:イルカ ディアステージ アリスイン SANETTY Produce
制作協力:キョードーファクトリー

公式サイト: http://yorha.com
文:増當竜也