《インタビュー》舞台「明日、君を食べるよ」作・演出:なるせゆうせい

今作舞台「明日、君をたべるよ」は『ハイスクール奇面組』や、『ギャグマンガ日和』、『コジコジ』等数多く の有名人気漫画の舞台化を手掛け今や 2.5 次元作品界隈では奇才と呼ばれている脚本・演出家なるせゆうせいが「食育」をテーマに描く命の食べ方をテーマとした完全オリジナル作品。2014 年には杉並演劇祭で優秀賞を獲得し、2016年に再演、そして今年満を持して3度目の上演となる。人気アイドルグループAKB 48 チーム8で活躍中の濱咲友菜と、グラビア活動やミュージカル、バラエティ等に出演し幅広く活躍をする寺本莉緒が、 W初主演で挑戦する。また、今回上演するにあたり、豊島区が後援名義となり、こまむすび役 W キャストとして 豊島区議会議員元谷ゆりなの出演も決定している。
普段なにげなく言葉にする「いただきます」の意味を知るきっかけになる作品、作・演出のなるせゆうせいさんに作品を書いたきっかけや食に対する思いを語っていただいた。

「最近の『インスタ映えのために写真だけとって料理を捨てる』とか許せない」

――そもそも、この話を書こうと思ったきっかけは?

なるせ:介護を描いた作品「ヘルプマン!」の時もそうだったんですけれど、世の中の役に立っているようなことを書いてみようと。僕は都会育ちではないので、身近に動物とかたくさんいるところで育ったので、そういう意味では「食育」といった食べることに意識が向いていて、今回やってみたいなと思ったんです。それに、「食べる」という普遍的なテーマをどれだけ描けるかということがずっと心に残っていて。実は年に20校くらい、高校の演劇部で演じられている作品で、今の子供たちにも響くところがあったようです。

――野菜でもお肉でも「捨てちゃダメ」とよく言われていますよね。

なるせ:僕らの世代だと、「もったいないおばけ」のようなものですよね。食べるものを無駄にするなという教えでずっと生きてきましたからね。今でも食事を残せないんですよ(笑)。最近の「インスタ映えのために写真だけとって料理を捨てる」とか許せない。

――今回の話では「牛」が出てきますが、たしかに牛も食材としては捨てるところがないですよね。

なるせ:必要なぶんだけ狩猟して、いただくというジビエ料理も興味があって。動物の命をいただいているんだ、という当たり前だけど忘れてはいけないところだと思います。

 

「調理を工夫すれば生ゴミも減らせたり、食に関しては学べることがたくさんあると思います」

――現代人にとっては、食べ物がいつでも手に入るということが当たり前になっているのかもしれません。

なるせ:台本の中では動物の屠殺場の様子を書いたり、社会的なテーマも取り入れています。そういった部分も演劇との相性がいいなと考えていたので…。誰もが生きることや身近にある差別に対して知らずに過ごしていることもあるから、演劇として描くことにより分かりやすくなっているのではないかと。

――若いキャストさんも気づくことがありそうですね。

なるせ:この作品はとくに若い子たちに観てもらいたいなと想定して書いたので、若い子たちも観て初めて知ることがたくさんあると思っています。オーディションもしていて一人採用したんですが、実家で食用の牛を飼っていると聞いてただならぬ縁を感じました(笑)。実際キャストを連れて見学してもいいかもしれません。

――演じている方もいろいろ勉強になるし・・・。今回は牛が登場しますが、野菜でも捨てるところがないですね。

なるせ:調理を工夫すれば生ゴミも減らせたり、食に関しては学べることがたくさんあると思います。舞台もただ観て、というよりは一緒に体験しながらできるというのもできたらいいなと思っています。食べ物とコラボしてそれを食べながら観劇できる舞台、というのも面白そうですよね。

――劇団四季のこどもミュージカルのように、全国回ったりとか・・・。

なるせ:ああいうのもやりたいですね、前は杉並区の助成金をもらいながらNPOとしてワークショップをやっていたこともあるんです。全国の子供や学生たちと一緒に回ってコラボして、その先に繋げられることができれば素晴らしいですね。

――最後にメッセージを!

なるせ:「いただきます」という言葉の意味を、舞台を観終わったあとに知ることができると思います。これも当たり前な言葉ではあるんですが、その言葉の裏が舞台の中に詰め込まれているので、そこを観て感じていただいて、食への意識が変わるきっかけになればいいなと、それを伝えたいです。

――ありがとうございました。公演を楽しみにしています。

<作品紹介 / あらすじ>
都会ッ子でへそまがりな少年サナギは、母親の再婚を機に田舎へ引越してくるが慣れない田舎暮らしに閉塞
感を感じていた。しばらくして再婚相手の連れ子のミゾレに連れられて1頭の牛の世話を始める。うしのすけと名付けられた牛の世話に、最初は嫌がっていたサナギだが徐々に心を開いていく。そのうしのすけはやがて食べられてしまう食育用のウシだとは知らずに……。やがて、少年は「いただきます」の本当の意味を知る。 一人の少年と一頭の牛が織りなす命の物語。

 

【公演概要】
日程・会場:2019年11月20日(水)~12月1日(日)
アトリエファンファーレ東池袋
脚本/演出:なるせゆうせい
出演:
[主演]濱咲友菜(AKB48・チーム8)、寺本莉緒 Wキャストにて出演
村田寛奈(9nine)、遠藤みゆ(ふわふわ)、中﨑絵梨奈、八重樫琴美、あまりかなり、 向野章太郎(劇団プレステージ)、元谷ゆりな(豊島区議会議員/こまむすび役 W キャスト)、 南米仁(こまむすび役 W キャスト/クウネル役兼役)、南憲和
プレイガイド:ローチケ( https://l-tike.com/ashita-kimi/ )
公式ホームページ:asitabe2019.net
公式 twitter:@ashitabe2014 (http://twitter.com/ashitabe2014)
主催 :「明日、君をたべるよ」製作委員会
取材:Hiromi Koh 構成協力:佐藤たかし
なるせゆうせい撮影:金丸雅代