累計30万人が観劇した超歌舞伎、好評につき第3弾、NTTの最新技術と伝統芸能の雄である歌舞伎が融合し、繰り広げられるオリジナル新作。
さて、今回の作品についてだが、歌舞伎ファンにはおなじみの顔見世舞踊の大作『積恋雪関扉』に着想を得 た、超歌舞伎ならではのオリジナル作品。中村獅童が超歌舞伎で初めての悪人役である惟喬親王に挑むほか、これに敵対する良岑安貞の二役を演じる。また初音ミクも同様に、安貞の許嫁である小野初音姫と、白鷺の精霊の二役を演じ分ける。ここは観どころとなるであろう。 そして今回の超歌舞伎では、冒頭に『お祭り』をもとにした超所作事『祝 春超歌舞伎賑』が上演され、中村獅童が超歌舞伎の舞台に戻ってくることと、超歌舞伎三年目の春を祝い寿ぐ。
開演前は、鑑賞するための『手引き』的なものがスクリーンに映し出される。屋号の掛け声など、知っているとより面白い豆知識がレクチャーされる。そしていよいよ始まる。
まずは、超所作事『祝 春超歌舞伎賑』から。スクリーンに多くのメッセージ、「待ってました!」等ユーザーの期待が大きいことがわかる。客席も早くも大興奮。1階客席から中村獅童登場!1階アリーナ席はもう落ち着かない。客席通路を通って舞台に上がる。スクリーンには「萬屋」「日の本!」等の文字が。台詞が「ニコニコユーザーの皆さん」「初音屋の姐さん」流石、超歌舞伎!獅子舞、初音ミクの登場で舞台は一気に華やかになった。「初音屋!」の掛け声がかかる、もちろんスクリーンにも。
そして、これから始まる【本編】の説明を中村獅童と初音ミクが行う。2役演じること、掛け声のこと、ちなみにNTTは「電話屋」、ここで客席から笑いが起こる。
それからいよいよ【本編】、まずはスクリーンに映像が、これが日本画、水墨画のような美しさ、流れるような動き、物語の時代背景などを説明するので、歌舞伎のことが全くわからなくても大丈夫。また会場入り口でも無料のパンフレットが配布されているので、これを読めば、だいたいのことがわかる。時代は平安時代の初頭。それからタイトルロールにキャストのクレジット、楽曲も大音量、大河ドラマ以上の迫力のあるオープニング。
まずは発端、「洛北桟敷ヶ獄惟喬親王御陵の場」皇位継承の争いに敗れた惟喬親王、その乳母である磐萩の局が彼の大望を成就させようと魔王に千日祈願、すると、なんと惟喬親王が在りし日の姿で甦る。しかし、実体がないので、三種の神器である八咫の鏡(やたのかがみ)にその姿を写すと元の白骨に戻ってしまうということを磐萩の局が告げる。この時に映し出されるキャラクターのビジュアルがかなり!怖い!
第一場「洛中良岑安貞館の場」でスクリーンに初音ミクの十二単姿がここで披露、可愛らしくも美しい。幼い頃から許嫁の仲である良岑安貞と小野初音姫。ところが惟喬の家臣である秦大膳武虎がやってきて婚約を破談にし姫を惟喬親王の后として差し出すように命じる。ここで「紀伊国屋」の掛け声。一転して第二場の「洛南羅生門の場」では初っ端から「絶景かなぁ、絶景かなぁ」、羅生門に潜む惟喬親王が京の都を一望しているところだが、中村獅童の役の変わり方が鮮やか。そこへ小野初音姫が現れ、お互いの姿を認めて対峙する。あちこちから「萬屋!」「初音屋!」の掛け声!第三場「大内裏堀外の場」、スクリーンに幻想的な朧月、これがとにかく綺麗。客席通路からアンサンブル陣が登場、良岑安貞は惟喬親王の命に従うと見せかけて闇に紛れて姫を救おうとするも・・・・・・ところが!そうは上手くいかない、秦大膳武虎が彼の動きを察知、打ち取ろうとする、危し!続けて第四場「大内裏後宮の場」なんと、良岑安貞瀕死の重傷を負ってしまう。秦大膳武虎は八咫の鏡を盗んだことを語り、彼の目の前で鏡を破壊!それでも良岑安貞は諦めない男、追い詰めるも息絶える。そこへ姫、登場!その想いをしかと受け止め、陰謀を防ごうとするも・・・・・・1本の矢が!磐萩の局が放ったのだった。姫が!姫が!絶命!嘆き悲しむコメントがどどど〜と流れる。辛すぎる展開!と思いきや、天から白鷺が飛来、磐萩の局を襲う。
この白鷺はかつて良岑安貞が命を助けたのだが、なんと神の使いの白鷺だった。ここが極めてアナログ表現で白い衣装を着用したアンサンブル陣、8名で一羽の白鷺を表現、そして初音ミクが扮した白鷺の精とアンサンブル陣が【合体】、ここは見応え、あり。そして、いよいよ大詰「大内裏奥庭の場」だ。幕があくと大きな桜の木が!白鷺の精は小野初音姫となって大内裏の奥庭に現れ、そこへ庭守に姿をやつす惟喬親王、小野初音姫(実は白鷺の精)は「恋した」と偽って近づくも、あっさり見破られて正体を明かせと迫る。うーん、ばれたからには!互いに正体を現して、負けられない戦いを繰り広げる。ここは総出で大立ち回り!舞台の上下で動きをシンクロさせながらの戦い、映像と生身の俳優とのコラボ、動きを合わせるのはさぞかし大変だったと思うが、この場面は超歌舞伎ならでは。布を使った演出も効果的だ。
そして!超歌舞伎ではすっかりおなじみとなった「分身の術」を実現するイマーシブテレゼンス技術「Kirai!」を使った場面、舞台上で演じている俳優の姿だけを抜き出して、別の場所に立体的に投影させる「被写体抽出技術」被写体と背景の色情報を教師データとした機械学習を新たに取り入れて、わずかな色の違いでも被写体と背景を識別できるようになったので、今まで出来なかったシーンでの被写体抽出が実現。この技術を中村獅童と初音ミクの立ち回りで使用したのだが、ここは圧巻!早速「電話屋!」の文字が!また今回初登場の鏡音(かがみね)リン!黄色のサイリウムが振られる!
そしてもはや、名物と化した感のある、そう、中村獅童の呼びかけ「あなたの言の葉を!」そして膨大な量の文字が!色とりどりのサイリウムで客席がカラフルに、紙吹雪、いきなり2階席に中村獅童!客席は大興奮!「行くぞ〜〜〜!」の声、さらに「みんな〜〜〜踊れ!」「俺は帰ってきたぞ〜〜〜」とシャウト。大音量のロック調の楽曲、客席の興奮は超MAX!大盛り上がりのうちに終幕した。
今回の作品は「関の扉」として知られる『積恋雪関扉』に着想を得たもの。中村獅童、初音ミクはもちろん、中村蝶紫、澤村國矢、もはやおなじみの顔ぶれだ。初音ミクの芝居も年々、進化、劇中曲の鏡音(かがみね)リンのボカロ曲「天樂(てんがく)」も今回の作品のテイストに合っている。また羅生門のところでは、有名な「楼門」の趣向であの有名な台詞が登場、ここはヤンヤの喝采だ。
技術も年々、進化、山車に乗って初音ミクが登場するシーン、これがかなりリアル。複数のモニタに対してミラーの再帰反射による光路長差を制御することで、ミクに加え、2層の背景を含めた「3層」の空中像を両面から同時に視聴できる「両面透過型多層空中像表示装置」を開発。この技術のおかげで透過ボードの外で演じることが可能になった。ここは本当に目を見張るシーンだ。
本当になんでもあり、な感のある超歌舞伎、客席は満員御礼状態、小さい子供から歌舞伎ファンぽい年配まで幅広い客層。かしこまらずに楽しく歌舞伎、本来の姿がここにある。
【スタッフ・キャスト】
劇中曲:天樂
作詞・作曲:ゆうゆ(INCS tenter CO.i ltd.)
出演:
中村獅童(惟喬親王/良岑五位之助安貞)
初音ミク(小野初音姫/白鷺の精霊)
中村蝶紫(磐萩の局)、澤村國矢(秦大膳武虎)、鏡音リン(八咫の鏡の精)
演出・振付:藤間勘十郎
脚本:松岡亮
【イベント概要】
ニコニコ超会議2018
日時:2018年4月28日(土)10:00~18:00
29日(日)10:00~17:00
会場:幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
公式サイト: http://www.chokaigi.jp
文:Hiromi Koh