舞台「若様組まいる 〜アイスクリン強し〜」 高い熱量で上演中。

 

畠中恵の人気小説の舞台化である。舞台の端にピアノ、中央の絵は明治時代の街並のイラスト、時間になり、その絵がライトで照らされる、キャストが登場、明治元年から物語の舞台となる明治23年までの出来事を言うのだが、よくよく聞いてみると当時の庶民の生活が相当の早さで激変したんだなということがわかる。街灯が灯り、食べたこともない牛鍋の出現等、もしかしたら現代よりエキサイティングな時代だったかもしれない。

登場人物は皆、普通の人々、主人公の皆川真次郎(玉城裕規)は洋菓子の店を開こうと決心する。今ならパティシエ、人気職業だ。そんな彼の元にやってくる4人組、【若様組】と親しみを込めてそう呼んでいるが、実際の彼らは生活のために警察官をやっている。江戸時代だったら立派な武士の家柄であり、坊っちゃまたちなのだが、身分制度が崩壊し、生計を立てなきゃならない、という状況で、しかも食わせなきゃならない人達を抱えていたり。そういう訳かどうかはわからないが、真次郎のところにしょちゅう訪れては、美味しい洋菓子をほおばる、本当に美味しそうでリアルだ。

歴史に名を残すような人は誰もいない。日々を懸命に生きている庶民、楽しそうに見えるが、ちょっとしたところに彼らの生活の苦しさも垣間見える、だが悲観的な感じは一切、なし。コミカルな雰囲気でストーリーは進行する。事件というような大げさなことは基本、起こらない。途中で焦げたワッフルとビスキットが登場するが、彼らの役割がなんだか微笑ましく(ワッフルは兄さん、ビスキットは赤ちゃん!)、見た目はイケてないが、ハートは熱く(熱すぎて焦げた??)、登場人物たちを温かく見守っている。また時代に完全に取り残された浪士たちが店を襲うシーン、やってることは非難されるべきだが、彼らの状況を考えるとちょっと切ない。またコレラの流行で皆、翻弄されるが、史実では明治23年、日本に寄港していたオスマン帝国の軍艦・エルトゥールル号の海軍乗員の多くがコレラに見舞われたそうである。

生演奏のピアノが可愛く、その味わいはまさにスイーツ。こういった演出は憎いし、盆で場面が変わり、基本、店の中と外、この2か所。この店内だが、冷蔵庫や流し、かまど、細かいところにこだわりも感じる。その代わり、外の場面はシンプルで凝ったプロジェクション・マッピングのようなハイテクは使用しない。アナログなところが、明治時代の洋菓子っぽく、イメージがシンクロする。

玉城裕規演じる真次郎は実直でお菓子作りに真摯に向き合い、一途だが、その分、恋愛にはかなり疎い様を好演する。若様組の面々、いつも4人一緒の仲の良さ、元気いっぱいでいつもお腹空かしている感じが微笑ましい。お侠な小泉沙羅を演じる宮﨑香蓮、リボンを真次郎に結んでもらう場面は乙女そのもので、普段の元気いっぱいな姿との落差が可愛らしく、対する井上小百合演じる紫堂志奈子、紫堂子爵の姪で、女学生で沙羅と同じ学校に通うお嬢様っぽい雰囲気を醸し出し、小泉沙羅とのコントラストを出していた。また、この「アイスクリン強し」には登場しないキャラクター・牧 忠行演じる和合真一、ユーモアたっぷりな存在感で作品のアクセントに。沙羅の父、小泉琢磨演じる粟根まこと、場面を引き締めるベテランぶり。

また、初日の舞台開演を直前に、囲み取材が開かれた。主演を担う玉城裕規からは「初日に向いテンションが上って、みんなとの息も合ってきている。本番でお客さんが入ったら、より緊張感が生まれてくると思うので、それをもプラスにして、明治の時代を生きる人は、今の人達より人間力の熱量がすごうと思うし。(そんな様々な思い力を)前面に押し出して、(キャスト、スタッフ一堂が力を合わせ、)精一杯、明治の時代を生きれたらなと思います 」と思いを伝え、共に登壇した出演者も同様に舞台へ挑む熱い感慨を語り、舞台への熱量が熱く伝わる会見となった。

囲み取材でのフォトセッション、明治写真風に、、、

さて、次回公演、2018年10月、「若様組まいる〜若様とロマン〜」(仮)、さてどんな内容なのか?原作によると、どうも若様たちが・・・・・・・見合い?乞うご期待。

 

舞台「若様組まいる~アイスクリン強し~」、脚本・演出:村上大樹さんインタビュー

 

<ストーリー>
舞台は、皆川が開いた西洋菓子店風琴屋。巡査勤務の合間にたむろする若様組や若様たちのマドンナ的存在沙羅の平和な日常に、大商人 小泉琢磨が仕掛ける試練や事件が巻き起こる…!沙羅の強力ライバル・志奈子の出現や、皆川や若様たちを執拗に嗅ぎまわる新聞記者など、 明治の若者の生活風景をコミカルに描きながらも、平和な時代を渇望する世代が、時代の大きなうねりである戦争への道に抗う様を描く。

 

【公演データ】
舞台「若様組まいる~アイスクリン強し~」
原作:「若様組まいる」「アイスクリン強し」畠中恵(講談社文庫刊)
脚本・演出:村上大樹

日程:2018年4月27日(金)~5月6日(日)
会場:サンシャイン劇場

出演:
玉城裕規(皆川真次郎 役)
入江甚儀(長瀬健吾役) 塩野瑛久(園山薫役) 中村優一(福田春之助役) 安川純平(小山孝役) 宮﨑香蓮(小泉沙羅役) 井上小百合<乃木坂46> (紫堂志奈子役)
和合真一(牧 忠行 役) 小早川俊輔(相馬小弥太 役) 武子直輝(相馬格乃進 役) 松波優輝(西宮浩光 役) 鎌苅健太(玉井和馬 役) 伊藤裕一(丹羽記者 役)
橋本全一(安野一馬 役) 小野寺ずる(加藤智恵子 役)
粟根まこと(小泉琢磨 役)

 

主催:株式会社メディアミックス・ジャパン/ぴあ株式会社

公式サイト:http://www.mmj-pro.co.jp/wakasamagumi2
公式ツイッター:http://twitter.com/wakasamagumi

文:Hiromi Koh
編集部