舞台「サトラレ~西山幸夫の場合」

佐藤マコト氏の漫画が原作で、過去には映画やドラマ化もされている。自分の考えが周囲に悟られてしまう「サトラレ」という病気を抱えた主人公、その主人公をひそかに警護するサトラレ対策委員会、といった人たちで繰り広げられる物語だ。2001年に映画化、2002年にはドラマ化もされた。映画は『サトラレ TRIBUTE to a SAD GENIUS』という題名で公開され、出演は安藤政信、鈴木京香、内山理名、松重豊他。制作は『踊る大走査線』を手掛けたROBOTと監督に本広克行。ドラマは鶴田真由、オダギリジョー、佐々木蔵之介らが出演した。

 舞台上には何も無く、客席をスクリーンが取り囲んでいる状態。日常の、ありふれた風景が映し出される。新宿っぽいのはご愛嬌。人々が行き会う街、見た目はさえない青年・西山幸夫、彼はサトラレ、「サトラレ」とは、あらゆる思考が思念波となって周囲に伝播してしまう症状を示す架空の病名またはその患者、彼はその中でも随一の頭脳(IQ200以上)の持ち主で、強い刺激を受けると思念波が半径30km以上になることもあるらしい。サトラレは、例外なく国益に関わるほどの天才であるが、本人に告知すれば全ての思考を周囲に知られる苦痛から精神崩壊を招いてしまうため、日本ではサトラレ対策委員会なる組織が保護している。

 

 映像と3D映像で物語の世界観の輪郭を創る。彼の考えていることがスクリーンにモノローグ的に映し出され、エコーがかかった声でそれを表現する。サトラレ対策委員会の小松洋子は、立ち位置的には語り部的なポジション。

 西山は小松洋子と結婚し、娘も授かったが、その子もまたサトラレだった。量子物理学専攻で核融合発電実用化への目処をつけたが、そのために西山は石油燃料にかかわる組織から狙われ、銃で狙撃されてしまう。死の間際の西山の姿は尊く、子供に想いを伝えて逝ってしまった。

 特殊能力「サトラレ」、そのために【普通】ではいられないし、生きにくい。それでも人を愛したり、思いやったり。シンプルであるが、そんなことを感じる。時々、スクリーンに合図が出て、そこは3Dメガネで鑑賞する。星のような揺らめきが眼前に迫ったりするが、それがファンタジー感を増幅するが、描かれている感情はリアル。スピリチュアルな物語であるが、人としての自然な愛と思いやり、そして絆といったテーマが静かに観る人の心を打つ。西山が狙撃されたのは、人間のエゴが理由だが、それでも西山の想いは消えずに時空を超える。

 

 

 

 

【公演データ】

タイトル:舞台版・サトラレ~西山幸夫の場合~
会場:ALTA THEATER (新宿アルタ 7F)
日程:2018年2月28日(水)~3月4日(日) 5日間・全8公演

原作:佐藤マコト
脚本・演出:貞方祥
映像:坂内友樹
音楽:榎本英彦
振付:加藤紗希

出演:北村悠、今出舞、 副島美咲、ほのか、柳瀬早紀、麻衣阿 くまかつみ、アレス(2/28~3/2)山村侑己、松川貴則、渡辺隆行、まさみ

Aキャスト)針谷早織、山口龍海、永久里史、神山賢士、吉田園子、叶絵里奈
Bキャスト)堀内玲、古賀司照、小田峻平、中村太郎、美月ひな、市川琴葉

特別出演:大葉健二(友情出演 3/3~3/4) 渡洋史(特別出演)

企画:清月エンターテイメント
協力:ALTA THEATER
一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会
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主催:SHOWMAN‘S

公式サイト http://www.showmans.co.jp/satorare

文:Hiromi Koh