ミュージカル「ヘタリア」シリーズ、ミュージカル「スタミュ」シリーズ等の演出で好評の吉谷光太郎が原案・脚本・演出を手掛けるオリジナル作品、「RE:VOLVER」シリーズ。その第2弾となる今作、舞台「RE:CLAIM」。
「RE:VOLVER」シリーズとは、城塞に囲まれ閉ざされた都市「霞宮(カミヤ)」から外の世界へと自由を求めるため、強大な敵に立ち向かう“悪ガキ”たちの戦いを熱く描いた、アクションエンターテインメント群像劇。その第2弾となる今作の舞台「RE:CLAIM」では、前作「RE:VOLVER」の世界から遡ること10年。少年たちにより結成されたレジスタンスチーム「都市海賊(仮)」の一員である玄汰(クロダ)と壬浦(ミウラ)にスポットライトをあて、彼らの「過去」や霞宮に生きる人々の人間模様を描き出す。かつて、同じ夢をみて命懸けで戦い、そして全てを失った彼らが、「大切な物」を取り戻すべく、再び帝国軍に挑んでいく。原案・脚本・演出の吉谷光太郎にタイトルの意味やこの設定にした理由などを語ってもらった。
「初演では描ききっていない部分。2人(玄汰、壬浦)が、別れてからどうやって仲間としての絆を取り戻していくのか、っていう物語にできればいいなっていう意味で、このタイトルをつけました」
――前回公演の手応えをお願いいたします。
吉谷:今までやらせていただいている原作モノのような作り方でオリジナル作品を作ってみたいと思いまして。幕が開いてから2日目、3日目にお客様にどんどん物語にのめり込んでいただき、そういうリアクションもありました。作り込んだ世界観で『これはこういう意味だったのか』っていう風に考察もしていただきましたね。メインキャラクターはもちろんですが、サブキャラクターや悪役にも感情移入をしていただきまして・・・・・・もともと物語を紡いでいく際にキャラクターの魅力を際立たせたいという思いがありました。キャラクターは10人ほどですが、きっちり立ったなと。満足のいく群像劇になりまして、そういうところで手応えはありました。
――前回は「RE:VOLVER」で、「RE」は再という接頭語、続けて読むと「リボルバー」回転式拳銃、今回は「RE:CLAIM」、「RE」がそのまま残って「再」で「CLAIM」が「請求する」「主張する」。
吉谷:もともと『:』を使う名前ができたらいいなって思っていまして。でも「RE:VOLVER2」っていう形ではなく、『RE:』を使って別のタイトルを作りたいなと。そうしたらいい言葉が見つかって、それが「RE:CLAIM」。この言葉には「埋めたてる」とか「取り戻す」という意味にある。また「CLAIM」、請求する、主張する、反抗するっていう意味があり、あとはいわゆる「クレーム」。いい意味合いと悪い意味合い、ただただいいことだけじゃない、敵側の意思みたいなものがちょっと見えてくるといいなと。あとは僕にとっての「クレーム」を(大笑)、役者たちから「大変な舞台、やらせやがって!」みたいな(笑)。
――「クレーム」っていい意味もあれば、悪い意味合いもあると。そういうことですよね。それが裏表みたいな感じもありますね。
吉谷:「クレーム」っていう、よくない言葉として捉えられたとしても、そこから生まれる反骨精神とかね。物語には玄汰と壬浦っていう親友同士っていうのがいまして。
――兄貴分、弟分的な2人。
吉谷:そう。今回はそこの物語で、初演では描ききっていない部分。2人(玄汰、壬浦)が別れてから、どうやって仲間としての絆を取り戻していくのか、っていう物語にできればいいなっていう意味で、このタイトルをつけました。
「玄汰もそうですが、壬浦もかなり少年漫画の主人公感がすごい強くって(笑)、純粋な、“夢見る少年”っていうところがあって、1作目やっている時からも、『お前、ちょっと主人公っぽいんだけど』みたいな(笑)」
――今回の物語の時間軸設定が、前回の「RE:VOLVER」から遡ること10年前ですよね。結構、脇を固めるキャラクターのみなさんも立っていますが、特にこの兄貴分、弟分的な2人を主軸にした理由は?
吉谷:玄汰もそうですが、壬浦もかなり少年漫画の主人公感がすごい強くって(笑)、純粋な、“夢見る少年”っていうところがあって、1作目やっている時からも、「お前、ちょっと主人公っぽいんだけど」みたいな(笑)、“今、(キャラ)立つなよ”みたいな(笑)。その中で玄汰という役回りは壬浦とは対極にして、バディというか、兄貴分というか、仲間というか、もともとこの2人の物語っていうのがおぼろげながらあったんですよ。
前作は、最後、壬浦と玄汰が仲間割れしそうな時に「俺の目を見ろ」と言って関係性をとりもどすところがありました。じゃあ、なぜそう言ったのかっていうのをさらに掘り下げたいと思い、今回はこういう風になりました。
――この2人をメインにすることによって作品自体は前日譚的っぽくもあり、一種のスピンオフ的なそんな感じですか?
吉谷:そうですね。衣澄(イズミ)っていうキャラクターが結構ガツンときていたんですが、彼との出会いも描いていったら面白いなと思うし、彼らがどう出会ったか、何があったのか、その10年後には“だからそうなった”っていうのをやれれば、1作目の物語がより面白くなるのかな?と。玄汰が革命軍に、というところを描いているんですけど、どういう経緯でそうなったか、物語上では語ってはいるので、そこをさらに掘り下げていき、“埋め立てていったもの”をまた掘り下げるみたいなイメージで、作れたらいいなと思っていましたね。
――それで「RE」、リクレイム。
吉谷:そうですね。ちょっと前回は海賊みたいなテーマでしたが、今回は地下道が主流の物語なので、そこに友情みたいな部分を全部掘り下げていき、関係性をどう取り戻すか、そういう物語にできたらいいなと思います。
――ストーリー的にはそのあたりが見所ですね。
吉谷:そうですね。最初は決別から入りますので、“失敗”、彼らの友情が破綻するところから、友情をどう取り戻すかの物語、仲間だったものが、対立構造になっていく、対抗軸として彼らがどう戦っていくかが見所になると思います。
――ビジュアル的には殺陣、アクションですね。
吉谷:彼らは見せ方もうまいので、アクションシーンにおいてもキャラクターの関係みたいなのが見えてくる。もともと、壬浦くんは弱い設定に(笑)。戦闘能力が強くなかったので、彼がいかにして2人で成長していくか。玄汰に関しては考え方を含めての物語があり、その2人が成長した状態で、ぶつかりあったりしながら最終的にどうなっていくのかを観ていただければ。
――初回を観てない方が今回観たら「前はどうだったの?」と興味が湧きますね。
吉谷:彼ら目線で見れば、ちょうど良い時間軸。前回も過去と今、行ったり来たり、回想を交えてでしたので、今回も、“失敗”のところから2年後、物語的には革命軍が蜂起する、立ち上がるそのタイミング。前作は革命軍にいるときのタイミングだった ので。「RE:VOLVER」を観てくださっていれば「これ、あの人のこと、言っているんだ」っていう部分がちょいちょい出てきますので、そこも注目していただければ。
――最後に締めを。
吉谷:はい。これはもちろんシリーズとしては続けていきたいなと思っています。今回は玄汰と壬浦ですが、さらに「RE:VOLVER」の2ndみたいなのもやれたらいいな〜とは思っています。『物語』をやりたいというテーマと共に実は裏テーマもありまして。それは原作モノで普段一緒にやらせていただき、舞台で活躍している役者たちの、さらなる別の魅力、ファンの皆様が、見たことのないところも引き出したいと。この裏テーマ、それぞれの役者のファンが「こういう役もできるんだ、魅力もあるんだ」というのをね!初めての体験として、見ていただく楽しみ方もあるかなと。こういうご時世ではありますが、観ていただければと思います。はい!
――ありがとうございます。公演を楽しみにしています。
<物語>
少年時代の『都市脱出計画』失敗から月日がたち、仲間を失った喪失感から生きる力もなくただ腐っていた壬浦(ミウラ)は、霞宮(カミヤ)の地下道にてゴミをあさりながらみじめに生きていた。
ボロボロの壬浦の前に探偵を名乗る男、葉取(ハトリ)と殺し屋の紗灘(サナダ)が現れる。葉取たちは刑事組織に雇われ、脱出計画の首謀者を追っていると言う。彼らに自らの生きる光を見た壬浦は、かつて親友の玄汰(クロダ)にもらった貝殻を握りしめ、玄汰に再び会うために葉取たちと行動することとなる。
一方、玄汰は計画失敗で深手の傷を負い、命からがら逃げてくる途中で意識を失う。その後、埋都(ウメヅ)という革命軍のリーダーに拾われる。一命をとりとめた玄汰は持ち前の戦闘力で革命軍の一員として認められていく。霞宮の狭い夜の星空を眺め、今でも強く思い出すのは仲間、特に親友である壬浦のことであった。
ある時、革命軍をせん滅する為、若き司令官の志岐(シギ)は帝國軍霞宮対策本部に着任することとなる。その頃、埋都と玄汰は革命軍を率いて帝國軍へ抵抗すべく、地下道からの侵攻を秘密裏に実行しようとしていた。『RE:VOLVER』の時代から遡ること10年。霞宮の地下道で巻き起こる熱き群像劇。
<キャスト>
山田ジェームス武、櫻井圭登、荒木健太朗、長江崚行、吉岡佑
碕理人/山岸拓生・タイソン大屋
田中慶 海本博章 山口渓 五十嵐胤人 平澤佑樹 工藤純一朗
【概要】
日程・場所:
<東京公演>
2020年4月23日(木)~29日(水祝) あうるすぽっと
<大阪公演>
2020年5月2日(土)~5月3日(日)
COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
原案・脚本・演出:吉谷光太郎
アクション監督:奥住英明(T.P.O.office)
音楽:tak
振付・ステージング:MAMORU
美術:青木拓也
照明:加藤学(ブルーモーメント)
音響:ヨシモトシンヤ(sacra sound)
衣裳:新朋子(COMO)
ヘアメイク:西村裕司(earch)
演出助手:國重直也
技術監督:寅川英司
舞台監督:佐光望
公式サイト: http://revolver-stage.com/
公式Twitter: @REVOLVER_STAGE
取材・文:Hiromi Koh