本多劇場グループ PRESENTS ACALINO TOKYO 「演劇の街をつくった男」人間が持つエネルギー、夢を、想いを現実に。どんな時代が来ようとも、これだけはなくならない

下北沢に8つの劇場を運営する、世界一の個人劇場主・本多一夫。下北沢を”演劇の街”たらしめた人物である。この本多劇場グループが本格的に始動する。それに先駆けて6月1日〜7日まで「DISTANCE」で「無観客生配信」を行い、話題を集めた。そして、客席に観客をいれての公演の第1弾が「演劇の街をつくった男」、つまり本多一夫の物語なのである。原作は『「演劇の街」をつくった男 本多一夫と下北沢』、シンプルに演劇への想い、芝居をする人たちを応援したいという気持ちだけで、自分の生き方を変え、街を変えた本多一夫の物語。それを下北沢の小劇場B1で、”今”上演することの意味と意義。さらに本多一夫、本人も登場する。上演時間は60分以内、キャスト・スタッフの検温・手洗い・アルコール消毒、スタッフのマスク常時着用はもちろんのこと、客席は前後左右2mの距離を確保、つまり”満席”になっても”満杯”にはならない。小劇場協議会のガイドラインに基づき、座席を左右1席以上空けての販売となっているからだ。
さて、実際に劇場にいく、客席に入る。今までなら、椅子がびっちりあるはずが、かなり間隔が空いている。これが”今”なのだ。満席なのだが、見た目はスカスカ。それでも、ようやく劇場が開いて、リアルに見れるという”久しぶり”さ、ここにいる観客はほぼ、皆そう感じているに相違ない。そして今までなら、座席にチラシの束があるはずなのに、ない。この芝居についてのことが書かれてあるパンフに当たる紙があるだけ。そして時間になる。
中華料理店のアルバイトが登場し、語り部の役割を担う。ここは行ったことがある人もいるはず、実在の店、珉亭。4人の劇団員が話している。「芝居と距離を取ろうと思うの」「えーー!」「マジか!」「楽しいだけでいいかわからなくなった」・・・・・・・・etc.
その4人のうちの「芝居と距離を取ろうと思うの」と発言していた女性劇団員・萩原、店に芝居のポスターを貼ろうとして・・・・・・・・「あーーー」階段から落ちてしまったその先は・・・・・・下北沢には違いないのだが・・・・・・「????」、様子が違う。新聞を見ると・・・・・・「浅間山荘事件」日付、いや年号は・・・・・・「昭和」なんと、50年近く前の下北沢にタイムスリップ!そこで彼女は若き日の本多一夫に出会うのである。
萩原がタイムスリップした時代は本多一夫が下北沢と周辺地域の店舗を次々に買収して事業を拡大、80軒以上もの居酒屋を所有していた時期であった。当然、不動産屋から”いい物件ありますよ”な話が舞い込む。駅前の好立地、早速おさえることにしたはいいが・・・・・・。


事実にタイムスリップという設定を組み合わせて展開、そこに劇場を立てようと思った経緯がテンポよく綴られる。本多一夫は、初めは俳優として活動、映画俳優として新東宝に入社、1955年(昭和30年)の『新東宝ニューフェイス 第4期生』に。しかし、役に恵まれず、ほとんどが端役だった。本多が所属していた新東宝も1961年(昭和36年)には倒産。それから下北沢駅近くでバーを開店。それが成功し、実業家になった。そのまま、”勝ち組実業家”という選択肢もあったはずだ。しかし、若い本多一夫は言う。「役者としてうまくいかなかったのが残っているんだな」と。劇場を作ることを決めたはいいが、そのためには、かなりのスペースが必要だ。


決心してから実に10年、劇場が完成するまでを時にはコミカルに、熱く描く。萩原はタイムスリップしてから10年も経ってしまったことに焦りもあったが、本多一夫の生き様や心意気に触れて彼女の心境も変わっていく。そして1982年、こけら落しを飾った作品は唐十郎作の『秘密の花園』。チラシ一つでワクワクする若者たち。そして萩原は・・・・・・。


小劇場協議会のガイドラインに基づき、60分以下の上演時間であったが、濃密な時間、満杯にはならない満席の客席、そしてリアルに客席に姿はないが、ライブ配信で観ている人々。その人たちの瞳もなんとなく感じる不思議な時間、そして上演場所が下北沢、8つの劇場のうち、一番新しい小劇場 B1、最後に本多一夫が自分役で出演する、そのリアル。人間が持つエネルギー、夢を、想いを現実に。そして劇場は人数の多い少ないはあっても、そこに人が集う、しかも配信という手段でリアルには集まれなくても、心は劇場にワープできる。どんな時代が来ようとも、これだけはなくならない。そして、人は人と同じ時間を過ごし、喜怒哀楽を共有することに喜びを感じる。そう思える時間であった。

 

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本多劇場グループ PRESENTS ACALINO TOKYO 「演劇の街をつくった男」6月19日より!

<概要>
本多劇場グループ PRSENTS
ACALINO TOKYO 「演劇の街をつくった男」
【脚本・演出】
徳尾浩司(とくお組)
【原作】
「演劇の街」をつくった男 本多一夫と下北沢 [語り] 本多一夫 [著] 徳永京子 (ぴあ株式会社)

【出演】
石川啓介 大部恵理子 笠井里美 杉山圭一 とみやまあゆみ 中薗菜々子 野川雄大 林雄大 / 本多一夫(特別出演)
【スタッフ】
舞台監督:藤田有紀彦 / 音響:星知輝 / 照明:阿部康子 / 映像:ワタナベカズキ / プロデューサー:林雄大
【協力】
エフィラ ephyra / Gakuya / ★☆北区AKT STAGE / とくお組 / 徳永京子 / ぴあ株式会社 / 宮内宏子
【お問合せ】
EL:03-6778-8399(ACALINO TOKYO) / E-MAIL:acalinotokyo@gmail.com
公式サイト:https://acalino.jp/2020/06/06/engekinomachi/
【制作協力】
本多劇場グループ
【企画・製作】
ACALINO TOKYO / ACALINO PRODUCTOION
■劇場公演
【劇場】
下北沢 小劇場 B1 〒155-0031 東京都世田谷区北沢 2-8-18 北沢タウンホール B1
【アクセス】
電車でお越しの方 京王井の頭線 中央口改札より徒歩約8分 / 小田急線 東口改札より徒歩約8分

【公演日時】 2020年6月19日(金)14:00 / 19:00
6月20日(土)13:00 / 18:00
6月21日(日)13:00 / 18:00
※上演時間は60分以内を予定しております。
※受付開始は開演の45分前、開場は30分前となります。
※開演時間を過ぎますと、お席にご案内できない場合がございます。
※未就学児のご入場はご遠慮ください。
【観劇チケット】
前売り:3,000 円(全席自由席・税込)
※当日精算のみとなります。
※当日券の発売はございません。
※チケットの発券はございません。お釣りの出ないよう、お願いいたします。
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況、及び政府・地方自治体の方針により、公演内容の変更、又は無観客でのライブ配信のみとなる可能性がございます。
【チケット購入方法】 2020年6月6日(土)10:00よりカルテット・オンラインにて発売開始 https://www.quartet-online.net/ticket/acalinotokyo ※ご予約の締切は、各回前日の24時までとなっております。
[ライブ配信]
【配信チケット】
2,000円(税込)
【チケット購入方法】
PIA LIVE STREAM にて 6月15日(月)18:00 発売開始
※ライブ配信を、スマートフォン・PCからご覧いただけます。

取材・文:Hiromi Koh