『炎炎ノ消防隊』(えんえんのしょうぼうたい、Fire Force)、『週刊少年マガジン』(講談社)にて2015年から好評連載中、2019年にはアニメ化もされた人気作品。
人体自然発火現象によって全身が炎に包まれ変異し暴れ出すようになった「焔ビト」と呼ばれる怪物、そしてそれによって引き起こされる脅威と戦う特殊消防隊の活躍を描いた消防士SF漫画だが、サスペンスやバトルアクションの要素があるサイエンス・ファンタジー作品でもある。
太陽暦佰九拾八年、東京皇国。とある大災害を境に始まった人体発火現象「焔(ほむら)ビト」による脅威に人々は怯えており、これに立ち向かうべく、そして人体発火現象の原因と解決策を究明するために「特殊消防隊」が組織された。
主人公の森羅日下部(牧島 輝)は、この「特殊消防隊」の中の第8特殊消防隊に所属している二等消防官。幼い頃に突然の火事によって母と弟を失う辛い過去を背負っていた。自身が放った炎が原因ではないかと迫害を受けるも、当時、第三者がいたことを目撃しており、その人物が犯人ではないかと思っている。自分の濡れ衣を晴らすため、そして母と弟の命を奪った犯人を捕まえるために仲間たちと共に訓練をし、消火活動に励みつつ、暗躍する謎の男「ジョーカー」(和泉宗兵)や焔ビトの秘密を握る組織と戦っていく、というのがだいたいの流れだ。
森羅日下部を取り巻く仲間たちも個性的。戦闘力は高いが頭脳労働は苦手、森羅日下部とは訓練校で同期だったアーサー・ボイル(小澤 廉)、騎士に憧れており、自ら『騎士王』と呼び、森羅日下部からは「バカのくせにモテる」と言われている。
また、秋樽桜備(君沢ユウキ)は第8特殊消防隊の大隊長、無能力者ではあるが、筋トレ好きで暇さえあれば、トレーニングに励む。優しい性格で、遺族や被害者を人一倍慮っている。中隊長の武久火縄(馬場良馬)は沈着冷静で料理好き、東京皇国軍出身。過去に焔ビトと化した同僚を自身で鎮魂出来なかったことが苦い経験となっている。女性隊員である茉希尾瀬(星波)、大量の炎を自在に操作する事ができる能力者であるが、乙女な一面もあり、可愛らしい。聖陽教会出身のシスターであるアイリス(礒部花凜)は無能力者で戦うことはしないが、焔ビトと化してしまった魂を沈める役割を担う。
今回の舞台化は1巻から5巻まで、主人公が第8特殊消防隊に所属するところから始まる。同期のアーサー・ボイルとのやり取りはコメディー的なタッチで思わず笑ってしまうし、秋樽桜備はバーベル片手にショルダープレス、君沢ユウキが飄々とコミカルに演じる。
プロローグ部分で世界観をわかりやすく提示、ミュージカルではないが、アイリスが歌う、礒部花凜のソプラノが響き渡る。
普通に暮らしていた人が突然燃え出し、「焔(ほむら)ビト」になるところは恐怖と哀しみが綯交ぜになって涙。それに立ち向かう特殊消防隊。そして主人公が所属する第8特殊消防隊は個性的な面々が揃っており、時々衝突(特に森羅日下部とアーサー・ボイル)もするが、いざとなるとチームワークを発揮する。この雰囲気、関係性が微笑ましい。そして「特殊消防隊」は第1から第8まであり、当然のことながら第8特殊消防隊は新しい。先にできている特殊消防隊はプライドもあり、成果を上げてきた自負もある。そのため、特殊消防隊同士の衝突もある。
プリンセス火華(野本ほたる)の女王様ぶりはエキセントリックで可笑しみもあってアクセントに、そしてレオナルド・バーンズ(萩野 崇)、長きに渡って戦ってきただけあって、貫禄で他の隊員たちを圧倒、そして何かを知っている様子。また、謎の男ジョーカー(和泉宗兵)、象日下部(木津つばさ)、彼らは一体何者なのか、ここではその片鱗のみが垣間見える。
ビジュアル的には、やはりアクションシーン。森羅日下部は炎を纏ったキックが得意(ヒーローはキックで戦うもの、という思い込み)、かなり練習した様子で多彩なキックを披露する。プロジェクション・マッピングなどの映像効果やその他の特殊効果とタイミングを合わせるのは大変だったと思うが、そこをクリアー、これぞ”2.5次元”なシーンを創り出す。また、ワイヤーアクションにも挑戦、見所となっている。アーサー・ボイルの剣さばき(アーサーなだけにエクスカリバー)、途中で利き手と反対の手で剣を持ってしまうところは原作にもあり、ご愛嬌。皆、それぞれの得意技を繰り出すところはしっかりと観てほしいポイント。また、それぞれの出会いもしっかりと描かれ、原作をよく知らなくてもわかりやすくなっている。プリンセス火華とアイリスの関係と辛い出来事にはうるっとくるものが。そして森羅日下部の辛い、ともすれば心折れるような過去ではあるが、それをバネにして強くなろう、ヒーローになろうという気持ち、心意気、それが困難に立ち向かう原動力になっている。そして大隊長の秋樽桜備はことあるごとに言う「俺たちはひとりじゃない」。勇気の出る言葉だ。
原作の区切りのよいところで終わっているが、もちろんその先はある。劇場では検温、アルコール消毒、客席はソーシャル・デイスタンス、フェイス・シールドも配布、マスク着用率は100%。興行を打つこと自体が困難な状況ではあるが、続きが楽しみだ。
なお、8月9日(日)17:00上演の千秋楽公演はライブ配信が決定!Blu-ray、DVDは12月25日発売決定!
<コメント>
[森羅 日下部:牧島 輝]
この状況下で本番ができたことは本当に奇跡だと思うし、とにかく嬉しかったし楽しかった! 本番でグッと上がったみんなの熱量や久々に受けるお客様からの拍手に、やっぱり舞台っていいなあと改めて思い ました。神奈川公演も大阪公演でついた勢いをさらに加速させて、誰もが忘れられない熱く、誰もが忘れられない 舞台にしてみせます!
場面や視点が目まぐるしく切り替わる演出や、シンラの悪魔の笑顔などの表情にも注目して観て欲しいです!
[アーサー・ボイル:小澤 廉]
今まで当たり前だったことが当たり前にできなくなっている中で、色々な事に注意をしながら大事に作り上げ てきたので、無事に大阪公演を終えることができたのは本当に幸せなことだなと思っています。神奈川公演も気 を抜かず頑張っていきたいと思います。
この作品はアクションがすごいです!映像と合わさるとさらに迫力が出て、炎炎の世界に入り込んだ気持ちに なると思います!
アーサーはエクスカリバーを存分にぶん回しています!アーサーの剣さばき…エクスカリバーさばきもお楽しみに。
[秋樽 桜備:君沢ユウキ]
152日ぶりに舞台に立ちました。はじめは緊張感もありましたが、お客様からの愛を感じ、そして温かいリア クションをしてくださってとても嬉しかったです。めちゃくちゃ自信のある作品になっています。早く神奈川公演 のお客様にも届けたい気持ちでいっぱいです。
桜備は大隊長ですが無能力者です。でも「人を救いたい」という想いがとても大きい人です。第二世代・第三世 代の特別な能力がなくても、強い想いを持ちながら、一生懸命頑張ればできるんだ、というところを見せられたら なと思います。感染症対策に細心の注意を払ってやっていきますので、ぜひみなさん「舞台」のことを忘れず引き 続き応援してくださると嬉しいです。
[武久 火縄:馬場良馬]
お客様の力もあり、大阪公演を無事走り抜けることができました。すごくチームワークのいいカンパニーなので、 公演毎に深まっていく「第8」の絆を神奈川公演でもお届けできたらと思います。配信もありますので、ぜひ沢山 の方に観て頂きたいです。
火縄と桜備の過去のシーンもでてきますのでそちらもぜひ注目して頂きたいです。
[茉希 尾瀬:星波]
大阪公演でお客様の拍手を頂いた時に、胸がいっぱいになりました。この気持ちを大切に神奈川公演に持ってい きたいと思います。たくさんの方の支えがあって幕が開き、感謝の気持ちでいっぱいです。
第8のメンバーの絆がとても強く、演技を超えて本当に心の底からの笑顔で演じることができました。ステージ でマキを演じることができて幸せでした。
マキは女性キャストの中でもアクションが多いので、みんなに負けないように頑張りました。走り方もマキらし さを意識していますので、ぜひ注目してほしいです。また火縄中隊長とマキのシーンでは、二人の元々の関係性を 感じ取って頂けるように大事に演じています。
[アイリス:磯部花凜]
現地に足を運んでくださったり、配信で観てくださったり、いろんな環境で演劇を楽しんでくださりありがとう ございます。こういう状況でも本番を迎えることができ、無事に大阪公演を終えることができて良かったなと思い ます。とても雰囲気の良いカンパニーなので、神奈川公演も精一杯、お客様に良いものを届けられるように頑張り ます。
今回オープニングや劇中に歌唱のシーンがあります。劇場でお芝居の中で歌を歌うのが久しぶりなので、楽しみ にしていてほしいです。
「第8」としての結束力が稽古、そして大阪公演を経てとても良い感じに出来上がっていると思うので、皆様に も言葉ではない熱量をチームワークから感じて頂けたらと思います。
<公演概要>
タイトル 舞台「炎炎ノ消防隊」
原作 大久保篤(講談社「週刊少年マガジン」連載)演出 久保田唱
脚本 なるせゆうせい
公演日程 ※8月6日(木)19:00追加公演決定!
大阪公演:2020年7月31日(金)~8月2(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(公演終了)
神奈川公演:2020年8月6日(木)~9日(日) KT Zepp Yokohama
[ライブ配信]
大阪千秋楽 & 神奈川大千秋楽公演 ライブ配信決定!!
8月2日(日)13:00 大阪千秋楽(終了) / 8月9日(日)17:00 神奈川千秋楽
[キャスト]
森羅日下部:牧島 輝、アーサー・ボイル:小澤 廉、秋樽桜備:君沢ユウキ、武久火縄:馬場良馬
茉希尾瀬:星波、アイリス:礒部花凜/烈火星宮:小南光司、カリム・フラム:校條拳太朗
フォイェン・リィ:安里勇哉、環 古達:早乙女ゆう、レオナルド・バーンズ:萩野 崇/象日下部:木津つばさ/
プリンセス火華:野本ほたる、ジョーカー:和泉宗兵
アンサンブル:相澤莉多、飯嶋あやめ、石田彩夏、加納義広、咲花莉帆、鹿野宗健、高田紋吉、南米仁
橋本菜摘、山内涼平、山口渓、渡辺誠也
公式サイト https://fireforce-stage.com
公式Twitter https://twitter.com/fireforcestage
©大久保篤・講談社/舞台「炎炎ノ消防隊」製作委員会
文:高 浩美