小説家 太宰治の短編小説「走れメロス」が発表され、今年で80年。 本作品は、小説家である太宰治が若き頃、多くの作家たちとの 友情や、彼が愛する女性たちとの葛藤や苦悩に満ちた波乱の人生を題材として、太宰と共に当時を駆け抜けた親友で作家の檀一雄が書き上げた 回想録「小説 太宰治」をベースに、舞台作品として書き下ろし。 出演は、舞台「まさに世界の終わり」(2018年)以来、2年ぶりの単独主演 となる内博貴が太宰治役を演じる。 また、太宰と共に波乱の人生を送る小山初代役と太田静子役(二役)に 谷村美月。太宰の親友で作家の檀一雄役に室龍太(関西ジャニーズJr.)、 さらに、千原せいじ、山口真帆、黒田こらん、吉田大輝、苅谷瑠衣、原慎一郎、藤井びん、石井智也、優志、湖月わたる、なべおさみ、といった個性豊かな出演者が登場する。
出だしはピアノの旋律、中央に映像、本のページがパラパラとめくれる。「小説 太宰治」の文字。
そして、太宰治が愛人と自殺を図ろうとする場面から始まる。「君は愛のために死ねますか?」「はい、覚悟はできています」ためらいもなく、お互いの意思を確認し、自殺。それから資料映像、当時の新聞、大きい見出し、『玉川上水にて心中』『入水自殺』の大きな文字。
それからバーのシーンに。太宰治が足繁く通っていたバー。そこには檀一雄、それからバーのマダム雪子(実在の人物)、歌う「命短し、恋せよ乙女」、湖月わたるがさすがの歌唱力で歌い上げて雰囲気を盛り上げる。歌い終わり、壇に向かって「そこによく座っていたのよ」と語る。檀一雄は太宰治を「天才」という。そこへ一人の男性が入ってくる。山崎晴弘(なべおさみ)、太宰治とともに自殺した山崎富栄(山口真帆)の父であった。寂しさを隠せない、穏やかな口調で「切ない」と吐露。思い出話をするマダム雪子。檀に山崎は「太宰さんのことを教えてくれないか」と頼む。壇と太宰の出会いは、そこからおよそ15年前に遡るという。
映像で年代が表示、昭和5年、青森。東京へ向かおうとする太宰、兄・津島文治(藤井びん)との会話。「早く大人になれ」と兄がいう。太宰治の人生、壇は「(太宰は)常に自分を追い込んでいる」と賞賛する。太宰は井伏鱒二(千原せいじ)に小説家になるべく弟子入り。井伏は太宰の才能を信じていた。
太宰治のエピソード、彼の生きた時代、うまく織り交ぜて進行する。芥川龍之介を”崇拝”していた太宰は芥川賞を取ることを熱望していた。だが、ノミネートされるも落選。乱れた私生活、彼なりの純粋さと繊細さ故であることが言動からうっすらと見えてくる。薬を飲んだりする。一時は井伏の仲人により結婚するも長く続かなかった。
波乱万丈な人生を駆け抜けた太宰治、それを取り巻く人々。その誰もが、太宰治を愛していた。小山初代、津島美知子、太田静子、山崎富栄ら女性たちとの出会い、文豪仲間、2幕もの、友情、恋愛、生き方、自分らしく生きた男の生涯、虚実交えての物語。太宰が実際に通った銀座のバーは「ルパン」、そこの椅子に座る太宰治の写真が実際に残っているが、ラストにはそれを再現して中央に映し出され、それを皆が見上げる、温かい眼差しで。サブタイトルは”文豪たちの青春”、全力で駆け抜けた太宰ら、愛おしさとそして自分に正直に生きた姿に共感。主演の内博貴ら、若手の頑張り、そしてなべおさみや千原せいじ、湖月わたる等、ベテラン勢が脇をしっかりと固める良い座組。温かさに満ちた作品であった。
<概要>
公演名:檀一雄 「小説 太宰 治」原作より
浪漫舞台『走れメロス』~文豪たちの青春~
原作:檀一雄「小説 太宰治」
脚本/演出:モトイキ シゲキ
配役/出演:
太宰 治:内博貴
小山初代・太田静子<二役> :谷村美月
檀 一雄:室 龍太(関西ジャニーズJr.)
井伏鱒二:千原せいじ
山崎富栄:山口真帆
節代夫人(井伏の妻):黒田こらん
柿野要一郎(太宰の甥・画学生):吉田大輝
津島美知子(太宰の妻):苅谷瑠衣
芥川龍之介(作家・亡霊):原 慎一郎
津島文治(太宰の長兄):藤井びん
高橋幸雄(作家):石井智也
山岸外史(作家):優志
マダム雪子(銀座のバーのマダム):湖月わたる
山崎晴弘(富栄の父・美容学校校長):なべおさみ
<東京公演>
日程: 2020年9月5日(土)~9月13日(日)
会場: ヒューリックホール東京
<名古屋公演>
日程: 2020年9月22日(火・祝)
会場: 名古屋市公会堂
<大阪公演>
日程: 2020年9月25日(金)~9月27日(日)
会場: 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
主催: 浪漫舞台「走れメロス」公演実行委員
公式サイト https://roman-melos.com/
公式Twitter https://twitter.com/roman_melos
取材・文:高 浩美(シアターテイメントNEWS)