原作は1980年から「3年奇面組」として、1982年からは「ハイスクール!奇面組」として週刊少年ジャンプに連載された学園ギャグ漫画の金字塔。1985年にはTVアニメ化され、テーマ曲を歌った「おニャン子クラブ」から派生したアイドルユニット「うしろゆびさされ組」のブレイクもあって一世を風靡した。
そして2017年に舞台化の発表の際は “まさかの舞台化”と言われ、話題騒然。初演では劇場を爆笑の渦に陥れ、それを受けて第二弾を2018年に上演、そして遂に第三弾!が2020年11月に上演されることになった。今回は修学旅行編、秋なので『Go To Travel』、ここでどんなハプニングとドタバタが繰り広げられるのか、第一弾から演出を手がけている、なるせゆうせいさんと第二弾から春曲鈍役で“参戦”している宮下雄也さんに舞台「ハイスクール!奇面組」の面白さや役創りなどお伺いした。
――初演の手応えについてはいかがでしょうか?
なるせ:最初にビジュアルを出したときには反響はありましたよね。そもそも舞台化をできなそうなコンテンツと言われていたので。なだぎさんにもTwitterでつぶやいてもらったりもしていたし、(反響は)かなりあったと思います。
――平野さんに至っては原型をとどめていないですものね。
なるせ:ビジュアルを出すときの話なのですが、俳優さんのイメージがついてしまうのでアー写を出さない状態でキャラクタービジュアルを出そうと考えたんです。ちゃんと作り上げた状態で出したほうが、お客様としても比較のしがいがあると思ったので。そこを意識していました。
――実際に舞台が開いて、盛り上がりましたよね。特にこの漫画を見ていた世代の方々からは注目されたと思っていますが……。
なるせ:なだぎさんはど真ん中の世代でしたしね。ザ・ドリフターズ感というか、昭和のドタバタ感はすごくいいなと思っていたので大事にしました。そこに手応えを感じて第二弾、第三弾やりたくなりましたね。
――キャストも続行する中の第二弾で、(宮下さんは)登場されたんですね。
宮下:春曲鈍役です。
なるせ:ちょっとぽっちゃりだよね(笑)。
宮下:次は絞りますから(笑)。
――身体を張ったギャグが多かったですよね。
宮下:コメディ舞台って難しいんです。小手先でやったら通用しないですから。本気で……今日この舞台で死ぬ気でやるくらいでないとダメなんです。なだぎさんのような笑いに対してテクニックのある方だと違うのかもしれませんが。やっぱり『奇面組』って歴史のある作品ですからね。そこで舞台やる、しかもどストレートなコメディって、とても難しい。思いっきり、それこそ「戦(いくさ)に出る」くらいでないと成り立たないですから。
なるせ:役者は疲れるだろうな、と。アクションものとは違ったエネルギー、体力的なものとは違ったエネルギーを消化しますからね。
宮下:めちゃくちゃしんどいんですよ。なぜか全身が痛い(笑)。殺陣の舞台とかより体力を消耗しますよ。
なるせ:違う筋肉とか、違う脳みそ使っている感じですよね。
――本当に、二次元で繰り広げられた不思議な動きを生身の人間でやっていましたから……。
なるせ:ハケのギリギリまでちゃんとやらないといけない。
宮下:ハケても叫んでましたから。舞台の外まで舞台です(笑)。
なるせ:稽古場も毎回ちがうというか、面白かったんです。笑いって「鮮度」があるので稽古しすぎても面白くない。稽古場でもみんな「仕掛けて」くるからぜいたくな稽古ですよ。
宮下:なるせさんは台本(上げるのが)めちゃくちゃ早いんです。今回の舞台でも大枠自体はすぐにできていて。でも「」だけ書かれていたのは何なんやろなと思ったら「なにか一言どうぞ」って。何やねんこれ!って(笑)。そんな台本見たことないですよ。
なるせ:そこは役者さんに託してみようということなんです。そういう力量のあるキャストが揃っていますからね。
――今回は「修学旅行編」ですね。最初から普通できないエピソードだらけでした。
なるせ:今回は修学旅行編でも結構ミックスしていて。本来出てこない鈍ちゃんも出てきますし、エルザも入ってくる。昔の、昭和の我々の気持ちを体現したような感じに仕上げています。枕投げとか。あと、ちょっとドキドキするような恋愛エピソードも入れています。
宮下:なるせさんがもともと持っている面白さがこの『奇面組』とめっちゃ合っているんです。時間を感じさせないくらい観やすいと思いますよ。今回が初めてのキャストもいますよね。
なるせ:少し入れ替えもしているんです。特に井深克彦さんとか。ガチです。
――昭和の70年代から80年代にかけてのドタバタコメディがベースになっていますよね。この時代のギャグってほどよい品のなさのようなものがありますよね。
なるせ:子供が見ても楽しめるんですよね。
宮下:今はコンプライアンスというか、何やっても叩かれてしまうじゃないですか。『奇面組』なんか今やったら炎上の連続ですよ(笑)。
なるせ:お行儀が悪い人ばっかり集まっているからそれはそれでいいんです(笑)。
宮下:今回、キャストのオーディションをしたんですよね?
なるせ:したした。よろず組(アンサンブル)はオーディション。あと物星大(井深克彦)はオーディションじゃないけれど、周りのメンツはオーディションです。
――なだぎさんは強烈ですよね。
なるせ:なだぎさんはバランスがいいんですよ。どこにでも溶け込んでしまえる。『フラッシュダンス』にも『奇面組』にも違和感がない。年上なんですがYouTubeやTikTokなどいろんなものにも挑戦していますからね。前回は一堂啄石と犬のラッシーもやってもらって(笑)。なだぎさんに限らず今回の第三弾はみんなが集まったドタバタ感を出していこうかと。
――みんなでやるってところが昭和のイメージですよね。
なるせ:みんなが仕掛ける側だから、個人的にはいちばん楽しい稽古場じゃないかと思っています。今って笑いを制限される部分が多くて。その制限をすべて解き放ちたいくらいにしたいんです。
宮下:舞台だから別に制限しなくてよくない?って思いますよね。
なるせ:みんないい意味でロックな心を持っているんですよ。
宮下:この舞台って体当たりコメディなので。同じ台本でも、毎度毎度公演が違ったものになるんですね。ハプニングみたいなものももちろん起こります。誰かが暴れすぎて装置がずれたり(笑)。キャストがみんな、それをリカバーできるくらいの力量も技術もありますから。最近わかったことはアドリブが毎回違うことが面白いというよりは、面白いものって何度やっても100回やったとしても例外なく面白いんです。それがこの『奇面組』という作品には詰まっているので、ぜひ観に来てほしいですね。
なるせ:アドリブをヘタにやると、足し算になってしまって尺がどんどん伸びてしまうだけなんです。面白いものをバシッと面白くすることってそれなりの力が必要になってくるんですよ。(一堂零役の)平野良と宮下雄也という組み合わせが結構好きで。いい化学変化を起こしてくれるんですよ。最初は警戒し合っていたみたいですけどね。『ハンサム落語』からいい感じです。
――アンサンブルの方々がどんな活躍をしてくれるのかも楽しみです。
なるせ:アンサンブルも面白い経歴持っていたりするんですよ。韓国でアイドルやっていた人とかね。稽古場から面白いので、全力でやってもらいたいなと。『奇面組』って人気ありすぎて長い間連載されていた作品ですから、まだまだやれます。
宮下:伝説の「夢オチ最終回」やってほしいですね。
なるせ:当時賛否両論だったんだよね(笑)。僕はいいと思うけどなぁ。
――読者にメッセージを!
なるせ:本当に「笑い」すらも制限しなければならない風潮の中だからこそやる意味があるのかな、と。それを凌駕するものをエネルギーあるみんなで全力でやりたいなと思っています。ぜひ観に来てほしいです。
宮下:今年はいろんな業界で「コロナ」ってついてまわると思うんですけれど。やっぱりいちばんムカついたのは「舞台なんかいらんやろ」ってSNSで書き込まれていたこと。でも、そういう人にこそというよりチケット代出すから観に来いと言いたいです(笑)。役者って「不要不急」のものじゃないんです。エンターテインメントってどんなときでもあるものなので。この舞台をもってそのことを証明したいなと思っています。ぜひ観に来てください!
――ありがとうございました。公演を楽しみにしています。
<関連記事>
[第二弾公演]
https://theatertainment.jp/japanese-play/10396/
https://theatertainment.jp/japanese-play/10571/
[第三弾公演]
https://theatertainment.jp/japanese-play/62506/
10月17日(土)10時よりチケット一般発売開始!
<公演概要>
公演名:「舞台『ハイスクール!奇面組3』~危機一髪!修学旅行編~」
公演期間: 2020年11月18日(水)~11月23日(月・祝)
公演会場: 草月ホール
チケット情報: 一般発売 2020年10月17日(土)
原作:新沢基栄(集英社文庫コミック版)
脚本:田中大祐
演出:なるせゆうせい(オフィスインベーダー)
出演:平野良・寺山武志・もう中学生・高木晋哉(ジョイマン)・井深克彦/和田まあや(乃木坂46)・西田薫子/ 宮下雄也/なだぎ武ほか
企画・製作:2020舞台「ハイスクール!奇面組3」製作委員会
★公式サイト: https://kimengumi-stage.jp/
★公式Twitter: https://twitter.com/kimengumi_stage (@kimengumi_stage)
チケットに関するお問い合わせ先:キョードー東京 TEL0570-550-799 (平日11:00~18:00/土休日10:00~18:00)
公演に関するお問い合わせ先:東映ビデオカスタマーセンター
TEL0120-1081-46 (受付:月曜〜金曜10:00〜13:00、14:00〜17:00(土・日・祝祭日を除く))
著作権表記:©新沢基栄/集英社・2020舞台「ハイスクール!奇面組3」製作委員会
取材・文:高 浩美
構成協力:佐藤たかし