10月に東京、大阪で開催される朗読劇『さらば黒き武士』の稽古が始まっている。
本作は北村有起哉、如月蓮、山本一慶の3人によって繰り広げられる、織田信長のサムライとなったアフリカ人・弥助と彼を取り巻く人間模様を描いた作品だ。
稽古場はソーシャルディスタンスの観点から、間を大きくあけて席についている。ひととおりの挨拶の後、演出を手掛ける藤間勘十郎から「一度通しましょう」と、読合せが粛々とスタートした。
読合せはそれぞれの机で行うもので、声量も比較的おとしめ、試しながらセリフを読みあげおのおのペンで書きこんでいく。
そんな中で如月は背筋をピンと伸ばし、本番さながらの声量で読み上げる。すでにカッコイイ村雨が存在していた。読み人と村雨、何役かこなすというが、彼女の生命力にあふれた声と和楽器との調和に期待が高まる。
森蘭丸役を務めるのは山本一慶、やわらかでしっとりとした蘭丸が印象的だ。蘭丸の心の声や説明セリフも多く、一語一語かみしめている様子。以前の朗読劇で足がしびれたハプニングを振り返り、今回はもっと動きをつけようと本の持ち方から追ってディスカッションが行われた。
そして織田信長を演じる北村有起哉、信長の第一声が雷のように響き渡りその貫禄に一同びっくりする場面も。北村は信長と弥助の2役を演じるというが、弥助は来日したばかりの外国人。北村はニヤリとしながら2役をこなしていく。セリフのやり取りもある2役をどう演じ分けるのか稽古ではその全貌は分からず、本番が待ち遠しい。
ひととおり読み終わると、発音や読み方のチェックが細かく行われた。船頭(せんどう)、千石(せんごく)、主は“あるじ”なのか“ぬし”なのか等々、各自メモを取る姿がみられた。
美声の3人が音楽と舞とどう融合していくのか楽しみに待ちたい。
出演者からのコメントが届いている。
【北村有起哉】
昨年、宗家との舞台『怪談 牡丹燈籠』の時は稽古期間がとても短かったので嵐のような日々でしたが、宗家のひらめきや、みんなを引き連れる馬力と統率力が止まらないという印象でした。
固いイメージをお持ちの方が多いと思いますがお人柄はとても柔らかい方で、冗談を言っても一緒に笑ってくれますし、いま一緒に楽しんで稽古をやらせてもらっているところです。
(信長、弥助、2役演じることについて)
そうなんですよ。大変だと思いますが割と何とかなるという性格で(笑)。お客様は最初困惑していて、どういうことだろう?と食いついてくると思うので、それはもちろん計算のうちと言いますか、そういうことかと許して理解してくれれば聞こえ方が変わってくるんじゃないかと。2役のさじ加減をどうしていくか、宗家のアイデアを頂いてできたらなと思っています。
今回は朗読なので声の張りとかちゃんと意識しつつ、上手な声優さんのようにチャレンジしてもいいのかなと。 顔ぶれも三者三様、色々な世界から集まってきていて、それも見どころのひとつだと思っています。主催と宗家のお人柄でこの組み合わせが実現していまして、なかなか無いことです。そういう部分でも面白がっているところがありますね。普通の朗読劇になりっこないと思っておりまして(笑)、僕もどこに連れて行かれるかわかりませんが、一緒に連れて行かれた先の風景をみんなで味わいたいなぁと思っています。
【如月蓮】
3人で作品を作ることが私にとって初めてなので、とても緊張しております。膨大なセリフの量、そして情景描写をお客様にどう伝えたら良いのだろうと、ワクワクしながらも挑んでいます。
(くノ一・村雨役を演じることについて)
読めば読むほど、毎回違った感覚を得られ、回数を重ねていくうちにどんどん奥を知りたくなる想いが沸き上がってくるので、その想いを落とし込んで、表現していけたら。はじめ村雨がくノ一という印象で自分と似ているかな?と思いましたが、かなり純粋な心を持っていて、誰よりも女性らしい人なんです。強くて愛するものを守りたいという気持ち、スジを通すところ、女性が憧れる女性像だなと感じました。くノ一を意識するというよりは、村雨の境遇や背負ってきたもの、一人の女性としてどう生きてきたんだろうと、いま一番興味がありますし、追求していきたいですね。
そして楽しみなのは音楽!和楽器の特に鼓とかが鳴るとシャキーンとしますよね。緊張感も集中力も高まると思うんです。演じながら生で感じられるのはとても嬉しい体験です。
あと台本の中に有名な唄が書かれていたのでそれをどう表現するのだろうと!本番をお楽しみにしていてください。初めてだらけですが、勘十郎先生とは宝塚歌劇団に在団中、何度かご一緒したことがありますので、全部お任せして、私ができることは全部やりますという意気込みで臨みたいと思います。
【山本一慶】
短い時間で完成させる作品なのでハードルは高いですし、難しいことに挑戦すると思っていますが、とても楽しい経験になるのではとワクワクもしています。
(宗家とは2015年の舞台『南総里見八犬伝』以来の作品です)
5年前の時は汗しかかいてなかったという印象です。本番中はあまり動けず足がしびれてしまったり、色々なことがありました。今回は自分の良さをより出せる作品にできたらと思っていますね。
(蘭丸といえば色々な解釈がある人気役、今回弥助がいることでまた違った雰囲気をまとっていますね)
そうですね、最初に台本を読んだ時の印象は、良かった、悪かった、心配だ、など思った感情がダイレクトに出る純粋な蘭丸だなと。純粋に演じてみたいです。とにかく本が素敵で、しかもこのお二人と朗読させていただくのは素晴らしい挑戦です。楽しんで観ていただける作品だと思います。
3人で美しく磨かれていく朗読劇『さらば黒き武士』は、10月24日の大阪と、31日の東京で上演。
チケットは好評発売中。
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山本一慶 ・ 如月蓮 ・ 北村有起哉 演出/藤間勘十郎(宗家藤間流 八世宗家) 朗読劇『さらば黒き武士』 東京・大阪にて上演
<物語>
天正九年(1581)二月――森蘭丸は主君・織田信長の許を訪ねた宣教師に連れられた黒い従者に出会った。 日本で親しまれやすくするために「ヤスケ」と名付けられたこの黒人を大層気に入った信長は、彼を宣教師から譲り受けると、 名を「弥助」と改め、召し抱えることとした。
これよりは汝は武士ぞ。励め」と声をかける。 ここに「黒き武士」が誕生したのだ。
弥助に馬術や武芸、武士の作法や信長に仕える心得等を教えるよう命じられた森蘭丸は、弥助との交誼を重ねてゆく。 ある夜、信長を襲った忍者の中に、見知った瞳を見た弥助。それは日本に渡る船の中で出会った混血の少女のものであった。 言葉を交わしたわけではないが、いつしか激しく惹かれあう二人。 船が着けば終わりの来る淡い恋心。 別れて数年、伊賀のくノ一・村雨となった女と、敵味方となっての再会であった。
信長への忠心と友情で固く結ばれた蘭丸と弥助であったが、現世は真に無常である ――天正十年六月二日、本能寺で明智光秀の急襲を受けた信長・蘭丸・弥助の三人、そして村雨は紅蓮の炎の中、 それぞれ別れを告げてゆく……。
<公演概要>
令和2年度(第75回)文化庁芸術祭参加公演
朗読劇「さらば黒き武士」
原作(光文社刊)・上演台本:岡本さとる
演出:藤間勘十郎
出演:
森蘭丸: 山本一慶、
くノ一村雨: 如月蓮、
織田信長: 北村有起哉
鳴物: 望月実加子
公演日程会場:
大阪公演/2020年10月24日(土) 12:00 メイシアター中ホール
東京公演/2020年10月31日(土) 12:30 浅草公会堂
※上演時間:1時間40分予定(休憩なし)
チケット:
9500 円(全席指定・税込) ※9月16日(水)10 時~ 一般発売
チケット取扱い:
◇アーティストジャパン 03‐6820‐3500 https://artistjapan.co.jp
WEB 申込はこちら ►►► https://artistjapan.tstar.jp/
※セブンイレブン(店頭)、ファミリーマート(Fami ポート)でのお引き取りが可能です。
◇チケットぴあ 0570-02-9999【Pコード 503-247】 https://t.pia ※9/24 より大阪・東京公演ともに取扱い開始
◇浅草公会堂 03-3844-7491(9:00~17:00) ※東京公演のみ取扱い
※政府・大阪府・東京都のガイドラインに沿って新型コロナウィルス感染予防対策を行い、入場者数を制限の上、上演。
企画・製作:アーティストジャパン
WEB:https://artistjapan.co.jp/
稽古場写真提供:アーティストジャパン