新作ショウ『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』 代表取締役 吉田智誉樹 演出 荒木美保 会見レポ

劇団四季の新作ショウ『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』が1月10日開幕した。ライブ配信も実施、遠方で劇場に来られないファンも自宅で観劇できるようになっている。また、多くの楽曲を歌い、踊る。シンプルだが、新春にふさわしい明るい、賑やかなショウになっている。

公演後に会見が行われたが、コロナ禍での延期を経ての公演、「さらに思いが強くなったのが実感」と演出の荒木美保。さらに「みんなで語れる言葉を探した」「私たちの決意と祈りとお客様への感謝」「劇場で生きる思いを分かち合いたい」とコメント。
吉田智誉樹は「前の劇場のリニューアルですが、旧劇場は浅利慶太を中心に一生懸命祈りを込めて作りました。劇場と浅利慶太が作っていた仕事をしっかりと引き継いでいきたい」と力強くコメント。新劇場のテーマは「伝統と革新」、浅利慶太の志を引き継ぎ、時代の空気を読み取り、進化していく、現在の新劇場は旧劇場の良さを残しつつ、21世紀らしい新しい空気を感じ取れる。舞台も見えやすく、観客に優しい設計になっている。
また、ショウの合間に朗読される「ハングリー・キャッツ」(注)に関しては「まさに今の自分たちのもの」と荒木美保。この詩自体は『キャッツ』の初演の時に書かれたものだが、時を超えて響くものがある。荒木は演出は初めてであるが、ずっと浅利慶太の助手を務めてきたので「浅利慶太演出は熟知してる」と吉田。「ど緊張してました(笑)」と荒木。そこで吉田が「浅利慶太も初日は緊張してた」とフォロー的コメント。また、キャストも幅広く!大ベテランの飯野おさみ、青山弥生らがいる一方で入団2年目も一緒に舞台に!まさに”ブリッジ”状態。

ただ、このコロナ禍で「できるかな?」という思いがあったそう。公演がうてない時期が続いていた時は「(公演ができることは)当たり前のことではない」と痛感したと荒木。劇団四季に限らず、どのカンパニーも、いや世界中の人々が当たり前だった日常が当たり前ではないことを痛感し、日常が愛おしく感じているであろう。
荒木はダブルカーテンコールは「予想してなかった」といい笑いながら「袖に走りました!」と語る。「お客様が見るという行為で参加してくださっている」と吉田。ほぼ満席の初日「感謝しかない。足を運んでくださって見てくださるお客様には本当に感謝しかありません」としみじみ。コロナ禍以前には当然戻れない。吉田は「おそらく来年までは…(作品は)厳選しなくてはならない。年に1本は新作を、これは守っていきたい。海外作品はブロードウェイもウエストエンドも今は閉まっているのでいい作品の発掘は難しいですが…」とコメント。
しかし、コロナ禍は収束が見えない。まずは劇団存続が一番。国の補助金に関しては「この配慮には感謝しています」とコメント。

公演は2班に分かれ、しかも絶対に接触しない!という徹底ぶり(初日は飯野おさみを中心としたチーム)。完全に切り分け、マスク、しっかり、換気もしっかり!ダジャレじゃないが「(稽古場の)寒気が!」と荒木。

レトルトで販売した「劇団四季の100点カレー」についての質問。四季芸術センターの食堂で提供されているカレーを「お客様に」ということでレトルト化。値段は団員の立場によって変わり、劇団員が注文すると130円。研究生の場合は80円。吉田は「先輩が後輩に自動的に奢る仕組みです」といい、ちなみにレトルトカレーは絶賛売り切れ!「もっと生産できれば、コストは下げられる」とのこと。吉田は「(私は)一番高い値段で食べています」と語る。

新型コロナウイルスの蔓延により、2020年に劇団四季はクラウドファウンデイングを行ったが「15000人ぐらいの方からクラウドファウンデイングしていただきました。劇団を家族のように思ってくださって」と感謝の言葉が出た。

  このショウを創作するに当たって「言葉を大事にしたい。その人が何を思って発しているのか、そこが大事。最初にみんなで輪になって台本を持って、四季を目指した原点を話し合いました。今の自分たちの言葉を大切にした」とコメント。ここはショーの見所となるであろう。
売り上げに関しては四季に限らず落ち込んでいるが、「先の(春に行われた)宣言と違って仕事はしていいのはありがたい」とコメント。
「人が生きていることは素晴らしい」が一貫しての劇団のテーマ。これを幹にしてショーを構成、また新作については現状は「原作を探す」、だが、今後は創作も???なきにしもあらず。未来のことなので決まっているわけではないが、「人生賛歌」のテーマは劇団四季にとっては決して変わらない。

色調が上品な衣装で熱唱。スタンドマイクで!

(注)「ハングリー・キャッツ」 1983年『キャッツ』の公演プログラムに掲載された詩。この詩を作られたのは詩人の故・吉原幸子。劇団四季の一員で舞台にも立っていた。この詩を劇中に配置、随所で詩を朗読することによって四季の原点を表現。

<公演レポ>

新作ショウ『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』おなじみのナンバーが次々と!「人生の喜び」「生きる感動」を劇場から!

公演概要
<JR東日本四季劇場 開場記念作品>
『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』
【東京公演】
◇日程・会場:2021年1月10日〜2月11日 JR東日本四季劇場[春]
【福岡公演】
◇日程・会場:2021年3月14日〜3月28日 キャナルシティ劇場
【全国公演】
◇日程・会場:2021年4月16日〜 MAP

[クリエイティブスタッフ]
構成・台本:高橋知伽江(劇団OG)
演出:荒木美保(劇団四季/演出チーム)
編曲:宮﨑誠 (`19年『カモメに飛ぶことを教えた猫』作曲)
振付:振付 謝 珠栄、松島勇気
照明デザイン: 沢田祐二、赤崎浩二
舞台装置デザイン:土屋茂昭(劇団OB)
コスチュームデザイン:渡邉里花、丸山敬太(第6・7場)
音楽監督:浪江暢子(劇団四季/技術部音楽)

公式HP:https://www.shiki.jp

舞台撮影:荒井 健
文:高 浩美