柳広司の小説をテレビアニメ化した「ジョーカー・ゲーム」を原作とした舞台作品、 帝国陸軍の結城中佐によって設立されたスパイ養成部門・D機関で訓練を受けた若者の活躍を描くミステリー。 昨年5月に大好評を博した舞台版第1弾に続き、 第2弾。 D機関の面々と、 彼らと対立する諜報組織・風機関が諜報戦を繰り広げる、という内容だ。
物語の時代設定はキナ臭い、本格的な大戦に突入する前の昭和12年。ドイツはヒトラー政権、三国同盟が結ばれたのは昭和15年のことで、その前に昭和12年に日独伊防共協定が締結されている。これで、日本はイギリスやオランダとの関係は悪化、アメリカの対日感情も悪化することになった。そんな時代背景を押さえておくと、今回の第2弾は俄然、興味深くなる。
アニメ版の舞台化なので、楽曲やオープニングの曲はアニメ版と同じ。エピソードもアニメを視聴したことがあれば、おのずとわかる。幾つかの物語が重層的に提示されるが、こういった構成は舞台ならでは。「死ぬな、殺すな」がD機関、目立たぬように、それがスパイ。映像の使い方も印象的で、独特の世界観を創造する。舞台セットはシンプルだが、ダイナミックに動く。そこで繰り広げられるアクション、ここは見せ場。素性も明かさず、秘密は墓場まで。前回からのキャストに今回、新しくこの作品に参加した俳優陣、アクションの息もピッタリ。派手な衣装もなく、照明もきらびやかではないが、どこか惹きつけられる物語。スパイである前に人間、駆け引き、騙しあい、そこから垣間見えるもの、それは信念。
≪STORY≫
世界大戦の火種がくすぶる昭和12年秋、
帝国陸軍の結城中佐によって、 スパイ養成部門“D機関”が秘密裏に設立される。
機関員として選ばれたのは、 超人的な選抜試験を平然とくぐり抜けた若者達。
彼らは魔術師のごとき知略を持つ結城中佐のもと、
スパイ活動に必要なありとあらゆる技術を身につけ、 任地へと旅立っていく。
「死ぬな、 殺すな」——
目立たぬことを旨とするスパイにとって、 自決と殺人は最悪の選択肢であるとするD機関の思想は陸軍中枢部から猛反発を受けるが機関員達は世界中で暗躍し始める。
そんな“D機関”と真っ向から対立する、 帝国陸軍の精神を備え陸軍士官学校を卒業した生粋の陸軍軍人で構成され「躊躇なく殺せ、 潔く死ね」を掲げる諜報組織“風機関”が設立される。
「ダブル・ジョーカー」はいらない——どちらか失敗した方がスペアだ
諜報戦を制するのは、 一体どちらか。
【作品概要】
原作 TVアニメ『ジョーカー・ゲーム』/柳広司『ラスト・ワルツ』(角川文庫刊)
演出・脚本: 西田大輔
実井 役:木戸邑弥 / 甘利 役:山本一慶 / 田崎 役:奥谷知弘
波多野 役:松本岳 / 神永 役:才川コージ / 福本 役:前田剛史
蒲生次郎 役:君沢ユウキ / 風戸中佐 役:合田雅吏
アーネスト・グラハム 役:和興 / 白幡樹一郎 役:須間一也
逸見五郎 役:宮下雄也 / ヨーゼフ・ゲッベルス 役:村田洋二郎
ヘルマン・ゲーリング 役:岩澤晶範 / レニ・リーフェンシュタール 役:大湖せしる
三好 役:鈴木勝吾
結城中佐 役:谷口賢志
ほか
舞台『ジョーカー・ゲームII』 公式サイト
https://www.marv.jp/special/jg-stage/
主催:JOKER GAME THE STAGE PROJECT
(C) 柳広司・KADOKAWA/JOKER GAME ANIMATION PROJECT (C) JOKER GAME THE STAGE PROJECT
文:Hiromi Koh