新国立劇場の2021/2022年の舞踊のシーズンラインアップが発表になった。それに伴い、説明会が執り行われた。登壇したのは芸術監督の吉田都。
まずは吉田都から簡単な挨拶があった。
昨年の2020年は新型コロナウイルスの蔓延で様々な公演やイベントが中止になったが、新国立劇場も無論例外ではない。「就任から6カ月とは思えないような濃い時間を過ごさせてもらっています…(新型コロナウイルスで)こんなことになるなんて…稽古もできず、大変な時期でした」と振り返る。ダンサーは日々の訓練、エクササイズ、体調管理が欠かせない。だからといって手をこまねいているのでは前進できない。周知の通り、「ニューイヤー・バレエ」の無観客ライブ配信も実施された。それについては「世界とのつながりを感じました」と語る。配信のメリットは劇場から遠い観客やバレエを知らない、観たことがない、という方々にアプローチできること。到底、劇場に足を運べない海外の観客の掘り起こしは思わぬ収穫であったことは想像に難くない。しかし、やはりバレエなどの舞踊は劇場で観る醍醐味は何ものにも代えがたい。そのために「スタッフ・キャストのPCR検査を行っています」と吉田都は語る。「安全・安心にみなさまに楽しんでいただきたい」と力を込めてコメントした。
それから順番に作品についての説明があった。
『白鳥の湖』『くるみ割り人形』については「古典といえば『白鳥の湖』、1年一緒に仕事をして、ダンサーたちが私の求める表現方法を少しずつ感じてくれています。この作品ではより深い作品作りが目指せるはずなので、私も楽しみ」と有名だからこその作品への追求、「『くるみ割り人形』は定番、古典も進化していかなければ。ご家族で楽しんでいただける」とコメント。バレエをよく知らなくてもこれだけは知ってるという観客は多い。だからこそ、の定番公演、しかも年末年始の上演となる。
『吉田都セレクション』については2020/2021シーズンにて上演が叶わなかったもので、『精確さによる目眩くスリル』『ファイヴ・タンゴ』『こうもり』より「グラン・カフェ」の3演目。特に『精確さによる目眩くスリル』『ファイヴ・タンゴ』は新制作。『精確さによる目眩くスリル』はフォーサイスによる、クラシックバレエへのオマージュが込めら れたプロットレス・バレエ。「スピーディ」吉田都。クラシックバレエの型とテクニックが用いられつつもオフバランスと多重心 が多用され、ダンサーたちは身体の強靭さと限界までの柔軟さが要求される難易度の高い演目。また、『ファイヴ・タンゴ』は現代タンゴの傑作、ピアソラの『ファイヴ・タンゴ』を使用する。こちらは「大人バレエ、コロナの状況がどうなっているかわかりませんが、シャンパンを飲みながら大人たちに軽く楽しんでいただくようなトリプル・ビルに」と吉田都。公演は2022年2月19日から。
『シンデレラ』は新国立劇場のレパートリー公演。「観客の方々に身近に感じていただけるように」とコメント。日本では唯一、新国立劇場だけが持つ貴重なレパートリー。同じくレパートリーである『不思議の国のアリス』、こちらは2020年6月に再演予定であったが、コロナ禍であえなく中止になってしまったが、満を持しての公演となる。アジアでは唯一新国立劇場だけが上演を許可されている貴重な演目。
そして2020年に新制作し、好評であった『竜宮 りゅうぐう』の再演。
<2020年公演記事>
https://theatertainment.jp/japanese-play/57945/
また教育プロジェクトの第一弾として2022年5月に全幕上演が予定されている『シンデレラ』の舞台。このプログラムを通し、通常の公演では窺い得ない舞台転換の仕組みや、バレエ芸術の作られ方、作品解説、振付・ダンサーの技術などを 分かりやすく解説。初めてバレエを観るお客様やお子様にもバレエや劇場の魅力を知っていただき、舞台鑑賞を始めるきっかけとなることを目標としているが。無論、普段からバレエに親しんでいる観客にもアピール。
さらに新国立劇場バレエ団がコンテンポラリー・ダンスに出会い、自らの振付作品を発表する場である、新国立劇場バレエ団ならではのシリーズ企画「DANCE to the Future」。
今回は、2020年3月に上演中止となり公開できなかった作品や、21年6月に行うSHOWING(試演会)に出品された作品からセレクトして上演予定。2011年公演でバレエダンサーが踊るジャズ作品として好評を得た上島雪夫『ナット・キング・コール組曲』の再演も予定されている、とのこと。
そして『竜宮 りゅうぐう』の森山開次が手がけた『NINJA』を新しく創り上げるということで『新版・NINJA』とし、小劇場から中劇場へと場所を移しての公演。「新しく作り直していただく」と吉田都。
充実のラインアップ、吉田都の手腕とセンスが発揮されるシーズンになりそうだ。
<新国立劇場2021/2022 ラインアップ>
[バレエ]
「白鳥の湖」
2021年10月23日(土)~11月月3日(水・祝)
東京都 新国立劇場 オペラパレス
「くるみ割り人形」
2021年12月18日(土)~2022年1月3日(月)
東京都 新国立劇場 オペラパレス
「『ニューイヤー・バレエ』夏の夜の夢 / テーマとヴァリエーション」
2022年1月14日(金)~16日(日)
東京都 新国立劇場 オペラパレス
「『吉田都セレクション』精確さによる目眩くスリル / ファイヴ・タンゴ / 『こうもり』より『グラン・カフェ』」
2022年2月19日(土)~23日(水・祝)
東京都 新国立劇場 オペラパレス
「シンデレラ」
2022年4月30日(土)~5月5日(木・祝)
東京都 新国立劇場 オペラパレス
「不思議の国のアリス」
2022年6月3日(金)~12日(日)
東京都 新国立劇場 オペラパレス
こどものためのバレエ劇場 2021「竜宮 りゅうぐう~亀の姫と季の庭~」
2021年7月24日(土)~27日(火)
東京都 新国立劇場 オペラパレス
演出・振付:森山開次
エデュケーショナル・プログラム vol.1「ようこそ『シンデレラ』の城へ!」
2022年2月26日(土)・27日(日)
[ダンス]
新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future: 2021 Selection」
2021年11月27日(土)・28日(日)
東京都 新国立劇場 中劇場
小野寺修二 カンパニーデラシネラ「ふしぎの国のアリス」
2022年3月18日(金)~21日(月・祝)
東京都 新国立劇場 小劇場
構成・演出:小野寺修二
森山開次「新版・NINJA」
2022年6月25日(土)・26日(日)
東京都 新国立劇場 中劇場
振付・演出・アートディレクション:森山開次
出演:森山開次 ほか