世界初演・新作バレエ公演『竜宮 りゅうぐう ~亀の姫と季(とき)の庭~』永遠の愛、時の流れ、時代を超えて紡がれる物語

日本人なら、誰もが知っている「浦島太郎」、某携帯電話のCMでもおなじみだ。これが新作バレエになった。演出・振付は森山開次、そして衣装や美術も手がけている。23日、マスコミ向けの公開ゲネプロが行われた。
始まる前は舞台中央に玉手箱、絵本で見たことのある、あの玉手箱だ。物語は語る必要のないくらいメジャー、時の案内人が登場、物語の傍観者のような立ち位置。そして絵本で観たことのある浜辺、浦島太郎は亀を釣り上げる、その亀をいじめる子供、浜には”お約束”の松の木。

難易度の高いダンス、きちっとした群舞、冒頭で波を表現した動きを観ていると本当の波のよう。亀をいじめる子供は6人、ユーモラスで可愛らしい動きに思わず笑いが出てしまう。そして亀を助けた浦島太郎は竜宮城へ。
ところで、「浦島太郎」、現代で広く普及されている浦島太郎の御伽話は、明治から昭和にかけて読まれた国定教科書版に近い内容で乙姫との約束を破って玉手箱を開けてしまい、老人になって、そこで物語は終わる。これは生徒向けに約束を破ると悪いことが起こる、ということを伝えるために物語を短くしている。しかし、浦島子伝説・御伽草子では、浦島が釣って逃がした亀は乙姫の化身である。御伽文庫では、最後に浦島も死ぬ代わりに鶴に変身する。このバレエはこちらのストーリーに沿っている。
また、もう一つ重要な要素がある。それは”時間”。たどり着いた先は竜宮城、ここは時の流れのない楽園、浦島太郎にとっては、まさに夢のような体験、この竜宮城のシーンは1幕のハイライト、宴のシーンでは、様々な魚たちが!タイの女将、金魚の舞妓、音楽もちょっとエキゾチック、イカがなかなかにイカしたダンス(タンゴ!)を披露し、サメの用心棒など、ここは楽しい場面、そして大宴会で浦島太郎はお酒を飲んで上機嫌!

2幕では、太郎は竜宮城の「季(とき)の部屋」に入ってしまう。四季の美しさに見入る浦島太郎、これも御伽文庫に沿っている。ここでいわゆる『里心』が芽生えてしまう。ここのシーンも日本独特の四季、春の霞、天女が舞う、夏は祭りのイメージで男たちの群舞、秋は日本の秋の女神である竜田姫が登場し妖艶な舞いを冬は雪のイメージ、現代は季節感が薄れがちだが、ここで改めて日本の四季の独特の風情に気づかされる。そして・・・・太郎は浜に戻るが・・・・・なんと700年が経っていたが、これも御伽文庫に沿っている。

よく知っている”浦島太郎”、バレエにしたことによる見た目の斬新さだけではなく、この物語の奥深さに改めて気づかされる。「浦島太郎」という名前は中世の物語から登場し、それ以前の文献では「浦島子」の伝説として記録。8世紀に成立した『丹後国風土記』にある「筒川嶼子」「水江浦嶼子」は、浦島太郎の物語の原型と解されているが、今は21世紀、これだけ長きに渡って伝えられている物語、それだけ愛されている証拠であろう。そして、1918年にはアニメ映画にもなっている。
世界初の「浦島太郎」のバレエ化、新作、それを森山開次が手がける。バレエの動きだけでなく、日本舞踊やコンテンポラリーなど、ジャンルにこだわらない振り付け、衣装も細かいところにこだわりをみせる。美しい波、ユーモアたっぷりな魚たち、乙姫の亀の甲羅をイメージしたチュチュ、これだけ観ていても飽きない。また、プロジェクション・マッピング、照明による美術、波や水の表現、ここは技術の進歩を感じる。ラストの浦島太郎の”変身”、ここはビューポイント。
子供から大人まで、バレエ初心者からバレエファンまで楽しめる作品、繰り返し上演されて欲しい新作だ。

<新国立劇場:コロナウイルス感染症取り組み>
入場の検温やアルコール消毒はもちろん、来場者には名前、連絡先などの記入が求められる。そしてクロークはクローズドされているので注意。チケットのもぎりはセルフ。ロビーの飲食カウンターは休業、飲食は基本的に禁止となっている。ロビーのベンチは”ソーシャル・ディスタンス”、休憩用の椅子も間隔を開けている。座席も一つおきに座るようになっており、荷物がある場合は自分が座る隣の席に置くことが求められている。

<ものがたり>
【第一幕】
むかしむかし ある島に 浦島太郎という心の優しい青年がいました。
ある日、 浜辺で子ども達が亀を面白がっていじめるのを見た太郎は、 亀を助け、 海に逃してやりました。 その晩、 太郎は、 風を切り、 光を放ち、 大空を飛んでいる不思議な夢を見ます。 次の朝、 波の中から昨日助けた亀が現われて言います。 「お礼に、 竜宮城にご招待をさせてください。 」亀の背中に乗って、 いざ海の旅へ出ると、 波が二人を運び、 魚たちと光がきらめいて、 水と空の二重の風景が太郎を包んでいます。
この亀は、 竜宮城のプリンセスだったのです。 辿りついた竜宮城では楽しい宴が始まり、 美味しいお酒と料理、 魚たちの歌と踊りで太郎は厚い接待を受けます。 とりわけ亀の姫の舞は、 妙なる美しさでした。 心の優しい太郎に惹かれた姫と太郎は互いに心を寄せ合い、 恋に落ちます。
そして時は瞬く間に過ぎていきました。
【第二幕】
亀の姫と夢のような時を過ごす太郎は、 竜宮城に「季(とき)の部屋」があるのを知ります。
その部屋の四方の襖の向こうには、 それぞれの四季の庭が広がっていて、 四季の美しさを一度に堪能できるのです。 長い時間入ってはいけないこの部屋に「少しだけ…」と入ってしまった太郎は、 日本の四季に感動し、 故郷の美しさをあらためて思い出します。 我に返った太郎は「故郷に帰らなければ」という思いを亀の姫に伝えます。 泣く泣くその思いを受け入れた姫は、 玉手箱を太郎に授け、 別れを告げるのでした。 「この玉手箱は、 竜宮城に受け継がれてきた、 大切な宝の箱。 あなたへの愛の証をこの箱に閉じこめました。 でも、 決して開けてはいけません。 」
太郎は、 再び波に運ばれて海を進み、 気がつくと、 浜辺に倒れていました。
あたりを見回すと、 寂しげな気配。 そこは、 700年の歳月が流れた浜辺でした。 人影はなく、 老松だけが佇み、 子ども達の声も聞こえません。 途方にくれた太郎は、 抱えていた玉手箱を開けてしまいます。 すると、 玉手箱から煙が立ち上り、 みるみるうちに太郎は老人になってしまうのです。 年老いた太郎は、 涙しながら全てを受け入れて行きます。 「時の流れの中で生きる、 限りある命のこと」「すべてを産んでくれた偉大な母なる海のこと」を。 そして鶴に姿を変え、 大空に飛び立ちます。 風を切り、 光を放ち、 空を飛ぶ明神となった太郎。 「あの時みた夢は、 このことだったのか!」そこへ、 亀の神となった亀の姫があらわれます。 亀の姫は鶴の浦島太郎とともに、 この島の夫婦明神(めおとみょうじん)として、 未来永劫、 島の民の守り神となりました。

めでたし めでたし!

<公演概要>
新国立劇場 こどものためのバレエ劇場 2020
世界初演・新作バレエ公演「竜宮 りゅうぐう」
~亀の姫と季(とき)の庭~
芸術監督:大原永子
音楽:松本淳一
演出・振付:森山開次
美術・衣裳デザイン:森山開次
映像:ムーチョ村松
照明:櫛田晃代
音響:仲田竜太
振付補佐:貝川鐵夫/湯川麻美子
出演:新国立劇場バレエ団

公式サイト: https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/turtle-princess/

【公演日程】
2020年7月24日(金・祝) 13:00
2020年7月25日(土) 13:00
2020年7月25日(土) 19:00
2020年7月26日(日) 13:00
2020年7月26日(日) 19:00
2020年7月29日(水) 13:00
2020年7月30日(木) 13:00
2020年7月31日(金) 13:00
*託児サービスは当面休止いたします。
*開場は開演45分前です。 開演後のご入場は制限させていただきます。
*本公演は録音音源を使用いたします。

【会場】 新国立劇場 オペラパレス (京王新線 新宿駅より 1 駅、 初台駅中央口直結)

【主催】 新国立劇場
【後援】 渋谷区教育委員会 / 東京都公立小学校長会 / 東京私立初等学校協会
【特別協賛】 京王電鉄株式会社
【協賛】 株式会社 小学館 / コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社 / 三菱重工機械システム株式会社

【予定上演時間】 約2時間<休憩1回含む>

【全国公演情報】
〇2020年9月19日(土)14:00 長崎県/アルカスSASEBO 大ホール
お問い合わせ TEL:0956-42-1111
〇2020年9月22日(火・祝)14:00 富山県/オーバード・ホール
お問い合わせ TEL:076-445-5610

【チケット料金(税込)】
こども(4歳~小学生):2,200円  大人(中学生以上):3,300円
*アトレ会員割引を含め、 各種割引はございません。
*適切な間隔を保つため、 前後左右をあけた席配置(全指定席)といたします。

世界初演・新作バレエ公演『竜宮 りゅうぐう』公演実施について
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_017588.html

新国立劇場における新型コロナウイルス感染拡大予防への取り組みと主催公演ご来場の皆様へのお願い
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_017576.html

新国立劇場公式サイト: https://www.nntt.jac.go.jp/
新国立劇場バレエ団サイト: https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/nbj/
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舞台撮影:鹿摩隆司
取材:高 浩美