勅使川原三郎 新作ダンス公演「読書 本を読む女」”the lady who reads books” 6月24日~27日上演

ダンスとシアターXの空間がいざなう 読書する者の内面をめぐる考察

<3つの見どころ>
1、 コロナ禍の中、 エネルギッシュに創作を続ける勅使川原三郎の新たな舞台
2、 読書という行為に向き合うソロ作品から「読書する者」の内面を捉えるデュエットへ
3、 自由な創作を可能にする場所、 シアターXでこそ実現する勅使川原作品

勅使川原三郎と佐東利穂子はいま、 活動の拠点、 カラス・アパラタスでの創作、 また勅使川原が芸術監督を務める愛知芸術劇場における進行中のプロジェクトにも取り組んでいる一方で、 長きにわたり勅使川原三郎の仕事の多くを占めてきたヨーロッパでの活動は、 新型コロナウイルスの影響ですべて中止に。 これを国内での創[写真は「読書」2018年(カラス・アパラタス)より] 写真は「読書」2018年(カラス・アパラタス)より作活動に注力する好機と捉えた勅使川原は、次々と作品を発表、 アパラタスでの「アップデイトダンス」公演では年明けからわずか4カ月の間にすでに5つもの新作を発表、 その間に愛知芸術劇場では『ペレアスとメリザンドーデュエット版ー』の初演、 今回のシアターXでの公演は、 これまで以上に精力的に創作活動をしている勅使川原の注目の舞台。

[「読書」2018年(カラス・アパラタス)より]

勅使川原が今回のシアターXの公演のために選んだ題材は、 『読書』。 2018年11月、 アパラタスでの「アップデイトダンス」公演で初演した、 佐東利穂子のためのソロ作品をさらに深化させ、 勅使川原と佐東によるデュエット作品として改作上演。 本を読む女=佐東利穂子は、 さまざまな文学作品、 物語から抜き出されたいくつかの断片を誦じ、 やがて本の中へと没入していくさまをダンスで表現。 ドヴォルザークのロマンス、 弦楽セレナーデ、 コダーイの無伴奏チェロ・ソナタ、 イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタほか、 さまざまな音楽の響きをもって、 読書する者が辿る内面の動きに迫る──。 勅使川原の多彩な読書体験と身体感覚に基づいたものになる。

2013年以来、 勅使川原はシアターXでの公演を定期的に行っているが、勅使川原にとってこの劇場は、 より自由な創作ができる場所の一つであり、 その特徴について「一般的な機構の劇場のイメージとは異なる、 個性的な、 まるで大きさがあらゆるサイズに変わる部屋のような空間。 創作上の細やかな仕事を可能にさせ、 創作に集中することができる」と明かしてもいる。 本作品では、 自室で読書する人のイメージが表現される。

「読書 本を読む女」

密閉された本の頁を開く
暗闇だった紙面が明るくなり目が言葉に触れる
声が言葉を飲み込む
落ちるように本の中に吸い込まれる女
無時間の文字空間に身体を失い浮遊
動揺や謎をまとい 理解と無理解に遊ぶ
言葉と音調の密着と分離の繰り返し
読書を止めると沈黙に身体は掴まれ 現実に放りされる
静寂に押しつぶされるが 再び本に戻る
言葉の響きと透明の動きを重ね合わせて
自在に時間を伸縮変形させる
真空を呼吸しダンスする者

勅使川原三郎

<コメント>
[勅使川原三郎より ]

 アパラタスで創作した『読書』は、 読書する者について考察したダンスであり、 当初は佐東利穂子のソロ作品として上演しました。 オーストリアの作家、 ロベルト・ムージルの『特性のない男』を朗読する佐東の声を基調に、 想像をかき立てる様々な音楽を用い、 部屋の中で読書する者、 その読むという行為を客観的に捉えてダンスとして表現したものです。 今回、 新たにデュエット作品として上演するにあたっては、 読書する者に起こることを、 より主体的に捉えていこうと考えています。
 閉じられた本の中は暗く、 空気のない状態であるけれども、 一度開けば、 開かれたそのページには光が差し、 文字が目に触れる。 実際に声で発することがないとしても、 言葉は自身の声、 あるいは登場人物の声として響き、 音響が身体の内に広がっていく。 身体は次第に前のめりになり、 本の中に没入し、 落ちていくような感覚をおぼえる。 その身体は本の中に浮遊し、 徘徊し、 俯瞰し、 会話する──。
 ところが、 読書する者が本から離れ、 言葉が途切れ、 その響きがなくなると、 自由を削がれたかのようにその身体は固まり、 息苦しくなる。 現実の時間感覚に捕われ、 支配されてしまう。 つまり、 読書の中にいる時より、 現実のほうが不自由になってしまう。 しかし、 その状況は逆転し得る。 読書している時の感覚が、 読書をしていない時に再現されれば、 現実はどんどん豊かになっていく──。 そうも考えるのです。

[佐東利穂子より ]

 劇場にはその場所ごとに個性、 特徴があるけれど、 近頃はずっとアパラタスでの活動を続けていただけに、 シアターXの空間で公演をすることをとても楽しみにしていました。 というのも、 ここは創作に集中しやすい場所であるとともに、 舞台と客席との距離が近く、 そこを行き来することで作品の題材をあらためて見直したり、 新鮮な気持ちで見たり触れたりすることが、 比較的容易にできる場所なのです。
 今回の公演で『読書』を上演することが決まった時、 この作品とこの劇場とが空間的にとても合うと感じました。 けれど、 新たな『読書』の構想が見えてくると、 場所にまつわる事柄に留まらない、 何かが湧き上がってくるのではないかという期待感が高まったのです。

<概要>
勅使川原三郎 新作公演「読書 本を読む女」
構成・振付・演出・美術・照明・衣装:勅使川原三郎
出演:佐東利穂子 勅使川原三郎
日時:2021年6月24日〜6月27日
劇場:東京・両国 シアターXカイ
企画制作:KARAS
主催:有限会社カラス
特別提携:シアターXカイ
KARAS公式HP:https://www.st-karas.com
公式ツイッター:https://twitter.com/karas_apparatus