《インタビュー》舞台「キューティーハニー・クライマックス」脚本・演出:松多壱岱

2020年2月に上演され大好評を博した舞台「キューティーハニー Emotional」。 続く2020年9月には「The Live~秋の文化祭~」として、 スペシャルライブバージョンを上演。そして2021年6月に新作公演「キューティーハニー・クライマックス」が上演される。
原作は、 漫画家・永井豪の代表作の一つ、 「キューティーハニー」。 その原作の世界観をそのままに、芝居、アクション、 歌、ダンスが散りばめられ、 舞台観劇のみならず、 ライブ感覚もあるステージが特徴。主人公の如月ハニー/キューティーハニー(上西恵)は、原作にもあるキャラクターで誰もが知っていると言っても過言ではないスーパー・ヒロイン。そして、彼女と共に戦う舞台版オリジナルのハニー達が登場するのが大きな特徴の一つ。 山縣さつき/ジャンパーハニー(佐藤日向)、 天木弥生/スイーツハニー(西葉瑞希)、 水無月乙女/サイバーハニー(相澤瑠香(ラストアイドル))、 葉月マリー/ラブリーハニー(行天優莉奈(AKB48))。また、敵側のキャラクターも一癖も二癖もあり、しかも個性的。 初舞台化の経緯や舞台ならではのキャラクター誕生のいきさつ、今回のみどころなどを脚本・演出の松多壱岱さんにお話をお伺いした。

――キューティー・ハニーの舞台化の経緯、キャラクターの設定をお願い致します。

松多:もともとは永井豪 画業50周年突破記念に「キューティハニー」が再アニメ化されたタイミングで舞台化を検討していたらしいんです。その後、タイミングがあり「『キューティーハニー』やりませんか?」とお声がけいただきました。そして令和の時代に、キューティーハニーの舞台化をサンシャイン劇場でやることになりました。子供の頃から『キューティーハニー』が好きで、僕らの世代は観ていました。思い出がいっぱいあって、ドキッとするようなちょっとエッチな感じのものとか、すごく覚えています。だから決まった時は本当に嬉しかったですね。キューティハニーはたくさんのクリエーターによってリメイクされたり、実写化もされています。庵野秀明監督も『キューティーハニー』(2004年 主演:佐藤江梨子)を実写化されていて、変なプレッシャーを感じたりもしました。現実にありそうな設定を入れる庵野監督らしい作品でしたね。舞台はプロデューサーがミュージカル『美少女戦士セーラームーン』を手がけた方で、意識している部分はありました、きらびやかなガールズ舞台、2.5次元…キューティー・ハニーは一人だから仲間が欲しい、敵方っぽい謎のハニーも欲しい。そんなオーダーがありました。でもキューティー・ハニーって変身しちゃう、この前のアニメシリーズでは変身したら違う声優さんが演じていた。ただ、その方法だと、変身しても個体が増えるわけではなく、一人の人なので、基本的にドラマが生まれない。これは新しくハニーを作らなくちゃならないな、と。ハニーの能力を完全にコピーできるのだったら、まずは空中元素固定装置が必要。ただ、新型のハニーとしてはそれだけではダメなので、それとは別の能力も必要だと。そこから設定を思いついたっていう感じです。ちょっとアメコミ的な、マーベル系などの方が現代に合うんじゃないか?舞台映えするんじゃないかと。その辺からアイデアが湧き出し、色がはっきりした4人のハニーが生まれ、謎のハニー、ブラックハニーが生まれました。敵のパンサー軍団もハニーに合わせてマーベル系をモチーフにしたキャラクターを配置したりしました。

――それは今の時代だから、ということはありますね。仲間のハニーも今風、ITに強い子、甘いものが好きな子とか。

松多:ハニーを調べたら、ハニーが変身する姿は、当時女の子が憧れていた職業だったんですよね。スチュワーデス(注:現在のCA)とかに変身する。舞台版は変身する設定じゃないので、今時のコが好きな感じのハニーにして、大枠で、永井豪先生っぽい感じにできればなあと思って決めました。

――ヒール役のコも可愛げがあって抜けているところもあって。

松多:敵は強い時もありますが、キューティーハニーの原作もだいぶコメディ調のところもある、ちょっとおっちょこちょいなところがある、そういうのが乗っかれば。ただの善と悪の戦いにするだけじゃ、敵側にドラマが作りづらいですね。

――初演拝見して、そこが面白かった、あとはスィーツハニーがタピ活してたりして。もうしないと思ってますが(笑)。

松多:その暇ないですね(笑)、今回は全編クライマックスでやりきりましたね。すごい、やりきった脚本になっていると思います。

――初演の時はファンがざわつきましたね。それで実際に幕が上がった時のお客様の反響は?

松多:2.5次元舞台やるときは原作ファンの方の反応と、演者さんのファンの方の反応と色々意識する部分はあるのですが、永井豪先生の描くものはファンというよりも、すでにみんなが知っている、“キューティー・ハニーはこういうイメージ”っていうものがあって、それは意識しました。それと周りのサブキャラクターのミハル先生とか、永井豪作品のオリジナルキャラクターを出して、これは永井豪先生の作品なんだなって受け入れて頂けたと思います。舞台は、こういうのはありじゃないかなという雰囲気を感じました。

――実際に永井先生もご覧になっているんですよね。

松多:永井先生はちゃんと脚本を読んでくださっていて、すごくびっくりしました。稽古にも来ていただき、通し稽古も観ていただいて、「何かありますか?」と伺うと、「おお、いいよ、よかったよ」と。実は稽古が始まる前に、ダイナミックプロの新年会があって、そこにお伺いしました。永井先生とは初対面だったので、「演出をやらせていただきます松多です、お願いします」とご挨拶したら、「(脚本を)読んでいますよ」とおっしゃってくださり、すごく感激しました。僕は映像やスクリーンを使うのをト書きで書いていて、「あんなことできるの?今の舞台は。映像とかでこんなことできるの?今の舞台はすごいね」とおっしゃって…「読んでる!」と思って(笑)。概ね、何もおっしゃらずにニコニコして、すごく嬉しそうに帰られた。本番も観にこられて、「よかった」っていう雰囲気で帰られて、嬉しかったです。すごくありがたかったです。

――お墨付きの舞台化!

松多:そうなんですよ。本当にキューティーハニーって、漫画もいっぱいあって、すごいエピソードがあるんです。アニメシリーズだけで、4、5本はあるんじゃないですか?実写映画2本、ドラマにも1本なっていて、全部の設定が微妙に違うんです。学院生徒だったり、庵野監督のはOLだったり。如月博士は殺されていて、殺したのがジルっていう。そこはベースは一緒で、枝分かれが色々あり、敵側だって、いろんな敵がでてくる。改造されたものになっていたり…本当にいろいろ出てきて、舞台にするのは相当プレッシャーでした。設定的には、どれかの続き物に見えてはダメだなと思ってました。だいたいがジルとの戦いで終わっているので、その後の世界で物語を考えました。ジルを倒し、ゾラを追いかけて、凄まじい戦いがあった。そして都心が壊滅しゾラも姿を消した。10年後、ハニーが新たに目覚めて、ゾラたちも復活してくる。その10年の間に東京もパンサー軍団に対抗するためにアンドロイドを作った設定にしました。

――キャストさんはほとんど続投なさっていますが、皆さん、キャラクターにすごくハマっている感じがすごくあります。

松多:いつもとても楽しそうに演じてくれていますよね。上西さんは初めての殺陣だったんですが本当に頑張る子です。舞台は段差があって(衣裳の)ヒールも高くて大変なんです。「ヒール低いの準備しようか」っていうと「大丈夫です、大丈夫です」と言って、演じるたびにどんどん上手くなってきて、すごく頑張りましたね。キューティーハニーのキャラクター自体もいろいろあって、どこか純粋無垢で自分の色気に対しては無防備で。でも自分に魅力があることはちょっとわかっていてというコで……上西さんはそういう意味ではすごくそのままなんですよ。良い意味で普通で純粋なのがハニーっぽいですね。

――他の役の皆さんも、キャラクターにはまっていますね。

松多:他の子はみんな、オーデションなんです。この時点で設定もキャラクターもほぼ決まっていまして、そこにはめていったんですが、実際にその子を見て「この子はラブリーハニーにしよう」とか書いたりしてました。

――今回はアクションに次ぐアクションになるとか?

松多:はい。実は、第二弾(The Live〜秋の文化祭〜)が本当はストーリー仕立ての予定だったんです。細かく年表やキャラを設定してここでいろんなものを出す予定だったのですが、新型コロナの影響で稽古ができないのでライブ中心にしましょうという話になったので、ストーリー自体は回収ができていない。今回は、その回収と戦いが全て入っています。最後に向けて全部出し!みたいな。戦いもそうですが、ストーリーとか関係性とか謎とか。新キャラクターも二人いるんです。ゾラの最後の目的とか…そこは書くかなきゃ、と考えて作りました。殺陣は多いです、過去最高に多いかもしれない、やばかったです(笑)。またライブもやります。こんな時代なので、すごく明るく楽しくスッキリするもの観たいなって。過去のキューティハニーにリスペクトを込めて書きました。

――それでは、最後にメッセージを!

松多:初めての方は1、2弾を観ていないから大丈夫かな?と思われるかもしれませんが、そこは安心していただいて大丈夫です。ストーリーの設定やキャラクターとか、なんで戦っているのかなど、最初から丁寧に解き明かされていくようになっていますので、安心して3から観ていただけます。最初から観ている方には、怒涛のハリウッド映画みたいに起承転転転転結!みたいな!全編クライマックス、とその名の通りの構成です。濃い作品に仕上がっています。もちろん、ずっと観てきていただいた方には、いろんな謎が回収されている仕組みになっていますから、今まで追ってきてよかったな、と思える終わり方です。本当にこんな時代ですけれど、やっぱり生で観ることに素敵な価値があると感じているので、劇場で是非!足を運べないという方に配信もありますので!ご覧いただければなと思っております。

<物語>
パンサークローとキューティーハニーたちの戦いは苛烈さを極めていた。
そんな時、聖チャペル女学院に新任教師・氷川涼が現れ、ハニーたちを導く。
そしてパンサーゾラの元に堕天使オノケリスが姿を見せる・・・。
一方、ブラックハニーは最終決戦に向けて、訓練を重ねていた。
ゾラのアジト「幻城」の場所を突き止めたキューティハニーは、早見蒼と共に、幻城を急襲すべく乗り込んだ・・・!
しかし、そこで待っていたものは……?!

<初演レポ記事>
https://theatertainment.jp/japanese-play/49014/

<第2弾レポ記事>
https://theatertainment.jp/japanese-play/63625/

<概要>
原作:永井豪
脚本・演出:松多壱岱
[出演]
上西恵、 佐藤日向、 西葉瑞希、 相澤瑠香(ラストアイドル)、 行天優莉奈(AKB48)/松田彩希、 小林弥生、 白石まゆみ/生田輝/立野沙紀(劇団4ドル50セント)、 樹亜美、 古賀成美、 堀越せな、 長谷川里桃、
山崎紫生、 舞川みやこ、 黒澤ゆりか、 民本しょうこ、 香音有希、 田辺留依、 大橋ミチ子、 宮崎理奈/成瀬瑛美/青木志貴
日程・会場:2021年6月16日~20日 全8公演 シアター1010
公式サイト:https://cutiehoneystage.com/
問合:キョードー東京:0570-550-799 http://www.kyodotokyo.com/
(C)永井豪/ダイナミック企画・舞台「Cutie Honey Climax」製作委員会
舞台写真撮影(2020年2月公演) 平賀正明
構成協力:佐藤たかし
取材:高 浩美