『いつか〜one fine day』生まれ、生きて、そして旅立つ、粛々と生きていく。

2019年初演時、好評であったオリジナルミュージカル『いつか〜one fine day』の再演、メインキャラクターを演じる藤岡正明(保険調査員・テル)と皆本麻帆(交通事故で植物状態の女性・エミ)以外は新キャストとなっている。
物語の骨格は基本的に変化はないが、キャストが変わることによって、フレキシブルに”変更”、”再考”し、上演、これはオリジナルならではの強み。


主人公・テルが登場し、それから他の登場人物も舞台に出てくる。テルは歌う、「生きづらさは自分のせいか?」と。だが、この問いかけを自分自身にする人は案外、多いのではないだろうか。出てくる人々は、”どこかの誰か”、もしかしたら、自分のすぐ隣にいるかもしれない。
保険調査員・テルが、面倒な案件を押し付けられるところから物語は始まる。後輩が担当していたのだが、うまくいかない。上司は、この案件をテルに一任、後輩から資料を受け取る。交通事故があり、被害者の女性が植物状態に。加害者は会社の社長の知り合い、穏便に解決したい。サラリーマン社会ではありがちな話だ。これが実は、様々なことのきっかけとなる。


アウトラインは初演と同じでも、衣装やキャストが変われば、印象も変わる。全体的にシックな印象の衣装。植物状態で寝たきりのエミが突然、起きあがる。びっくりするテル、彼女の姿はテルにしか見えない。そして目が不自由だったはずのエミ、見えている!自由闊達に動き回る。やたらテンションの高いエミ、客席から思わず、笑いも起こる。実はテル役の藤岡正明とエミ役の皆本麻帆以外のキャストはコロスなど、いくつかの役割をこなす。テルとエミを軸にして舞台は進んでいく。そしてサイドストーリーも展開していく。この事故をきっかけに、登場人物たちの人生の1ページ(数ページ?)を垣間見ることができる。典型的な世渡り上手に見えるクサナギもあることを抱えていた。それを少しでも忘れるためなのか定かではないが、会社の仕事をこなしていく。後輩のタマキは正直、自分がどうしたいのかイマイチわからない様子、エミの友人、マドカ、トモヒコ、調査に非協力的だが、少しずつ何かが変わっていく。エミの母・サオリ、なぜ、娘を捨てたのか、登場人物たちが抱えている”何か”が少しずつ浮かび上がってくる。観るたびにちょっとずつ違った景色を感じる作品、また登場するキャラクターも初演と雰囲気が異なる。最後に皆、傘をさす。そして歌う。幕末とか戦国時代のような物語と比較すると、なんということもない、どこかにありそうな話であり、誰もが感じる部分が多い。雨の日もあれば、晴れる日もあり、曇ってスッキリしない日もある。それが日常であり、それは続いていく。夢がなんだかわからない、夢はあるのか、なんで生きているのか、何を信じているのか、人それぞれ、大概の人は答えが見つからないまま、日々が過ぎていく。それでも粛々と生きる。最後にキャスト全員が歌うナンバーが心に染み入る。あえて言うなら日常系ミュージカル、芝居も歌もうまい俳優陣、折に触れて再演を重ねて欲しい作品。
なお、全公演、配信されるので、劇場に行かれない方はこちらで!劇場で見た方も配信で違った景色が見れるかも、です。

<キャストコメント>
[藤岡正明(夏目テル)]

演劇業界に限らず様々な方面に大きな打撃がある中でこうして劇場に来て足を運んでくださるお客様がいるということに心からの感謝とまた、その感謝に応える強い決意と精一杯の情熱でこの作品に取り組んで参りたいと思います。是非劇場にてお待ちしております。

[皆本麻帆(樋口エミ)]

無事初日が開きました。本当にありがとうございました!あらためてお客様がいる状態で再演できる素晴らしさを本当に実感しました。まだまだ公演は続きますので、劇場でそして配信でもみていただけると嬉しいです!

[松原凜子(長門マドカ)]

「初日を迎えまして、今思うことはこの題材は重いのでみなさん真面目にかたく見てしまうと思うんですけども、なかなか伝えにくい事をミュージカルを通してお伝えできるのはミュージカル女優としていい仕事をさせていただいてるなという気持ちなので、明日からも頑張っていきたいと思います!」

[西川大貴(田亀トモヒコ)]

この作品は、お客様と一緒に物語を進めていくようなミュージカルだなと思っていたのですが、初日の舞台に立ってみて改めてそれを感じました。ぜひその瞬間、その日にしかないものを劇場で楽しんでいただきたいと思います。全公演配信がございますので皆さんの生活リズムやペースに合わせてこの作品を楽しんでいただけたらと思います!ぜひご覧ください!

[藤重政孝(クサナギ泰人)]

今回、誰もが避けれない「生と死」という重いテーマをミュージカルという音楽に乗せ、ポジティブなパワーに持っていける作品に仕上がってますのでぜひ皆さんのスタイルで、劇場に足を運んでくださるもよし、おうちで配信をご覧になられるもよしですので楽しんでください。我々も楽しんで表現します!

[大薮丘(タマキ豊)]

今回、このようなご時世に舞台ができるという事がほんとにもう幸せだなあと思っています。この舞台を見たら、心がすごく動くと思うので是非観て頂きたいっていうのと、とにかくこの作品を皆さまに届けたいと言うこと、そしていただいた「タマキ豊」という役を演じ切りたいと思います!

[浜崎香帆(夏目マキ)]

「無事に初日を迎えることができて本当によかったと思っています。千秋楽までワンステージ、ワンステージ大切に演じていきたいなと思います。こんな時期に演劇をやれていること、そして皆様に来ていただけることに感謝して、最後までこのカンパニーみなさんで頑張っていきたいと思います。」

[土居裕子(榎本サオリ)]

この命のテーマの物語がみなさんの心の中に優しくあったかく染み込んでいっていたらなーと祈るばかりでございます。是非いらしてください!

<インタビュー記事>
https://theatertainment.jp/japanese-play/80396/

<2019年初演レポ>
https://theatertainment.jp/japanese-play/26639/

<配信情報>

https://theatertainment.jp/japanese-play/80400/

<あらすじ>
保険調査員のテル(藤岡正明)は後輩・タマキ(大薮丘)の担当だった仕事を引き継ぐよう新任の上司・クサナギ(藤重政孝)から命じられる。それは交通事故で植物状態の女性・エミ(皆本麻帆)の事故の原因を調べるというもの。しかし、エミの代理人・マドカ(松原凜子)と友人・トモヒコ(西川大貴)は調査に非協力的で敵対。仕事が進まないなか、病死した妻・マキ(浜崎香帆)のことをまだ整理できずにいるテルに声をかけてきたのは、意識がないはずのエミだった。俄かには信じがたいと思いながらも自分にしか見えないエミと交流を重ねるうちに、事故の陰に幼い頃にエミを捨てた消息不明の母親・サオリ(土居裕子)の存在が浮かび上がってくる。

<概要>
日程・会場:2021年6月9日〜6月20日 CBGK シブゲキ!!
原作:映画『One Day』
脚本・作詞・演出:板垣恭一
作曲・音楽監督:桑原まこ
出演:藤岡正明 皆本麻帆 松原凜子、西川大貴、藤重政孝、大薮丘、浜崎香帆、土居裕子
演奏:桑原まこ(Key)、荒井桃子(Vn)、石貝梨華(Vc)、成尾憲治(Gt)
宣伝:Theatre at Dawn, llc
制作:横田梓水
制作助手:阿部楓
プロデューサー:宋元燮
後援:TBSラジオ
製作支援:SWING
企画・製作・主催:conSept
公式HP:https://www.consept-s.com/itsuka2021/