唯一無二のダンススタイルを持つダンスカンパニーDAZZLE(ダズル)の最新作『NORA(ノラ)』が2021年６月２５日から７月４日まで、あうるすぽっとにて上演。
最新作は、東京を舞台とし、身体能力を誇る男子新体操チームBLUE TOKYO（ブルートーキョー）と共に新しい舞台体験を構築する。音楽は林ゆうき。高校時代に新体操の選手となり、そのためのBGMの選曲から音楽に興味を持ち、作曲を始める、という異色な経歴の新進気鋭の作曲家。観客が物語の行く末を選択し、 刻々と未来が変化していくマルチストーリー。
２０１７年頃から建物一棟全てを舞台に行う「イマーシブシアター」に挑戦するなど常に独自の世界観を追求するDAZZLEは、2021年には東京での活動２５年目を迎える。
今回の作品はマルチストーリー。物語の舞台は未来の東京。舞台が始まる前から雑踏の音、音楽。舞台中央にソファがある。緑の公衆電話が鳴る。印象的な出だし。実はこの作品は観客参加型、配られるライトで舞台中央スクリーンに映し出される問いにライトの色で答える、その結果で物語が変わっていくが、一瞬、考えるような問いかけ。よって物語がどっちの方向に進むのかは、その日によって異なる。
国民を監査するシステムが張りめぐらされ、 国民監査局が国民の社会貢献度を査定。反社会的な行動を取れば劣等者、 行動制限、逮捕されることも。遺伝子、DNAは生命の設計図。その遺伝子を操作できる近未来、規制が厳しくなっている社会で、抑圧された中で生きる人々、その対極にある非現実的なオンラインゲームの世界、『東京C』。
独創的なダンス、動きで進行するストーリー、演者は基本的に声は発しない。だから想像力を掻き立てられる。この公演、DAZZLEだけでなく、新体操競技の経験豊富なBLUE TOKYO (ブルートーキョー)から６名が参加している。DAZZLEの独特のコンテンポラリー的な妖しくも大きく、あるいは細かくうねる予測不能な動きとBLUE TOKYOの直線的な一糸乱れぬフォーメーション、新体操の動き、これが舞台上に一つになり、この近未来の世界を印象強く、アーティステックに見せる。ここで出てくる遺伝子、食品でよく聞く”遺伝子組換え”、例えば、除草剤に耐性を持たせる、害虫に抵抗性を持たせる、など、つまり、農作物で言えば、人間に都合の良い作物を人為的に生み出すことができる。それと同じように人間にも…。人は世界を、命を、運命さえも作れるようになる、まさに、それは”神の領域”を人間の都合で恣意的に変えることができること。そんな近未来。テクノロジーと科学が発達したら、素晴らしい未来が開けるわけではない。ここで描かれている社会は、そんなテクノロジーが発達したにもかかわらず、不幸だ。平等と平和とは程遠い、現実。だから、配信停止となった”いわく付きの”オンラインゲーム。苦しいことがあると人は逃避する。抑圧されれば、その反動がある。現実と虚構が混沌とし、交錯、音楽がそれを彩り、その世界観は立体的に、有機的に観客に迫る。
刻々と変化する舞台上、大掛かりな装置などはない。究極のアナログ表現で紡ぐ近未来、時折、観客に問いかけ、”青”か”赤”かを選択させるわけであるが、ストーリーをマルチに展開させるだけでなく、その問いかけは、観客の持っている価値観や考えをも揺さぶる。そして音楽、無機質的であるが、目の前のパフォーマンスと溶け合い、より、作品世界へと観る者を没入させる。危うい世界は、どこへ行くのか、そこは劇場で。
＜ストーリー＞
かつて、 世界が人を作った。
やがて、 人は世界を作れるようになった。
命や、 運命までも。
だが、 理想を求めるほど、 理想から遠ざかる。
人は世界を作ることができても、
平等と平和を作り出すことはできなかった。
自由を求めて人々が逃げ込んだのは、 配信停止となった”いわく付きの”オンラインゲーム。
そこには、 秩序に縛られない人間の本性があった。
あなたの本性を、 あなたは知っていますか？
＜インタビュー記事＞
【公演概要】
公演タイトル：「NORA（ノラ）」
公演日時：６月25日（金）〜7月4日（日）
会場：あうるすぽっと
主催：キョードー東京
企画・制作：DAZZLE
物語の行く末に参加するかどうかは、 お客様の自由です。 参加希望の方は、 当日会場で無料貸し出しする、 自らの意志を示すための装置を劇中で使用して頂く形を予定しております。
演出・脚本：長谷川達也
振付：DAZZLE
音楽：林ゆうき
出演：DAZZLE（長谷川達也、 宮川一彦、 金田健宏、 荒井信治、 飯塚浩一郎、 南雲篤史、 渡邉勇樹、 高田秀文、 三宅一輝）
BLUE TOKYO（石塚智司、 大舌恭平、 佐藤喬也、 椎野健人、 石井侑佑、 植野洵）
公式WEB：https://nora-dazzle.tokyo/
撮影：飯野高拓
