《インタビュー》劇団こどもSET第3回公演 「世界中がフォーリンラブ」 演出 三宅裕司

劇団こどもSETとは、劇団スーパー・エキセントリック・シアターが未来のエンタメ界を背負う人材を発掘すべくアミューズ全面協力のもと、2018年に旗揚げ。対象は小学一年生から中学三年生まで。劇団SETのコンセプトである「ミュージカル・アクション・コメディ」を余すことなく子供達に継承し、作品も子供用に書かれたものではなく、本公演と全く同じ作品を子供達だけで上演する。今年、2021年は「世界中がフォーリンラブ」を上演。在籍数は50名、ここからキャスティングオーデションで選ばれた24名で上演する。この劇団こどもSETの公演について劇団を主宰し、そして演出を手がける三宅裕司さんにお話をお伺いした。

――劇団こどもSETは、演目も大人と同じですが、変えない理由は?

三宅:こどもと言っても小学校1年生から中学校3年生まで。年代としては結構幅が広いんです。コメディって教えるのはすごく難しくて。お客様の反応を見て自分のどこが悪かったかという経験をしないとわかりにくい。劇団こどもSETは前年に大人が演じた本公演の次の年にやっているので、お客様がどこでどんな反応をしているか、ということを知ってから挑めるんですね。大人たちの芝居を観ることは勉強にもなりますし、観た経験をお客様の前で実践できますよね。大人たちのときにはウケていたのに自分たちがやるとちょっと違うとか、そういうことが笑いの表現を身につける為のすべてプラスになるんです。さらに、大人と同じ台本をこどもがやるということで、それだけで違った面白さが生まれるんですよ。社長の役がこどもだと、大人のセリフを言っているだけですでにおかしかったりしますからね。最初にやったお芝居で、同窓会の場面から始まるのがあったんですが、「あんた随分、老けたねぇ」って、老けとは無縁のこどもたちがやっているのがすでにギャグ(笑)。こどもたちへの学び、そして新たなおもしろさという2つの理由ではじめたのが劇団こどもSETなんです。

――実際の、こどもたちの反応は?

三宅:まず、こどもたちにとっては会場にいるお客様全員から笑ってもらえるという経験がまず無い。その経験をさせてやることが大事なのかなと。例えば、先ほどお話しました同窓会のシーンで「俺、若くみえるけど今年で60だよ」っていうセリフで実際にドッと笑いが起きた。それは舞台上では初めての経験でもありましたから、そのあとの子が、その後のセリフを全部忘れちゃって。僕は客席にいたので気づいていましたけれど(笑)。それに、初日は関係者の方とかもたくさん来るし、応援してくれる人もすごくいるから笑いがすぐに起きるんですね。しかも先ほどの失敗ですらも笑いに変えてくれるような温かさがある。ところが2日目って、昨日ウケたところがウケない場合もある。そのことをこどもたちに伝えたらその通り、思うようにウケない。ウケることもそうでないことも、2日間に渡って経験させることができたというのはこどもたちにとっては間違いなく大きな財産になっただろうな、と確信しました。そのときはちょっとつらいかもしれないけれど。つらいからこそ、笑わせるためにものすごい演技を考えるわけです。どういう感じで言ったらいいのか、強く言ったらいいのか弱いほうがいいのか。お客様の前でやるとやらないとでは全然違いますから。稽古場でいろいろやっていいよ、というように進めているんですが、稽古場ではその子のキャラクターによって、台本を書き換えるという作業も実はしています。そのこどもに合ったセリフにしてやると、それがまたウケたりして。何しろこどもたちにとっては、その場で結果が出るというのが非常に大きい。その日に反省もできますし。

――そこは、お芝居、演劇ならではですね。

三宅:間違いなくここは昨日ウケたのに、今日はそうでもなかった原因はなんだろう?と考えますよね。実際、必ず原因が見つかるもので…ちょっと間が早すぎたとか。笑わせようとしているあざとさが伝わってしまったとか。それがわかるまでには本来相当時間がかかるものですけれど(笑)

――最後にメッセージを。

三宅:劇団こどもSET公演は今回が3作目。僕の方の反省もいろいろ踏まえながら、40年以上積み重ねてきたミュージカル・アクション・コメディーを、こどもたちなりにどこまで活かせる演出ができるかどうか。目標は、大人がやった本公演を超えたい。こどもたちの方が面白かったら大人たちにとってはショックかもしれませんけれど(笑)。でも、それくらいのことができそうな気がしているので。そこを目指そうと思っています。

――ありがとうございました。公演を楽しみにしています。

【ストーリー】
突如開かれた厚生労働大臣の会見。
「ある男女の体内から未知のウイルスが検出されました。このウイルスに感染しますと、誰それ構わず愛してしまいます」

世界中にあふれる感染者、広がる偽りの愛。
そんな混沌とした最中、大塚ポカリスと武田有奈は出会った。ポカリスは一目で恋に落ちるが、互いの置かれた立場が、2人が仲を深めることを邪魔する。
ポカリスの一途な愛は有奈の心を動かし、二人は駆け落ちを計画するのだが、そこには想像もしない悲劇が待ち受けていた。うさん臭い霊媒師の宜保無道の力を借り、二人は悲劇に立ち向かう。

ある日、研究員の一人がウイルスの正体を突き止める。
徐々に明らかになる製薬会社の陰謀、裏切り、愛。
世界はウイルスに勝利できるのか!そして、二人の恋の行方は…

<概要>
劇団こどもSET第3回公演 ミュージカル・アクション・コメディー「世界中がフォーリンラブ」
日程・会場:2021年8月13日〜15日 スクエア荏原ひらつかホール
脚本:吉高寿男
演出:三宅裕司
出演:劇団こどもSET
URL:http://www.set1979.com/perform/kodomoset3th/

構成協力:佐藤たかし
三宅裕司撮影:斎藤純二
取材:高 浩美