舞台「弱虫ペダル」の脚本、「ハンサム落語」シリーズの脚色・演出、「コジコジ」の脚本・演出、その他「ギャグ漫画日和」や「ハイスクール奇面組」など人気作品を手がけた劇作家・演出家、なるせゆうせいによる完全オリジナル作品、舞台『御手洗さん』が開幕した。
主人公の名前は御手洗(みたらい)アイ子(生田 輝)、御手洗(おていあらい)と書く。プロローグ、会社の面接会場、わたわたと大急ぎで登場する主人公、藁人形(?!)など大荷物。「御手洗(みたらい)アイ子です、おていあらいと書いてみたらいと申します」誰がどう聞いても、この面接、突破できるとは到底思えない(笑)。ところが後日速達(アイ子の彼氏、轢かれる!)で来た通知は「…でも採用」。ここからが始まるアイ子の“アドベンチャー”、オープニング。自己肯定感がめちゃくちゃ低いアイ子、想像できなかった就職、それなりに張り切って会社に!しかし、引きこもりが長かったせいか、早々にやらかす!その奇想天外な“やっちまった”が凄すぎ!!客席から笑いが!誰でも新人の頃は、失敗の一つや二つはあるものだが、アイ子の場合は“それは、ない、ない!”レベル。でも美を追求する会社に入ったアイ子は希望に燃えていた。そこへ配属された部署に上司が!緊張が走る!ビシッと整列する社員、そこへ現れたのは、かつて自分を徹底的にいじめ抜いた“あいつ”、忘れもしない、九頭竜冴子(佐武宇綺)!!颯爽と華やかに!真っ赤なスーツで!!
登場するキャラクターがとにかく、超絶面白可笑しい。彼氏の柏木くん(北乃颯希)はアイ子以上の引きこもりでゲームばかりしていて、自分が勇者と思い込んでいる、端から見れば、相当な底辺にいる。口うるさい大家(隅田美保)、会社の窓際族は、上司をよいしょしまくる係長(ヒッキー北風)に九頭竜冴子の無茶ぶりで数字あわせに苦労している経理の鶴賀竹一二三(錦織めぐみ)、面倒見のいいオカマの河原田たつお(寺山武志)、不思議な雰囲気の間抜田かすみ(富田麻帆)。この癖がありすぎる人たちが、アイ子の周りで、もう大変!そしてアイ子が就職した会社の社長・栄(吉田宗洋)、とにかく美しさをとことん追求する姿勢、これが突き抜けている!!このトンデモない人たちの荒波に!もまれにもまれて、もまれまくる!アイ子は、ジェット・コースターのような人生を歩むことに!!
このトンデモない人たちを演じる面々、はじけっぷりがおかしく、常識を逸脱(ひとりで複数役やる方も!)!発言、挙動、細かい笑いが随所に!アイ子も引きこもりが長かったせいで常識がないが、それを超えるくらいの!その中でアイ子はアップダウンが激しい人生を送る。急降下したり、乱気流に巻き込まれたり、かと思うとこれ以上ない高みへ昇ったり。基本、普通なら早々ないのだが、その奥底は実は現実世界と共通点もある。笑って、笑って、しかし、どこか共感できる。ミュージカルではないが、ところどころに歌が挿入される。宿敵・九頭竜冴子との再会で早速、いじめにあう。そこでアイ子は誓う、呪ってやる、人生を勝ち取ると歌う。自己否定の塊だったアイ子が前を向く瞬間。そんなアイ子、柏木といる時間は心地よかった。そんなアイ子の姿、客観的に見れば、一種のマウントかもしれないが、現実でもそれに近い場面は“あるある”。この社会の荒波、アイ子は無事に泳ぎきれるのか?という流れに客席は釘付け。
予定調和的な展開ではなく、本当に波乱万丈、それも九頭竜冴子までも!!しかし、現実も波乱万丈、人との出会い、その時の社会情勢、アップダウンしまくりの人生を送っている人も現実にいたりする。例えば、今、世界を覆い尽くしているコロナ禍も、ほんの数年前まで誰が想像しただろうか。そしてまさかの展開に四苦八苦している人も実際にいる。呪いの唄に出てくる、アイ子が体験したいじめもニュースでよく耳にする内容。そして、もう一つのテーマ、美しさとは?アイ子は自分がもう少し美しかったらな〜と思っていたが、美しさって?そして誰かのいいなりになることに疑問も持つ。アイ子の心が変化していく。そしてアイ子が最後に見る景色は?そこは劇場で、そして配信で。10月2日の2公演がライブ配信(アーカイブあり)があるので、そこでアイ子の行く末も見ることができる。
アイ子演じる生田 輝が全身全霊で演じるが、アイ子がまさにそこにいるようなライブ感。『御手洗さん』は現代の寓話かもしれない。
【あらすじ】
小さい頃から圧倒的にイジメられていた、みにくい御手洗アイ子(みたらいあいこ)は、いつも世界を呪っていた。
「ああ、この世はなんて不公平なんだろう。 こんなみにくい自分じゃなくて、もう少し美しさがあれば・・」
そう思いながら、引きこもり続けて早幾年。両親はもういない。さすがにこれはまずいと一念発起し、就職活動をし受かったのが、世界的有名な「美」を追求する会社。
こんなみにくい私が、こんな美を追求する憧れの会社で働けるなんて・・。
これからは恋に仕事に全力投球よ!
アイ子はこの会社で伸し上がろうとそう決意した矢先、上司と出会って戦慄し、おしっこ大量発射した。それは、かつてアイ子をイジメにイジメぬいたクラスのマドンナ、九頭竜冴子だったのだ・・。
自分を勇者だと信じてやまない底辺の彼氏、みにくいものにこそ美を感じる逸脱した社長、優しさの固まりだが酔うと人を殺すヤクザ、自分よりレベルの低い社員を仲間にする同僚、などなど一癖も二癖もある登場人物と社会の荒波の中で、果たしてアイ子は、究極の美を手に入れる事ができるのか?いや、できないのか?そもそも本当の美しさとはなんなのか・・・?
<公演概要>
舞台『御手洗さん』
脚本・演出:なるせゆうせい
日程・会場:2021年9月29日~10月3日 俳優座劇場
【出演】
生田輝 佐武宇綺 富田麻帆 北乃颯希 吉田宗洋 寺山武志 足立英昭 中江早紀 あまりかなり 錦織めぐみ 三本木大輔 ヒッキー北風/隅田美保
公式Twitter https://twitter.com/mitarai_2021
公式サイト https://www.mitarai2021.com/