2021年6月に緊急事態宣言の発出を受けて中止となった舞台『わが友ヒットラー』リベンジ公演、一部キャストを入れ替えて2022年3月に開催することが明らかになった。
『わが友ヒットラー』は、三島由紀夫の戯曲、全3幕。アドルフ・ヒトラーが政権を獲得した翌年に起こした突撃隊粛清(レーム事件、長いナイフの夜とも言われている)を元にした作品。1968年(昭和43年)に文芸雑誌『文學界』12月号に掲載、初演は翌年の1969年(昭和44年)1月18日、劇団浪曼劇場第1回公演として紀伊國屋ホールで上演された。
ヒトラーに厚い友情を抱いているナチスの私兵・突撃隊幕僚長のエルンスト・レームと、全体主義の移行のために「中道」姿勢を国民に見せておく必要から極右のレーム処分を考えるヒトラーとの対比を会話劇で描く。
物語の舞台は1934年(昭和9年)6月30日夜半の「レーム事件」前後のベルリン首相官邸の大広間。登場人物は、アドルフ・ヒトラー、エルンスト・レーム、シュトラッサー、グスタフ・クルップの実在人物の男性4人。
谷佳樹(アドルフ・ヒットラー役)
君沢ユウキ(エルンスト・レーム役)
桧山征翔(グレゴール・シュトラッサー役)
森田順平(グスタフ・クルップ役)
レーム事件とは、1934年6月30日,アドルフ・ヒトラーがSA (ナチス突撃隊) 隊長 E.レームなど党内の反ヒトラー分子,左派分子を粛清した事件で、「ナチス第二革命」とも「六月三十日事件」とも言われる。ヒトラーに次ぐ権力者のレームを排除することによってヒトラーの地位は確立された。
またナチスは1928年以来、同性愛者を党の敵と見なしていたが、レームは公然たる同性愛者であった。彼は同性愛を罰する条項の刑法175条の撤廃を主張していた。ヒトラーはレームは重要人物だったので、同性愛行為を黙認していたが、レーム事件後は彼の同性愛を激しく非難するようになった。この三島由紀夫作品『わが友ヒットラー』ではレームはあくまでヒトラーを友と信じる右翼軍人として描かれている。
また、グレゴール・シュトラッサーは1921年ナチス党に入り、1923年のヒトラー一揆(いっき)に参加、ヒトラーの入獄中党の再建に努めた人物。1932年末、シュライヒャーの右翼連立政府への参加をめぐりヒトラーと対立、党内の職を失い、1934年6月レーム事件で粛清される。グスタフ・クルップは、クルップ家の第4代当主でドイツ・エッセンの石炭・鉄鋼・兵器コングロマリット・クルップの会長を務めた。第二次世界大戦後、グスタフ・クルップはニュルンベルク裁判の被告人として起訴、だが、この時点では高齢で寝たきりだったため、公判に耐え切れないものとして起訴を取り下げられた。
【演出 松森望宏コメント】
いよいよCEDARに三島由紀夫作品が登場します。
本作品は2021年1月に上演予定でございましたが、コロナ禍における緊急事態宣言発令のため延期を余儀なくされ、満を持しての延期公演になります。
第一次世界大戦、世界恐慌を経て、凌辱されたドイツ国民の代弁者となるべくすべてを抱え悪性腫瘍が増殖するように民衆の心に忍び寄るナチス党。民衆の抑圧の負のエネルギーの中から登場した怪物アドフル・ヒトラー。そのヒトラーが総統になる前夜、彼の心の中には何が起きていたのかを鮮烈に描き出した三島由紀夫の一大傑作です。
ヒトラーが粛清していった死者たち、そして彼自身も民衆の熱狂に轢死されていく様を三島由紀夫の激しい情念と同情とで描かれた本作をパワフルかつ繊細な演出で現代に蘇らせたいと思います。
どこまで狂気と寂寞を感じ取れるのか。コロナ禍に揺れる現代において、今ある僕自身の心の闇と世界の闇を舞台上で激突させてみたいと思います。
概要
CEDAR Produce vol.9『わが友ヒットラー』
作:三島由紀夫
演出:松森望宏
【出演】
谷佳樹(アドルフ・ヒットラー役)
君沢ユウキ(エルンスト・レーム役)
桧山征翔(グレゴール・シュトラッサー役)
森田順平(グスタフ・クルップ役)
【日程】2022年3月19日(土)〜3月27日(日)
【会場】すみだパークシアター倉
公式HP:https://www.cedar-produce.com
公式ツイッター:https://twitter.com/cedar_engeki