スペインを舞台にした愛の悲劇『血の婚礼』がシアターコクーンにて開幕。
スペインの伝説的劇作家、 フェデリコ・ガルシーア・ロルカによる官能的な名作悲劇。
一人の女をめぐって男二人が命を懸けて闘う、むき出しの愛の物語。本作は実際に起きた事件を元に1932年に執筆され、 翌年にロルカ自身の演出によりスペインで初演、 同年にアルゼンチンでも上演されたロルカの3大悲劇の1作。
舞台はスペインのアンダルシア地方。 婚約した一組の若い男女が互いの家族の期待を背負いながら結婚式を迎えようとする姿、 そしてそこに現れた花嫁の昔の恋人がすべてを変えてしまう抑えきれない愛を描く。
初日に先駆けてフォトコールと会見が行われた。披露されたのは2つのシーン。
まず、冒頭、音楽、瞬間的に物語世界が舞台上に広がる。花婿(須賀健太)とその母親(安蘭けい)の会話。もうすぐ結婚する息子、母は息子を溺愛、葡萄畑に行こうとする息子、ナイフを貸してくれと言うが、それに対して母親は「ナイフなんてみんな、呪われればいい」とエキセントリックに叫ぶ。「またかい」と息子。二人の会話から、結婚が近いこと、花嫁のことなどがわかる。不穏な、何かが起こりそうな空気感。
それから、披露されたのは花嫁(早見あかり)の家の玄関土間。いよいよ婚礼の朝、支度をしている。女中(内田淳子)が何かと世話を焼いている。そこへドアの音、花嫁は着替えのために中に入る。やってきたのは花嫁の元恋人・レオナルド(木村達成)、花嫁の従姉と結婚しているので親族である。レオナルドは花嫁の結婚に対して突っかかる発言、たまりかねて花嫁が出てくる。
裕福な花婿を選んだとなじるレオナルド、自分の誇りのために結婚を選んだと言う花嫁。感情が溢れ出る瞬間。熱い、気持ちがぶつかり合い、ほとばしるシーン。
熱い場面が披露された後、会見が行われた。登壇したのは、木村達成、須賀健太、早見あかり、安蘭けい、そして演出の杉原邦生。
演出の杉原邦生は「5週間稽古を重ねてきまして、一昨日から舞台稽古に入りました。劇場に入りますと初めてわかったこととか、こういうのがあるんだ、とか…順調に仕上がっております。スペインの1930年代のアンダルシア地方の、当時の情熱を舞台に表現できたら」とコメント。
木村達成は「マスクを取って衣装に着替えて、各々のキャラクターのオーラみたいなものがわーーと出て。この作品は綺麗なことが一切ない、ドロドロした、嫌な空気が常に流れている、すごく雰囲気がマッチしていくんじゃないかと思っております…私事なんですけど、ヒゲをしっかりこしらえて、この舞台に挑みます。初ヒゲです(『ハイキュー』などで共演した須賀が「ヒゲ成」とイジる)」とコメント。
須賀健太は「花婿が一番、感情が揺れ動くキャラクターだと思います。周りに影響される役なので、ある種、一番達観して物語を見てる人物。シンプルな物語なのかなと思っていたのですが、そこに人間ドラマとか、各々、個性的なキャストの皆さんのお芝居、感情の変化、バックボーンのようなものが感じられる作品になるかなと思っています」と語った。
早見あかりは「結婚式当日に駆け落ちする、一見すごくわがままに見えるかも…この時代の女性たちがそういう想いを抱えている。バックボーン。心の悩み、もやもや、しっかりと映し出すことができたら、ただの自分勝手な女性というよりも、この時代に生まれた女性の悲劇。こういう部分もしっかりと見せることがテーマだなと。稽古で皆さんとたくさんお話をさせていただいて、自分で考えて、作っているので、舞台でどういうふうに伝わるのか…」とコメント。
安蘭けいは「変わった母親役が多いのですが、今回見ていただいた冒頭のシーン、感情をばーーーっと、それが自然にやっちゃっている、改めて理解できる感情。舞台上の砂、この上でやるってすごい楽しい、砂遊びしてるような」と語る。舞台上の「砂」は注目したいポイント。また、演出家から「土と壁」という言葉が出た。
ファースト・インプレッションが「土」、ここは美術のこだわりだそう。床の土、砂、そして白い壁、ただ白いだけではない質感があり、趣がある。また、壁に天井のライトの影が出ているのも注目要素の一つ。シンプルだが、セットの深み・空間をしっかりみると面白いかもしれない。また物語の時代が現代からおよそ100年近く経っており、物事の価値観なども異なる。「きっちりと世界観を作り上げることではなく、芝居はお客様と常に共有している、そこで起こっていることが僕たちの現代に通じる…そういうインタラクティブな意図があって、常に舞台上の俳優さんと共有しながら、進んでいくような演出になっていくと思っています」と演出家。
最後に木村達成より「スペインの戯曲、初日を待ちわびておりました。欲望、愛、苦しみが詰まったこの作品をみなさまにぜひ足をお運びいただき、観ていただきたいと思います。劇場でお待ちしております」と締めて会見は終了した。
概要
舞台『血の婚礼』
日程会場:
東京:2022年9月15日(木)~10月2日(日) Bunkamuraシアターコクーン
大阪:2022年10月15日(土)~16日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
スタッフ
原作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ
翻訳:田尻陽一
演出:杉原邦生
音楽:角銅真実、古川麦
美術:トラフ建築設計事務所/照明:齋藤茂男/音響:稲住祐平(エス・シー・アライアンス)/衣裳:早川すみれ(KiKi inc)/ヘアメイク:国府田圭/振付:長谷川風立子(プロジェクト大山)/殺陣:六本木康弘/演出助手:河合範子/舞台監督:足立充章
キャスト:
木村達成
須賀健太
早見あかり
南沢奈央、吉見一豊、内田淳子、大西多摩恵、出口稚子、皆藤空良
安蘭けい
演奏:古川麦、HAMA、巌裕美子