市村正親主演 ミュージカル『スクルージ』が幕を開ける。この公演が始まると、クリスマス間近と感じる、もはや冬の風物詩のよう。
『スクルージ~クリスマス・キャロル~』の原作となった作品は、 1970年12月にイギリスとアメリカで上映された英国産ミュージカル映画「スクルージ」。 日本でも同時期に「クリスマス・キャロル」の邦題で公開された。
ミュージカル版『スクルージ』は1992年イギリス・バーミンガム アレクサンドラ・シアターで初演され、 スクルージ役を演じたのは脚本・音楽・作詞のレスリー・ブリカッスの盟友アンソニー・ニューリーだった。日本での初演は1994年。この公演で市村正親が主演して以降97、99年、2013年に新演出版、2015年、2019年と市村自身ライフ・ワークとして再演を重ねている。スクルージの事務所の事務員であるボブ・クラチット役を武田真治、スクルージの甥・ハリー役/若き日のスクルージ役を相葉裕樹、 ハリーの妻・ヘレン役/商店主の娘・イザベル役を実咲凜音、 スクルージのかつての相棒・ジェイコブ・マーレイ役を安崎 求、 クラチット夫人/過去のクリスマスの精霊役を愛原実花、 商店主の妻・フェジウィッグ夫人役を今陽子、 そして現在のクリスマスの精霊役を今井清隆が演じる。
開幕に先駆けて会見と公開稽古が行われた。
会見では開口一番、「作品との初めての出会いは40代、メイクは2時間、今はノーメイク」と笑わせた市村正親。
どんな場においても人を楽しませることを忘れない、根っからのエンターテイナーぶり。「28年前と比べると明らかに役にどんどん近づいている」と言い「足や腰にガタがきている」と笑うが、この長丁場の公演、並みの体力じゃないことは明らか。「体力勝負なので、千秋楽まで無事でいられるように、健康に気を付けて乗り越えたい」と語る。クリスマスの思い出を聞かれて「田舎だったのでプレゼントはあんまりなかった」と言いつつ、今は子煩悩なパパぶりを発揮。
「プレゼントの量がどんどん増える」と笑う。次男からはクリスマスプレゼントにスマホを求められているそうで「お兄ちゃんには小5の時にあげたと言うんです。勉強の時間にはスマホを使わないと約束するなら、サンタさんにお願いしてあげる、と言っています」。だが、一昨年にサンタ衣装が見つかってしまい「騙された」と言われたそう。家族の話題は尽きない様子。自分自身へのプレゼントは、と聞かれて「ないです」と即答。「健康維持が役者の務め」と語る。お子さんたちが観劇しているそうでダメ出しされている様子。作品については「新しいシーンはないですが、メンバーが若干、変わっています」とコメント。また作品を通じて「人は1人では生きていけないことを身に染みて…」としみじみ。そして「自分を支えてくれる人、自分が支える人、他人を思いやる、この作品をやることでもう一回考える」、多くのことが語られている作品。また1年を振り返り、「73になって、怪我なく、病気なく、努力の賜物かなと」と言い「来年は俳優生活50周年」、「年齢との戦い」と語る市村正親。1幕のラストと2幕最初に宙乗りがあるが「体幹に力入れて(とハイキックをして)、皆さんが思うほどそんなに大変じゃない」と…いや、ハイキックは凄い(驚愕)。凄い体力、身体能力の市村正親。今年はもちろん、その先も元気なスクルージを見せてくれるに違いない。
クリスマスと言えば、この作品、年末の風物詩。物語も展開もオチも知っているのに何故かいつも見入ってしまう。クリスマス!という感じのオープニング、行き交う人々はなんとなくウキウキしている。子供も大人もクリスマスが大好き。しかし!この物語の主人公であるスクルージ(市村正親)は、クリスマスが大嫌い。スクルージの事務所、蝋燭の灯りだけで薄暗い(節電ではない)。甥っ子ハリー(相葉裕樹)がスクルージをパーティに誘いに訪れ「メリー・クリスマス」と言っても不機嫌。事務員のボブ・クラチット(武田真治)は子沢山、クリスマスは家族と一緒に過ごしたい。「お給金を…」とクラチット。薄給だが、貴重な収入。スクルージは借金の取り立てに街へ。皆、スクルージを嫌っているが、ご本人はお構いなし。そんな様子がスピーディーに描かれる。「クリスマス、ふん、馬鹿馬鹿しい」。
家に帰り、不吉な声が。な、な、なんとジェイコブ・マーレイ(安崎 求)、共同経営者であったが、7年前に死去、彼の姿は悲惨、鎖だらけ。生前の罪に比例して鎖が増えている。慄くスクルージ、マーレイは彼に3人の精霊が現れると告げる。さて、その精霊はスクルージに何を見せてくれるのか、というのが大体の流れだ。
若き日のスクルージ(相葉裕樹)、愛していた女性がいたがすれ違って別れてしまった過去、そして現在、甥っ子ハリーのクリスマスの様子、貧しいながらも愛情溢れる家庭を築いているクラチット、末っ子は体が弱い。
そして未来、誰かが死んだ様子、それが誰なのかすぐにはわからなかったスクルージ、だが、それは…。
多彩な楽曲、よく知ってるストーリー、3年ぶりの上演だが、毎年上演して欲しいというのは欲深いかも。それだけ見どころ、聴きどころが多く、楽しくって贅沢なミュージカル。
そして古希をとっくに過ぎた市村正親のフライング、空中でジタバタする、かなり難易度が高そうだが、それを軽々とやってのける。爽やかな好青年ぶりなハリー・相葉裕樹、若き日のスクルージでは純朴な感じで演じわけ。可憐で可愛らしいヘレン、イザベルの実咲凜音、安崎 求の観ただけでホラーなマーレイ、愛原実花はよくできる主婦のクラチット夫人とミステリアスな過去のクリスマスの精霊、演技派ぶりを見せる。堂々たる風格の現在のクリスマスの精霊は今井清隆。皆、適材適所で物語を盛り上げる。子供たちも達者で、歌に芝居にダンスに!公演は25日まで。千秋楽はきっと盛り上がりそうだ。
インタビュー記事
概要
ミュージカル『スクルージ~クリスマス・キャロル~』
期間会場:2022年12月7日(水)~25日(日) 日生劇場
主催:ホリプロ
企画制作:ホリプロ
上演協力:劇団ひまわり
キャスト
スクルージ:市村正親
ボブ・クラチット:武田真治
ハリー/若き日のスクルージ:相葉裕樹
ヘレン/イザベル:実咲凜音
ジェイコブ・マーレイ:安崎 求
クラチット夫人/過去のクリスマスの精霊:愛原実花
フェジウィッグ夫人:今 陽子
現在のクリスマスの精霊:今井清隆
フェジウィッグ/未来のクリスマスの精霊:阿部 裕
トム・ジェンキンス:神田恭兵
高橋ひろし
中西勝之
さけもとあきら
高木裕和
松岡雅祥
井口大地
家塚敦子
伽藍 琳
三木麻衣子
七瀬りりこ
横岡沙季
森田万貴
脇領真央
マーサー・クラチット(Wキャスト):設楽乃愛 長谷川愛鈴
ベリンダ・クラチット(Wキャスト):佐々木咲華 若井愛夏
ピーター・クラチット(Wキャスト):越永健太郎 重松俊吾
キャシー・クラチット(Wキャスト):下井明日香 戸張 柚
タイニー・ティム(Wキャスト):奥田奏太 三田一颯
少年スクルージ(Wキャスト):西山遥都 長谷川悠大
街の子ども(Wキャスト):荒井天吾 入内島悠平
【スウィング】
西垣秀隆 尾上菜摘
スタッフ
原作:チャールズ・ディケンズ
脚本・作曲・作詞:レスリー・ブリカッス
演出:井上尊晶
訳詞:岩谷時子
音楽監督:鎮守めぐみ
振付:前田清実
美術:横田あつみ
照明:塚本 悟
音響:山本浩一
衣裳:スー・ウィルミントン
衣裳コーディネート:沼田和子
ヘアメイク:佐藤裕子
指揮:森 亮平
演出助手:坂本聖子
舞台監督:中村貴彦