ヘンリー・ジキル役:柿澤勇人×ジョン・アターソン役:上川一哉 ミュージカル『ジキル&ハイド』クロストーク

大人気ミュージカル『ジキル&ハイド』が上演される。この作品はイギリスの作家ロバート・ルイス・スティーヴンソンの小説「ジキル博士とハイド氏」(原題:The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde)を元にしたブロードウェイミュージカル。作詞・脚本はレスリー・ブリカッツ、作曲はフランク・ワイルドホーン。1990年にヒューストンのアリー劇場にて初演、その後は全米ツアーが7年、1997年ブロードウェイのプリマス劇場にてプレビュー公演が行われ、同年4月21日から2001年1月7日まで1543回上演。1997年度のトニー賞の、最優秀ミュージカル脚本賞、最優秀ミュージカル主演男優賞、最優秀衣裳賞、最優秀照明賞部門にノミネート。劇中のナンバー「時が来た(原題 This Is The Moment)は1992年のアルベールヒル冬季オリンピックの公式テーマ曲に選ばれている。
日本においては鹿賀丈史主演にて2001年初演。この年、共演のマルシアが2001年度第56回文化庁芸術祭演劇部門新人賞を受賞。2003年、2005年、2007年に上演され、2005年度、鹿賀丈史は第31回菊田一夫賞演劇大賞を受賞。それから石丸幹二主演で2012年、2016年、2018年に上演。今回、2023年は石丸幹二最後のミュージカル『ジキル&ハイド』、そして柿澤勇人初挑戦となるミュージカル『ジキル&ハイド』。今回、劇団四季時代からの旧知の仲であるヘンリー・ジキル役の柿澤勇人さんとジョン・アターソン役の上川一哉さんの対談が実現した。

――出演が決まったときの感想を。

柿澤:鹿賀丈史さんが演じていらしたときに拝見しました。そのときは、まだ学生で、日生劇場でやっていたときですが、でも自分がやることになるとは思っていなかったです。なので、すごい驚きましたよね。すごくたいへんな役だと思いますし、プレッシャーはありますよね。がんばらなきゃ。やはり歌が強いし、消費カロリーも高いから、スタミナ面とかちゃんと管理しないと。

上川:僕もシンプルに驚きました、しかもカッキーと。思わず「いいんですか」って言ってしまいました(笑)。劇団四季の退団を目の前にした、『CATS』の博多公演中、たまたま耳にした音楽が、石丸幹二さんの「時が来た」だったんです。それもあってダブルパンチでびっくりしました。

――もう、鹿賀さんも石丸さんも劇団四季の大先輩ですね。この『ジキル&ハイド』なんですが、原作も有名で派生作品も数え切れないくらい。上川さんは、柿澤さん演じるジキル博士の友人という設定の役ですから、絡みもたくさんあると思いますけれど、3曲目のデュエットについてはいかがでしょう。

柿澤:上川さんは、四季の2期上なんです。最初に一緒にやったのが、『人間になりたかった猫』で。ライオネルって役を上川さんがずっとやっていて、その後に僕もやることに。そしたら『春のめざめ』でも同じ役をやるって、なんだか縁を感じちゃいますよね。だから、デュエットもそうですが一緒に作品を作ること、一緒に出られることがうれしいんです。石丸さんをはじめ経験者の方もいらっしゃるのですごく力強いなって思っています。

上川:僕は、ただただカッキーの歌を近くで聞けるのが楽しみで仕方がないです。

――どの曲も、耳に残るし歌う側としては難易度が高そう。石丸さんが歌っているハイライト映像を拝見しましたが、ほとんどが「This is the moment」でしたし。この曲については。

柿澤:「This is the moment」は、あの作品の代表曲ですよね。すごく難しいんですよ。どうしても和訳にすると情報量が狭くなるし。同じような内容をずっと言っているので、それを膨らませて表現するには役者の力が必要です。とはいえ、そこからがジキル博士の転換期というか、スタートなので稽古をしていくなかでうまくいけば流れをつかめるのかなと思っています。

――先ほど『春のめざめ』の話がありましたけれど。メルヒオールを演じられていましたね。そのときは怪我をしていたとか。

柿澤:膝を負傷したんです。そのときバーッとみんなで稽古して。昔のドイツにおける若者の抑圧された心だとか、抗いたい気持ちとか、エネルギーがすごい作品でした。僕らも20代前半だったからこそできた役だと思うんです。劇団四季っぽくない作品だったんですよね。だからこそ、ここで、一緒に作品に携われたこと、海外のスタッフも来てくれたことが刺激になりました。いわゆる四季の方法論に則ってなかったから。

――そのときを経て(上川さんと)再会したと。

上川:そうですね、それ以来会っていないしね。

柿澤:13年前の話です。今思うと若いなあ(笑)。

――『ジキル&ハイド』という作品について思うところは?

上川:すごく、聞き心地がよいけれど、気づくと難しさを感じるような楽曲が多いなと。歌詞に想いを乗せようと思ったときに「これをやるのか」と改めて思ってしまいました。歌がすごくキーになることは稽古が始まっていない今でもわかります。

柿澤:ビッグナンバーが多いですしね。

上川:それに、感情の表現が激しそうですね。

柿澤:ジキル博士とハイドでは人格が全然違うから、感情の起伏などにも違いが表れますよね。当然、声というところでも変わっていかなきゃいけないので喉への負担があるだろうし、ちゃんとトレーニングしないといけないなとは思っています。

――では、最後にメッセージを。

柿澤:四季時代、数年ですけれど上川さんの背中を追いかけさせてもらっっていたので、ここで再開できたことが単純に嬉しいです。また、新しいメンバーも素敵な人たちばかりで本当に楽しみです。おそらく鹿賀さんと石丸さんがやっていたときとは雰囲気もガラリと変わるはずなので、新しく生まれ変わらせる気持ちを持って、この作品に挑みたいです。あと、舞台上で演技を変えて二面性を表現するというのは映画やドラマよりも作るのが難しいところなので、役者のがんばりどころですし、なかなかそういうのって観られないと思うので、期待していただければ嬉しいです。

上川:僕は四季を退団して1年経つんですが、まさかこのタイミングで再会、しかもこういう役設定というのが楽しみだしうれしいですね。僕は、劇団の外に出てまだキャリアが浅いのでカッキーにたくさんお世話になろうと思います(笑)。久しぶりにこうしてご一緒させていただき、そのときにしか出せない化学反応が多分あると思うので。それを、生で観ていただきたい。演劇としての面白さもそうですし、是非、劇場にお越しいただきたいなと思います。きっといいきっかけになりますから。

――ありがとうございます。公演を楽しみにしています。

あらすじ
19世紀のロンドン。 医師であり科学者であるヘンリー・ジキル(石丸幹二/柿澤勇人)は、 「人間の善と悪の両極端の性格を分離できれば、 人間のあらゆる悪を制御し、 最終的には消し去ることが出来る」という仮説を立て、 研究は作り上げた薬を生きた人間で試してみる段階にまで到達した。 ジキルはこの研究に対して病院の理事会で人体実験の承諾を得ようとするが、 彼らはこれを神への冒涜だと拒絶する。 ジキルの婚約者エマ(Dream Ami/桜井玲香)の父親であるダンヴァース卿(栗原英雄)のとりなしもむなしく、 秘書官のストライド(畠中 洋)の思惑もあり、 理事会はジキルの要請を却下した。 ジキルは親友の弁護士アターソン(石井一孝/上川一哉)に怒りをぶつける。 理事会の連中はみんな偽善者だと。
ジキルとアターソンは上流階級の社交場から抜け出し、 たどり着いたのは場末の売春宿「どん底」。 男どもの歓声の中から、 娼婦ルーシー(笹本玲奈/真彩希帆)が現れる。 「(私を)自分で試してみれば?」というルーシーの言葉に天啓を受けたジキルは、 アターソンの再三にわたる忠告にもかかわらず、 薬の調合を始める。 赤くきらめく調合液。 ジキルはひとり乾杯し、 飲み干した。 全身を貫く激しい痛み―息も絶え絶え、 苦痛に悶えるジキル。 腰が曲がり、 声はかすれ、 まるで獣 — この反応は一体何なのか!そしてとうとう現れたハイド。 そして、 街では、 次々とむごたらしい殺人が発生。 謎に満ちた、 恐怖の連続殺人事件にロンドン中が凍りつく。 犯人は、 ハイドなのか。 エマや執事プール(佐藤 誓)の心配をよそに研究に没頭していくジキル。 果たしてジキルの運命はいかに……。
ひとつの体に宿った二つの魂“ジキル”と“ハイド”の死闘は、 破滅へ向けて驚くべき速さで転げ落ちて行く……

公演概要
ミュージカル『ジキル&ハイド』
東京
日程・会場:2023年3月11日(土)〜3月28日(火) 東京国際フォーラム ホールC
主催・企画製作:東宝/ホリプロ

名古屋
日程・会場:2023 年 4 月 8 日(土)、9 日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
主催:キョードー東海
お問い合わせ:キョードー東海 052-972-7466
山形
日程・会場:2023 年 4 月 15 日(土)・16 日(日) やまぎん県民ホール
主催:さくらんぼテレビ/キョードー東北/キョードーマネージメントシステムズ
お問合せ:キョードー東北 022-217-7788
大阪
日程・会場2023 年 4 月 20 日(木)~23 日(日) 梅田芸術劇場メインホール
主催:梅田芸術劇場/関西テレビ
問い合わせ:梅田芸術劇場 06-6377-3800(10 時~18 時)

スタッフ
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也
上演台本・詞:高平哲郎

キャスト
ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:石丸幹二、 柿澤勇人(Wキャスト)
ルーシー・ハリス:笹本玲奈、 真彩希帆(Wキャスト)
エマ・カルー:Dream Ami、 桜井玲香(Wキャスト)
ジョン・アターソン:石井一孝、 上川一哉(Wキャスト)
サイモン・ストライド:畠中 洋
執事 プール:佐藤 誓
ダンヴァース・カルー卿:栗原英雄
ほか
公式HP=https://www.tohostage.com/j-h/
https://horipro-stage.jp/stage/jekyllandhyde2023/
公式Twitter= https://twitter.com/Jekyll_2023

取材:高浩美
構成協力:佐藤たかし
撮影:金丸雅代