新国立劇場の人気レパートリー『ファルスタッフ』が2月に登場。
『ファルスタッフ』は、 シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』をもとに、 作曲家ヴェルディが79歳で作曲した傑作オペラ。 ストーリーも音楽も圧倒的楽しさでいっぱいの人生讃歌。 ジョナサン・ミラー演出は緻密な構図、静謐な色遣いの舞台がフェルメールの風俗画から飛び出したよう。 太鼓腹で図々しくて憎めない題名役に、 ファルスタッフ歌いとして大人気のニコラ・アライモが来日するのもファンの期待の的。
『椿姫』『リゴレット』『アイーダ』など悲劇で名声を極めたオペラ王ヴェルディ(1813~1901)が、シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』『ヘンリー四世』を原作に、人生最後に手がけたのが極上の喜劇『ファルスタッフ』。ヴェルディ79歳の作品で、圧倒的楽しさと人生哲学にあふれた、奇跡のような傑作。
『ファルスタッフ』は太鼓腹で酒好き、女好き、強欲で愛すべき老騎士ファルスタッフを中心に、快活で機知あふれる女性陣や若いカップルが繰り広げるストーリー。音楽的なユニークさでも先進的で、自己中心的でも前向きで憎めないファルスタッフのキャラクターの滲むモノローグ、女声陣×男声陣×若者フェントンの1幕九重唱、そしてキャストと合唱によるフィナーレの大フーガと、緻密な技法で練り上げられた、わくわくするような音楽がいっぱい。
中でもファルスタッフが口火を切って10人のキャスト全員が次々歌いに歌うフィナーレの大フーガ「この世はすべて冗談だ」は、ガラコンサートなどでも今やすっかり定番となった、お開きにぴったりのゴージャスなナンバー。
年齢の壁も物ともせず、老ヴェルディが熟練の技で書いた人間讃歌『ファルスタッフ』。悲劇を極めたオペラ王が晩年、一念発起して絶品のコメディを遺したというのも何とも乙な物。
『ファルスタッフ』の演出は、英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーやBBCの映像などシェイクスピア作品で知られた巨匠ジョナサン・ミラー。哲学者でもあり医師でもあった知の巨人ミラーは、シェイクスピアの時代のルネサンス家屋を詳細に記録したフェルメールの時代の17世紀オランダ絵画に着目、風俗画に描かれた民衆をつぶさに研究して、舞台上に蘇らせました。
フェルメールといえば30数点しかないという作品の希少性もあって、世界中に熱狂的なファンがいる伝説の画家。静謐な色調、光と影の扱い、タイル床や壁に掛けられた絵、調度品といった室内装飾、緻密に計算された舞台構図、衣裳、そしてニュアンスに富んだ人物造形などなど、ジョナサン・ミラー版『ファルスタッフ』にはフェルメールファンには見逃せない要素が盛りだくさんです。ぜひ劇場で “動くフェルメール”『ファルスタッフ』を。
タイトルロール(題名役)には世界のオペラハウスを駆け巡るイタリアの大人気バリトン、ニコラ・アライモがオペラファン待望の新国立劇場デビュー!ファルスタッフはスカラ座やメトロポリタン歌劇場をはじめ世界各地で歌っている得意役で、昨年にはフィレンツェ五月音楽祭で同役に出演した上演のDVDも発売されています。アライモの日本でのオペラ出演は今回が初。艶やかな声と豪快な演技が今から楽しみ。
アリーチェには比類ないテクニックと表現力で主要劇場に続々と出演し成功を重ねているソプラノ、ロベルタ・マンテーニャ、クイックリー夫人にはロッシーニを中心に欧米の歌劇場で活躍し、バロック、古楽でも評価の高いマリアンナ・ピッツォラート、フォードにはメキシコ出身の新星ホルヘ・エスピーノが出演。ページ夫人メグにはイタリアでスター街道を駆け上り、昨年『チェネレントラ』で日本のオペラファンの話題をさらった脇園彩が登場、最高のアンサンブルに期待が集まる。指揮はイタリア・オペラの名手コッラード・ロヴァーリス。
文化庁「子供文化芸術活動支援事業」により本公演に18歳以下合計692名様を無料ご招待!
子供文化芸術活動支援事業とは、新型コロナウイルス感染症の影響下において、劇場・音楽堂等で子供たちが文化芸術の鑑賞や体験をする機会が多く失われている状況に鑑み、劇場・音楽堂等で行われる実演芸術を18歳以下の子供たちが無料で鑑賞できる取組を支援するものです。『ファルスタッフ』こども招待席は、公演当日に小学生~18歳以下のお客様のみお申込みいただけます。
【受付方法】
専用発売Webページより先着受付(お一人様1枚限り)
https://nntt.pia.jp/ticketInformation.do?eventCd=2204639&rlsCd=032
物語
太った老騎士ファルスタッフは、金目当てに人妻のアリーチェとメグに同文の恋文を出す。まったく同文と気づいた二人、それにファルスタッフに恨みを持つ従者バルドルフォとピストーラ、ファルスタッフを心良しと思わぬフォードと医師カイウスは、みんなで彼を懲らしめることに。ファルスタッフをおびき出し散々な目にあわせる間にフォードの娘ナンネッタと恋人フェントンの結婚も決まって、ファルスタッフが「この世はすべて冗談」と歌い出すフーガで大団円となる。
概要
新国立劇場2022/2023シーズンオペラ 『ファルスタッフ』
日程:2023年2月10日(金)19:00/12日(日)14:00/15日(水)14:00/18日(土)14:00
会場:新国立劇場 オペラパレス
スタッフ・出演
指揮:コッラード・ロヴァーリス/演出:ジョナサン・ミラー/ファルスタッフ:ニコラ・アライモ、フォード:ホルヘ・エスピーノ、フェントン:村上公太、医師カイウス:青地英幸、バルドルフォ:糸賀修平、ピストーラ:久保田真澄、フォード夫人アリーチェ:ロベルタ・マンテーニャ、ナンネッタ:三宅理恵、クイックリー夫人:マリアンナ・ピッツォラート、ページ夫人メグ:脇園 彩/合唱:新国立劇場合唱団/管弦楽:東京交響楽団
新国立劇場『ファルスタッフ』2018年公演より 撮影:寺司正彦