小日向文世, 高橋克実, 浅野和之, 大谷亮介, 平田満 出演 『海をゆく者』開幕

『海をゆく者』はアイルランド演劇界をリードする気鋭の劇作家コナー・マクファーソンの出世作にして、代表作。`06年に自らの演出により、ロンドンのナショナル・シアターにてデビューした本作は、ローレンス・オリヴィエ賞“BEST PLAY”、トニー賞“BEST PLAY”他三部門に輝き、『21世紀のクリスマスキャロル』と評され、世界中で上演されてきた傑作芝居。

日本では、演劇界を牽引する5人の名バイプレイヤーが、演出家栗山民也の元に結集し、丁々発止のセリフの応酬と円熟味あふれる絶妙なアンサンブルで、2009年、2014年に上演。大好評を博したPARCO劇場の傑作レパートリー。新潟、豊橋、岡山、広島などでツアー公演。

“PARCO劇場開場50周年”のアニバーサリー・イヤーとなる2023年に、平均年齢70歳を目の前にして、第一線で大活躍中の俳優陣の豪華競演が実現。
ロックハート役には数々の映画、ドラマで活躍し、コミカルな役から悪人まで幅広い役柄を演じ、作品にスパイスを加える小日向文世。
過去2公演で吉田鋼太郎が演じたリチャード役には、舞台・ドラマ・映画と多岐にわたり活躍を続ける高橋克実。
アイヴァン役には幅広い役柄に対応する演技力で舞台やテレビに欠かせない名脇役浅野和之。
ニッキー役には、舞台やドラマなどにとどまらず、時には女方も務め、常に異彩を放ち続ける大谷亮介。
シャーキー役には2014年版の「海をゆく者」で第49回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞し常に存在感を残す平田満。
物語の舞台はアイルランドのダブリンの初老の兄弟が住んでいる家。薄汚れたソファー、部屋の片隅には酒の空き瓶、だが、季節はクリスマス、ツリーはしっかりと飾っている。蝋燭の火が揺らめく。

披露されたのは2幕の冒頭部分の25分ほど。ポーカーに興じる男たち、皆、それなりに歳をとっている、リチャード(高橋克実)は大酒のみ、目が不自由、弟のシャーキー(平田 満)も酒癖が悪い。近所に住むアイヴァン(浅野和之)、ニッキー(大谷亮介)、皆、着古したヨレッとした服を着ている。ロックハート(小日向文世)だけがパリッとしたスーツを着ているので、彼だけが”異質”、よそ者と言うのがわかる。

冒頭からわいわいとポーカーに興じる。シャーキーだけが酒を飲んでいない、それ以外の4人は酔っ払い状態、足取りが千鳥足。リチャードはアイヴァンと組んでニッキー、シャーキー、ロックハートと賭けをしている。アイヴァンが過去に「一回の賭けで4万ポンドもする船一隻を勝ち取った」という話題が出る。ロックハートは「何を賭けたんだ?」と質問。言い淀むアイヴァン。シャーキー、ニッキー、リチャードはアイヴァンを庇おうとしたところ、ロックハートは不思議な力を使って…。再び、ポーカーをする5人。基本的にずっとこの部屋で物語は繰り広げられる。

初日に先駆けて、このあと、会見が行われた。登壇したのは、もちろん、この5人。メンバーは高橋克実を除いてほぼ70歳、つまり「古希」。

まずは挨拶から。
小日向文世「インフルエンザに罹らず、コロナに罹らず今日を迎えられたことにホッとしております。皆、それなりに歳いってるものですから、1月末まで続きますので、とにかく健康第一で、大千秋楽を迎えられるように体調を整えて頑張りたいと思います」

高橋克実「インフルエンザが流行っております。来年の1月29日まで無事に最後まで完走したい」

浅野和之「何回も初日を迎えていますが、いつも初日は緊張します。インフルエンザ、私は打ちました(予防接種)。大丈夫です(笑)。みんなで怪我のないように最後まで来年の1月29日まで完走したい」

大谷亮介「2ヶ月、皆さんに楽しんでいただけるように健康に留意して…70歳、克実さんだけ、ね、若手のホープみたいな感じでやってます(笑)」

平田満「この暮れの忙しい時に。明日初日ですけど、お客様がきていただけることを願っております。スタッフ・キャストいいチームワークで最後まで行けたらいいなと思っています」

また、高橋克実を除くキャストは初演からの続投。

小日向文世「違いは、ですね、歳を取った、その一言に尽きますね。初演からほぼ10年、稽古が終わった後はどっと疲れてます、物覚えが悪くなっています(笑)。肉体的な衰えは感じますが、みんな少し角が取れて丸くなったかな。みんなで一緒にいる時間がすごい楽しいなと思えるようになったのが嬉しい」

高橋克実「私のみ初参加です。先輩方は70、これから70になる方、このカンパニーの中では、私だけが初めてではありますが、本当に若手扱いなんですね。62ですが、自分でも60を超えているようには感じない現場(一同、笑)。先輩方はずっと体のいろんなお話をされておりまして、それを聞いていると“ほー、なるほど”と役に立つお話をずっとされているんです。初演、再演、拝見してますが『面白かったな』と…観るのとやるのでは大違い、観ているだけのほうがよかったなと思っています(笑)。ここまで来たらまな板に乗ったつもりで…明日、楽しみっていうか、どうなるんでしょうか、眠れない毎日、でも昨日はよく寝れました(笑)。明日、がんばります!」

浅野和之「70近くなって、確かに体力、記憶力は少しずつ衰えております。しかし!芝居の方は円熟味を増して!もっといい作品に仕上がっていると思います」

大谷亮介「1日稽古して終わったあとは楽しんで(笑)、皆さんとご一緒、本当にありがたい」

平田満「70…克実くんはとっても素敵です。僕らに合わせてくれる以上の結びつきができてると思うので。3回目、新たに魅力が増したものになってるんじゃないかなと思っています。多分、僕らにとってはこれが最後の『海にゆく者』になるんじゃないかなと、お見逃しないようにお願いいたします」

またパルコ劇場50周年と言うことで

小日向文世「2011年の3月11日、震災があった時に『国民の映画』っていう舞台の2日目ぐらい…『どうなるんだろう』って。警備の方が『劇場に入れない』と言うことで、その日は中止になり、家まで普通は30分のところ、2時間ぐらいかかって帰宅したっていう…。翌日は中止になり、1日置いて、その合間、合間に原発が…テレビで観てると『どうなるなだろう』と、そんなことを話しながら舞台に立っていました」

高橋克実「節目節目でパルコ劇場に…。所属している事務所が初めて製作した『おかしな2人』(2002年)、男性版、女性版がありまして、2本同時上演。そのときに八嶋(智人)君と2人でやったスペイン人の兄弟役がありまして、多分ハマったんでしょうね。観にこられていたフジテレビの関係者の方が『そのまま2人とも使いたい』ということで、『トリビアの泉』というのが始まりまして、MCというジャンルの仕事に初めて挑戦、これで方向が変わっていくきっかけに」

浅野和之「劇団に入って初めてたった舞台がパルコ、かつての西武劇場。 改装して初めての舞台は『大地』。50周年のトリの公演。記憶に残る仕事だと思ってます」

大谷亮介「最初は西武劇場の頃。演出も…それが思い出です」

平田満「西武劇場の頃、初めての舞台がつかこうへいさんの作品で『いつも心に太陽を』、素舞台で…パンツというか、踊った覚えがあります(笑)、恥ずかしい…思い出です」

また、高橋克実だけが初参加であるが、改めて初参加について。

高橋克実「先輩方4人とは若い頃からお付き合いがありまして、ホッとしてるというか、距離感近い分、こうしてやらせていただいているんですけど、やっていくうちに『俺なんか足元にも及ばないな』って瞬間が何回もありまして『大丈夫かな』と。リチャードはいろんな場面でけん引していく、『いやあ』って何回も稽古場で感じて。その都度、場面場面で先輩たちが『大丈夫、大丈夫!』ってことでやっていただいて、今日ここまで来られたって感じです。明日の初日向けて、どうせ間違えるし、噛む、みたいな開き直るところまでようやくたどり着けたかな?これだけの面子に囲まれているので安心感がありますが、どうしても、ずっとしゃべるところがあって勝手に詰まってましたけど、『無理だなー』と…そこさえ乗り切ればいけるんじゃないかと。いけるんじゃないかなと(笑)」

最後に

小日向文世「不安なのは70歳近い俳優たちを若い人が観に来てくれるのだろうかと。自分が20代の頃はそんなに興味がなかったし…そういう感覚だったので。70歳、若くても62歳。この年代が5人も揃ってる舞台はないと思います。先の長くない俳優たちを記憶に収める、貴重だと思って(一同、笑)、ぜひ観てもらいたい」

高橋克実「クリスマスイヴとクリスマスの1日半のお話…12月、別の意味で楽しくなるんじゃないかって。私自身は色々不安はありますが。12月はより楽しく、ぜひ、観に来ていただければ」

浅野和之「再再演、すごく気持ちのいい舞台です。大好きな舞台と言ってくださるお客様もいらっしゃいます。70歳、期待を裏切らない、ぜひ楽しみにしてください」

大谷亮介「ささやかですが、いい舞台、やらせてもらってます」

平田満「男5人、なんとなく見窄らしい格好で、作品自体は私たちの思い以上の温かい気持ちが伝わると思いますので、きっとご覧になって損はないかと。ぜひ、いらしていただけることを楽しみにしております」

<ロックハート役 小日向文世 インタビュー>

『海をゆく者』ロックハート役 小日向文世 インタビュー

あらすじ
アイルランド、ダブリン北部。海沿いの町にある古びた家に、若くはない兄弟が二人で暮らしている。兄のリチャード(高橋克実)は大酒のみで、最近、目が不自由になり、その世話のために戻ってきたという弟のシャーキー(平田 満)は、酒癖の悪さで多くのものを失い、今は禁酒中。陽気で解放的な性格のリチャードは、クリスマス・イヴも朝から近所の友人アイヴァン(浅野和之)と飲んだくれ、シャーキーが顔を合わせたくないであろう男ニッキー(大谷亮介)を「クリスマスだから」とカードに誘ってシャーキーを怒らせる。さらには、ニッキーが連れてきた一人の男、ロックハート(小日向文世)。彼こそが、シャーキーが忘れたくとも忘れられなかった男だった。

公演概要
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ
『海をゆく者』
東京:2023年12月7日(木)~27日(水) PARCO劇場
作:コナー・マクファーソン
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也
出演:小日向文世 高橋克実 浅野和之 大谷亮介 平田満
新潟:2024年1月7日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
豊橋:2024年1月12日(金)~1月14日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
岡山:2024年1月17日(水) 岡山芸術創造劇場ハレノワ中劇場
福岡:2024年1月20日(土)~1月21日(日) キャナルシティ劇場
広島:2024年1月24日(水) JMSアステールプラザ 大ホール
大阪:2024年1月27日(土)~1月29日(月) サンケイホールブリーゼ
※当初発表の会期より変更。東京公演は12月27日(水)まで上演
 

公式HP:https://stage.parco.jp/program/seafarer2023