フレンチロックミュージカル『赤と黒』が、に東京芸術劇場プレイハウスにて開幕。
本作は、『1789』『ロックオペラ モーツァルト』で知られるプロデューサー、アルベール・コーエンにより 2016年にパリで初演。`23年春『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』と題して宝塚歌劇星組で日本初演。原作はフランスの文豪スタンダールの名作『赤と黒』。愛と野望に生きた主人公ジュリアン・ソレルの物語を、エネルギッシュな楽曲で綴る。
演出には、世界中で注目を集める話題作『SIX』共同演出家のジェイミー・アーミテージが、満を持しての日本初演出として、フレンチロックに挑む。
主演である野心家で繊細な美青年・ ジュリアン役は、『刀剣乱舞』など2.5次元ミュージカルで大人気を博し、『レ・ミゼラブル』マリウス役、『千と千尋の神隠し』ハク役など次々と話題作に出演中の三浦宏規が務める。美しく野心に 溢れた若き青年が、愛と葛藤で感情を爆発させる楽曲も、本作の見所。そして、夢咲ねね、田村芽実、東山光明、川口竜也、東山義久、駒田一と言った実力派が集まった。
原作『赤と黒』は1830年に出版されたスタンダールの代表作。フランス東部の架空の町ヴェリエールを舞台に、製材所の息子からの立身出世を狙う主人公ジュリヤン・ソレルの、町長の妻レーナル夫人と名門の令嬢マチルドという二人の女性との恋愛劇を通して、復古王政と呼ばれる時代のフランスの世相を描く。1954年、「肉体の悪魔」のクロード・オータン=ララ監督&ジェラール・フィリップ主演のコンビで映画化された作品が有名。
大音量の音楽、ロックなオープニング、ストーリーテラーのジェロニモ(東山義久)が歌う。「愛し合うことの幸せ」と歌う。そしてこの物語の主人公・ジュリアン・ソレル(三浦宏規)が登場、白と黒の服、彼は貧しい製材屋の息子、下層階級、時代は王政復古、聖職者になって上り詰めてやろうと野心に燃える。そのエネルギーは支配者への、ブルジョア階級への憎悪。野心家、美貌あり、才気活発、プライドもある。レナール町長(東山光明)は貴族の人間。ヴェリエールの町長を務めており、家庭教師を雇うことに。やってきたのはジュリアン・ソレル。その美しさに一目で魅了されたのがレナール夫人・ルイーズ(夢咲ねね)。だが、同時に女中のエリザ(池尻香波)もジュリアンに密かな恋心を抱いていた。心がざわつく。歌、ダンスでそれぞれの心情を表現するが、そのキャッチーな楽曲と現代的なダンスの振り付けで観客の目を釘付けにする。ところが何者かに2人の関係が”発覚”、それはムッシュー・ヴァルノ(駒田一)、夫であるレナールの知るところとなり烈火のごとくに怒る。元々、ムッシュー・ヴァルノとレナールは仲が良くないこともあり、ジュリアンに恋心を抱いていたエリザを利用したのだった。追い出されるジュリアンだが、ブルジョア階級への憎悪がさらに高まる。この感情、激しい楽曲で表現、1幕ラストのハイライトシーンに。
休憩を挟んで2幕は令嬢マチルド(田村芽実)との出会いとジュリアンの破滅まで。冒頭はストーリーテラーのジェロニモ、客席に向かって話しかける。それからマチルドが登場、我儘でプライド高く、高慢な娘。いつも退屈していて、社交界に飽き飽き、不満げな表情を浮かべる。それがジュリアンと出会い、変わる。ジュリアンは運よくラ・モール公爵(川口竜也)の秘書になる。
2人の出会いは必然、だが、この出会いもまた、彼の人生を狂わせる。
原作を知っている、あるいは映画化されたものを観たことがあれば物語の流れは宣告承知。ミュージカル版はスピーディーな展開、多彩な楽曲でジュリアン・ソレルの数奇で短い生涯を描き切る。さらに彼に関わる人物の内面、ヴァルノのジュリアンへの激しい嫉妬、ジュリアンは下層階級の出身であるも、美貌と頭脳は目を見張るものがある。最初、ヴァルノはジュリアンが無学と思い、あることをさせるが、それを見事に突破、ヴァルノは彼に嫉妬を覚え、さらに警戒する。時代は王政復古、ジュリアンは聖職者になって出世したい、その美貌と頭脳を武器に。それがヴァルノには脅威、暗躍し、ジュリアンを亡き者にしようとする行動、ベテラン駒田一が不敵な笑い、さらに大嫌いなレナールの夫婦仲もこわそうとする。その妻、ヴァルノ夫人(遠藤瑠美子)、「破れ鍋に綴じ蓋」のような関係。
レナール夫人・ルイーズ、形だけの夫婦、よってジュリアンと道ならぬ恋に落ちるのも必然、だが、関係が明るみになるとジュリアンを見下す発言、そうしないと彼女自身生きていけない、レナール町長の妻であることはステータスであり、それが唯一の彼女の生きる道、だがラストは真実の愛に目覚める。マチルドも退屈な日々を過ごしていたが、ジュリアンと出会い、内面が変わっていく。そんな彼らの心模様や状況を赤と黒を基調にした衣装のダンサー陣が彩る。原作をだいぶ端折っているが、原作の意図、テーマをしっかりと伝える。王政復古、ナポレオン政権が倒れたが、そんなナポレオンを尊敬するジュリアン、スタンダールはベルテ事件やファルグ事件を訴訟記録によって知り、庶民であるベルテやファルグに上流階級の欺瞞を打ち破る力が蓄積されていると感じ、この作品を書いたと言われている。
タイトルの「赤と黒」の意味、原作者はそれを明らかにはしていないが、一説によると赤は軍人、黒は聖職者を表しているそう、また別の説はルーレットの回転盤の色を表し、一か八かの出世に賭けようとするジュリアンの人生をギャンブルにたとえているという。激しい憎悪の感情がジュリアンを突き動かすが、最後は真実の愛と己の未熟さを知る。三浦宏規の高い熱量のパフォーマンスは必見。
1幕はおよそ60分、休憩を挟んで2幕は70分、東京は27日まで、年明けは大阪、3日から7日まで。
コメント
ジェイミー・アーミテージ
私たちが作った新バージョンの「赤と黒」を楽しんでいただけることを願っています。
私たちはこの美しい物語の核心に迫るスリリングは作品にしたいと思い、お芝居、歌、そしてダンスそれぞれに焦点を当てて素晴らしいキャストの皆様と創作してきました。キャストの皆様一人一人が、心震わせる上質な作品を作るために懸命に取り組んでくれました。
私はすべてのキャストの皆様そして最高のチームの皆様を誇りに思います。本日はお越しいただき有り難うございます。
三浦宏規
本日はお集まりいただきまして誠に有り難うございます。ジュリアン・ソレルを演じます三浦宏規です。
ようやくこの日がやって参りました!
演出のジェイミーを筆頭に信頼のクリエイター陣、強烈な個性を放つ出演者、最高にロックなバンドメンバー、そしてこの人達と一緒なら初日も全く怖くない!なんなら初日より怖い関係者が沢山いるゲネプロだって怖くない!笑
そう思える方々と出会えたことを今とても幸せに感じています。
この作品は19世紀初頭、ナポレオン失脚後、王政復古の時代となったフランスが舞台の物語です。それが現代を生きる皆様の目にどう映るのか。何かを感じ取っていただけるのか。
様々な感想を是非記事にしていただければと思います。
酷評の方はですね、私、凹んでしまうので、ほどほどにしていただけましたら幸いです。笑
それでは「赤と黒」の世界をお楽しみください。
概要
日程・会場:
東京:2023年12月8日(金)~12月27日(水) 東京芸術劇場プレイハウス
大阪:2024年1月3日(水)~1月9日(火) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
演出:ジェイミー・アーミテージ
上演台本・訳詞:福田響志
出演:三浦宏規/夢咲ねね 田村芽実 東山光明 川口竜也/東山義久 駒田一
遠藤瑠美子 池尻香波
斎藤准一郎 竹内真里 今野晶乃 増山航平 髙橋莉瑚 松平和希 荒川湧太 吉井乃歌
スウィング:齋藤桐人
企画・制作・主催:梅田芸術劇場